「機械のように勉強して人より上に立った生徒たちが医学部に入ってきます。医学部では良い科(専攻)に行くために、一問でも多く正解を出そうと激しく競争します。(競争ばかりを注入してきた)このような環境が、共同体意識のない医師を作ったのです」
ソウル大学病院のハ・ウンジン教授(重症患者医学科、神経外科)は、「医学部2千人増員」に反発して大学の授業と病院の診察をボイコットした医学部生と専攻医が、1年半ぶりにこれといった謝罪や反省もなく復帰しようとしていることについて、22日のハンギョレとのインタビューでこのように述べた。
ハ教授は「いくら(政府の誤った政策の)被害者だといっても、彼らは同時に加害者でもある。加害者なら『申し訳ない』と言う責任がある」と指摘した。そして「良い医師を期待しているのに、そのような人が育たない環境を韓国社会は作ってきたのではないか。振り返ってみるべき」と吐露した。ハ教授は今年3月、同大学の3人の教授と共に、あらゆる非難を受けながら「これが本当に私の知っていた教え子、後輩たちなのか、怖さを感じる」と述べ、復帰を拒否した医学部生・専攻医を真正面から批判する声明を発表し、大きな注目を集めた人物だ。
ハ教授は、医学部生・専攻医の問題を招いた社会と教育構造全般に対する省察が必要だと強調した。「『医師不敗』社会で医師になるために洗脳されながら生きてきた過程がある。勉強で人を分けて階級化し、その過程で優越意識と競争中心の思考が植え付けられた」。かなりの数の医師が、競争中心のエリート教育の結果として、人に対する配慮や共同体意識を持たず、勉強だけがよくできる「怪物」になっているという問題意識だ。
社会的省察を強調したハ教授は、現在直面している、すでに復帰した医学部生の保護論議が後回しにされることにも懸念を示した。「学生同士の対立解消のために、傷ついたことを共有し合いながら再発防止に取り組むなど、『回復的正義』のようなプログラムの導入が必要だ」と述べた。回復的正義は、過ちに対する処罰ではなく被害と共同体の関係回復に焦点を当てるもので、加害者には自身の及ぼした被害を認識させるとともに、自発的に責任を取るよう誘導するという目的がある。全国40の医学部では、すでに復帰した学生たちの保護のために、「学習権の尊重と共同体秩序の侵害の禁止」を明示し、違反した場合は学則に則って責任を取るという誓約書を書かせるという方策を推進するなど、制裁中心にアプローチしている。
ハ教授は、現在は批判も強いが、医学部生・専攻医の復帰について「これ以上遅らせてはならない」と述べた。ハ教授は「今からでも復帰できるようにすることこそ、韓国社会における医師の輩出の持続にとって重要だ」として、「復帰が遅れ続けると、今(病院で)かろうじて耐えている人々も離れざるを得なくなる」と強調した。今後復帰する学生たちについて「1学期留年」として処理するという医学部の方針が「形だけの留年」だと批判されていることについて、ハ教授は、ある程度は圧力になるだろうとの考えを述べた。ハ教授は「せめて留年適用はきちんとすべき」だとして、「医学部生には成績留年となる学生が多い。留年が2、3度繰り返されると除籍につながるため、(1回の留年が確定するのは)学生たちにとっては不利益になりうる」と説明した。