李在明(イ・ジェミョン)大統領が今週オランダで開催される北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に出席しないことを決めたのは、米国がイランの核施設を爆撃したことによる中東情勢の急変が大きな理由とみられる。さらに、米国が韓国などの同盟国に国防費の引き上げを求めるなど、過度な圧力を加えている中、周辺国の動向を見守りつつ熟考する時間が必要だと判断したことも影響を及ぼしたというのが、大統領室内外の大方の見方だ。
24~25日(現地時間)にオランダのハーグで開催されるNATO首脳会議は、当初、李大統領の出席が前向きに検討されていた。初の外遊となった主要7カ国首脳会議(G7サミット)での米国のトランプ大統領との首脳会談が、トランプ大統領側の事情で行われなかったことが、最も重く考慮された。大統領室の高官は17日、G7サミットが行われたカナダ・アルバータ州カルガリーのホテルで記者団に対し、NATOでの両首脳の会談を推進するのかと問われ、「(李大統領が)NATOに行くことになれば、そうなる公算がある」と答えていた。
しかし、米国が22日未明にイランの主要核施設に大々的な空爆を行い、イランが報復攻撃を公言したことで、空気は急変した。鎮静化の兆しが見えないイランとイスラエルとの交戦に、米国のイラン攻撃までもが加わったことで、ただでさえ深刻だった中東の地政学的不安がどちらに向かうか分からない状況になったからだ。
中東問題に米国が直接介入した中、NATOに加盟する欧州諸国や韓国などの同盟国に米国が過度な要求をしてくる恐れがあることも懸念したとみられる。米国防総省のパーネル報道官は先に「ヘグセス国防長官が18日(の上院軍事委員会の公聴会)とシャングリラ会合(アジア安保会議)で述べたように、我々の欧州の同盟諸国がアジアの同盟のためのグローバル基準を設定している」、「それは国内総生産(GDP)の5%を国防に支出すること」だと述べている。トランプ政権がNATOの同盟諸国にも同じことを要求している中、トランプ大統領が25日のNATO会議の閉幕演説で、新たな国防費支出計画を自ら明らかにしようとしていることも、少なからぬ圧力となった。
外交当局の関係者は「今回のNATO会議への出席は、多くの面で負担のかかる選択だった。米国のイラン空爆を支持せよと迫られる可能性が高いうえ、李大統領がトランプ大統領に会った際に、北朝鮮に対する強硬対応を要求されると困った状況になる。これらを考慮して、安保室だけでなく秘書室の判断もあっただろう」と述べた。
この日、李大統領が出席しないことを決める直前まで、大統領室の参謀陣の間では、出席と欠席の双方の意見が伯仲していたという。大統領室の高官は「中東が戦争状況へと向かっているのに出席しなければならないのかという意見と、すでに出席の方向で伝えられているのだから行くべきだという意見があった」とし、「結論としては、李大統領が、国内の状況が山積しているうえ、中東の事態がどのように拡大するか分からないから、このような状況で外国に行くのは妥当でないと判断した」と説明した。