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【独自】リバクスクール、9年間「民主主義の公論の場の破壊」企画(2)=韓国

登録:2025-06-19 01:32 修正:2025-06-19 08:17
リバクスクールの事務所で発見された文書「自由大韓民国を守護する側面からみた国民の分類」=読者提供//ハンギョレ新聞社

(1の続き)

■世論への浸透:「自手軍全盛時代」夢見たか

 ソン・ヒョスク代表をはじめとするリバクスクールの関係者が講師としてかかわった「スマホの上手な使い方教室 5月教育」の2021年の会員募集ビラには、「自手軍全盛時代を目指す情熱と努力を応援します」と記されている。「コメントで国を救う自由手指軍」の略語である「自手軍」は、少なくとも4年前には彼らの間で広く使われていた表現だ。高齢者に対するスマートフォン教育は事実上、露骨なコメント工作だったわけだ。

リバクスクールの事務所で発見された「スマホの上手な使い方教室 5月教育」のビラ=読者提供//ハンギョレ新聞社

 リバクスクールの事務所で発見された文書は、ユーチューブ、コメント、ブログを利用してオンラインでの影響力を拡大しようとしていた形跡が随所に見られる。ある会員から全軍連に送られてきたと推定される手紙には、「マルチ商法式(SNS)伝達網」、「マクロプログラム開発」などの内容が記されている。作成の主体と作成時期が不明な別の文書は、記事の見出し、コメント、いいねの数をエクセルで整理して出力したもの。「スマホの上手な使い方教室 5月教育」のビラに記されている教育テーマも「ママカフェコミュニティー」、「国会加入請願」、「ベストコメント」などだ。

リバクスクールの事務所で発見された文書=読者提供//ハンギョレ新聞社

 オンラインでの底辺拡大を図るとともに、複数が結び付いて過激な主張を続けてきたこれらの団体の影響力は、アスファルトにとどまらず制度圏にまで進出しはじめているとみられる。今年3月5日の「李承晩(イ・スンマン)を正しく知る国民連合発足式」の招待状には、チョン・ウンチャン元首相、キム・ムンス前雇用労働部長官が祝辞を述べると記されている。実際に発足式には、チョン元首相と国民の力のナ・ギョンウォン議員が参加している。国民連合には大韓民国守り隊、リバクスクール、全軍救国同志連合会、トゥルースフォーラムなど、2017年以降に結集した右派団体が「共闘団体」として名を連ねている。

リバクスクールの事務所で発見された「李承晩を正しく知る国民連合」発足式の招待状=読者提供//ハンギョレ新聞社

■公論の場の破壊:尹錫悦の友軍自任し勢力拡大

 第21代大統領選挙のコメント操作の中心団体であるリバクスクールを通じて水面上にあらわれた「アスファルト右派」諸団体の主張と行動方式について、専門家たちは「民主主義の土台を破壊しうる危険な姿勢」だと診断する。「リバクスクール事務所文書」で表現されるこれらの団体の姿勢は、社会的合意によって作られてきた常識を否定しているうえ、表出のやり方でも相手の存在を認めない攻撃的な様相を呈しているからだ。また、彼らが長きにわたって公教育(ヌルボム学校)、オンライン(コメント操作)、政界などを通じて影響力の拡大を試みてきたという点で、懸念はさらにふくらむ。

 組織的なコメントの書き込みなどの彼らの「世論戦」は、民主主義の基盤である「公論の場」を破壊する行為だと専門家たちは指摘する。『危険な国家の偉大な民主主義』の著者であるユン・ビ成均館大学教授(政治外交学)は17日、ハンギョレに「個人レベルのコメントの中には非合理的な意見がありうるが、特定の勢力が組織的に世論を誘導しようとしていたのなら、それは民主主義の根幹である公論の場そのものを破壊する行為」だとして、「特に政府や関連機関、組織が彼らとつながっていたなら、『意見を表明しただけだ』という釈明ではやり過ごせない」と述べた。

 今のところリバクスクールなどの右派団体に対する政府による支援疑惑は一部に限らているが、少なくともこれらの団体が尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の友軍を自任しつつ影響力を拡大してきた形跡は、複数の文書で確認できる。リバクスクールのソン・ヒョスク代表は、80あまりの右派市民団体が結成した「自由と連帯」の2022年11月15日の設立総会に出席して「宣伝およびSNS活動」の担当となり、その際に世論戦の重要性を強調している。自由と連帯は「右派団体が結集して尹錫悦政権に対する攻撃に立ち向かう」ことを趣旨として結成された。

 ニューライト歴史観を共有する諸団体が、社会的合意の積み上げによって作られてきた常識に反する国家観や歴史観を教育を通じて広めようとしていたことも危険信号だ。リバクスクール事務所文書で右派諸団体は、済州4・3についての公式記録はすべて「偽り」だと主張したり、5・18民主化運動を「暴動」と規定したりしており、ヌルボム教育(学童保育)のような放課後教育活動を通じて幼い子どもたちにこのような認識を広めようとしていた。ニューライトと韓日の極右勢力を研究してきた聖公会大学社会融合学部のカン・ソンヒョン教授(社会学)は、「ニューライト歴史観は一定の基準に達していないため、すでに教科書検定体制でも採用されていない視点」だとして、「公式の教育課程にもなく検証されてもいない内容を教育することは、一種の宣伝・扇動に近い」と指摘した。そして「リバクスクールは事実上、『政治動員型の教育プラットフォーム』として機能していた」と述べた。

 「獣にも劣る」などの過激な表現で分断を持ち込んだり、「青瓦台攻撃」を計画して相手を排除すべき対象と考えたりといった攻撃性は、尹錫悦前大統領の弾劾局面で表れた支持者の暴力的な姿勢とつながる。忠北大学のハン・サンウォン教授(哲学)は、「仲間の市民のことを、対立したり競合したりしつつも共に共和国を作っていく存在ではなく、排除すべき存在だと考えているという点で、民主主義の危機」だとし、「暴力は他の政治勢力を認めず排斥するという考えを象徴している。それは右傾化から極右化へと変質していく過程」だと説明した。

キム・ガユン、パク・チャンヒ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1203341.html韓国語原文入力:2025-06-18 05:00
訳D.K

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