尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領の弁護団は、「内乱特別検察官法」(内乱特検法)が違憲だとして、裁判所に違憲法律審判提請を申し立てた。裁判所がこれを受け入れれば尹前大統領の裁判は中断されるが、法曹界では裁判所がこれを認容する可能性は低いとみている。
尹前大統領の弁護団は同日、尹前大統領の不在のまま、欠席裁判で進められた第16回公判の過程で、ソウル中央地裁刑事25部裁判長のチ・グィヨン部長判事に違憲法律審判の提請申立て書を提出した。弁護団は、憲法裁判所に憲法訴願も請求したと述べた。
弁護団は文書で立場を表明し「現行の特検法は立法府が行政府の固有権限である捜査権に直接介入し、特定政党を排除して特検を任命したうえ、捜査範囲と対象を指定することで、権力分立の原則を根本的に損ねている」とし、「立法府が捜査の基準を越えて捜査自体に介入することは、憲法が定めた権力分立の原理に正面から反する」と主張した。
弁護団はまた「特検法は国会在籍議員の5分の3以上の賛成で押収・捜索に関する裁判官の令状主義を排除できるよう定めている」とし、「これは憲法第12条が保障する基本権の体系を立法府の議決だけで無力化させることであり、身体の自由を保障するための憲法上の根本原則を正面から違反すること」だと主張した。同条項は、捜査と関連した大統領記録物に対し、国会在籍議員5分の3以上の賛成があれば、これを閲覧するか、写本製作および資料提出を受けることができると定めている。
弁護団はさらに「現行の特検法はすでに裁判が進行中の事件に対しても公訴維持目的の移牒を認めており、特検の補充性と例外性の原則に明確に反している」とし、「これは司法手続きに対する不当な介入であり、司法権の独立を侵害する結果を招く」と述べた。これは「特検は関連事件の中で検事または軍検事が起訴し公訴維持中の事件に対して移牒を要求できる」という内乱特検法第7条1項を問題視したものだ。
尹前大統領側の違憲法律提請申立てを裁判所が受け入れ、憲法裁に違憲法律審判を提請すれば、憲法裁が違憲かどうかを決定するまで裁判は中断される。このように裁判が遅延し、尹前大統領の拘束満期日である来年1月18日までに一審判決が下されなければ、尹前大統領は再び釈放される。しかし、このような可能性は低いというのが法曹界の大方の予想だ。公認への介入や殉職海兵隊員C上等兵の捜査に対する圧力など、尹前大統領が今後拘束起訴される事案がいくつか残っているためだ。
違憲提請申立ての認容も容易ではないというのが大方の見解だ。憲法研究官出身のノ・ヒボム弁護士は「裁判所が違憲法律審判提請の可否を決めるためには、裁判の前提性が認められなければならない。該当する特検法の条項が違憲かどうかによって裁判結果が変わるかが認められなければならないが、それは容易ではないだろう」と話した。尹前大統領側は主に特検法条項が規定した手続きの違憲性を主張しており、内乱首謀容疑の有罪・無罪の判断とは程遠いということだ。西江大学法学専門大学院のイム・ジボン教授は、「内乱特検法で認知事件も捜査できると規定したり、国会に特検候補者の推薦権を与えたのは、いずれも前回の特検法にもあった条項で、(過去にも)違憲の主張は受け入れられなかった」と説明した。違憲審判提請の可否を判断しなければならないチ・グィヨン部長判事も、弁護団に「特検法律自体がここ(違憲提請の対象)に適用されるか曖昧だ」とし、「いっそ新しい法(特検法改正案など)が可決された後の申立てを検討した方が良いのではないか」と述べた。