尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権による「医学部定員2千人増員」に反発して授業を拒否してきた医学部生たちが、1年半ぶりに全員復帰を宣言した。医政対立の解消の糸口が探られているが、医学部の学事正常化までには解決すべき多くの課題が残されている。
大韓医学部・医学専門大学院学生協会(医大協)のイ・ソヌ非常対策委員長は12日夜、ソウル龍山区(ヨンサング)の大韓医師協会(医協)の大講堂で、キム・ヨンホ国会教育委員長、パク・チュミン国会保健福祉委員長、医協のキム・テグ会長とともに「医学部教育正常化に向けた共同声明」を発表し、「国会と政府を信じて学生全員が学校に戻る」ことを表明した。昨年2月からの集団休学を主導してきた医大協が、表面的には「無条件の復帰」を初めて宣言したのだ。
強硬な態度を維持していた医大協が態度を変えたのは、政権交代で政府と国会との対話の場が開かれた中、留年などの学事上の不利益を最小化しようとの意図が背景にある。イ・ソヌ非常対策委員長は「前政権時代に失った信頼を新政権と対話することで回復してきた」として、「(政府には)学事日程の正常化を通じて医学部生が教育に復帰できるよう、総合的な対策を立ててもらいたい」と要請した。同氏は続けて「長期休みや季節学期(長期休み中の集中講義)などを利用してきちんと教育を受ける。学事柔軟化などの特恵とは異なる」と補足した。具体的な復帰時期は明らかにしていないが、各大学から条件が示されれば直ちに今月から授業に参加すると強調した。
しかし、医学部生全員の復帰までには、越えるべき多くの山がある。ほとんどの医学部教育は学期制ではなく学年制であることから、今年の1学期に留年措置が取られると2学期の復学が不可能になる恐れがある。教育部によると、全国40の医学部の在学生のうち、留年対象者は42.6%(8305人)を占め、除籍対象者は46人(今年5月現在)。各大学では留年などの学籍処理を今月末に行うことを予定していた。
結局、医学部生が復帰するためには、対象者のすでに決まっている留年措置を緩和する学事の調整が必要となるわけだ。医学部長の団体である韓国医学部・医学専門大学院協会(KAMC)のイ・ジョンテ理事長は13日のハンギョレの電話取材に対し、「学生たちの復帰を歓迎する」と述べつつも、「KAMCは、1学期に復帰しなかった学生たちに対しては留年処理を行い、新学期に教育を新たに受けるべきとの立場」だと語った。イ理事長は「学生たちの要求どおりにするには、留年などについての学則も改正しなければならず、教育部の承認も必要になる」と述べた。
留年問題が解決されたとしても、教育の質が低下するという懸念も示されている。医学部本科生(3、4年生)は1年に少なくとも40週ほど実習授業を受けなければならないが、すでに7月中旬であるため、きちんと教育がなされるかは懐疑的だ。一部からは、政府はまたも医学部生に特恵を与えたとの批判の声もあがっている。ある非首都圏の医学部長は「すでに1学期が終わったのに、残りの1学期のあいだ授業を受けるだけで進級させてほしいという要求は、国民の目にどう映るか」として、「他科の学生やすでに復帰した医学部生からは不公平だという声もあがるだろう」と語った。
教育部は12日に発表した声明で、「医大協が国会と政府を信じて学校に戻ると発表したことを歓迎する」としつつ、「ただし時期や方法などを含む復帰案は、大学の学事日程、教育条件、医学部教育課程の特性を考慮して、大学および関係省庁と十分に議論し検討する必要がある」と強調した。