米国のドナルド・トランプ政権は、米国内の工場を建てる半導体企業に補助金を支給する見返りとして株式を要求する案を検討しているという。インテルなど米国企業だけでなく、サムスン電子やTSMCなど外国企業にまでこれを要求する方針だという。とうてい理解できない荒唐無稽な発想だ。資本主義の先導国である米国が信頼を基盤にした市場経済の原則を裏切る行為だ。これ以上議論を進めてはならない。
ハワード・ラトニック米商務長官は20日、CNBC放送でのインタビューで、「CHIPS法(半導体法)は単に裕福な企業に金を与えるものだった。米国がなぜTSMCのような企業に金を与えなければならないのか」とし、「トランプ大統領は『バイデンがただあげようとした金を米国人のための株式に換えよう』と言っている」と述べた。これが現実となると、47億4500万ドル(約6900億円)の補助金を支給されるサムスン電子は、株式の1.56%を米国政府に渡さなければならない。イ・ジェヨン会長の保有分(1.65%)に迫る膨大な規模だ。
開いた口が塞がらない。米国は自国の半導体産業の再建と経済安保のため、半強制的に韓国企業の投資を誘致しておきながら、今になって荒唐無稽な主張をしている。補助金を支給される代わりに、韓国企業が抱えざるをえない機会費用もかなりのものだ。10年間、中国に半導体工場の新増設はできない。投資財源は限られているため、国内投資余力が減り、国内雇用にも否定的な影響が避けられない。にもかかわらず、まるで無条件でお金(補助金)を与えるかのように語っている。いくら覇権国とはいえ、度が過ぎる。
韓国政府は断固として対応しなければならない。トランプ政権は韓国に天文学的規模の投資を求めているが、このように手のひらを返すように約束を覆すなら、今後何を信じて投資できるだろうか。カン・ユジョン大統領室報道官は21日、この報道内容について「事実無根」だと述べたが、安易で消極的な態度だ。私たちが目をつぶったからといって、事態が解決されるわけではない。トランプ大統領の最側近であるラトニック長官が自ら放送に出演し発言したではないか。
米国は米中覇権争いの中で、半導体覇権の維持・拡大に死活をかけている。現在、韓国と台湾に依存している半導体製造さえも、米国企業の力量を育て依存度を下げるという目標を掲げている。もし米国が株式まで保有することになると、敏感な技術まで要求する可能性もある。政府は問題の深刻さに気づき、拒否の意思を明確にしなければならない。