ソウル市で家事管理士として活動するフィリピンからの移住労働者たちが、当初のケア労働という名目とは異なり、家事業務に追われていることが明らかになった。モデル事業の持続性確保は難しいと指摘する声もあがっている。
ソウル特別市議会が12日午後にソウル市議会で開催した「不安な在留、排除された労働権」と題する討論会で、問題提起をおこなった済州大学のイ・ミエ学術研究教授は、ソウル市で活動する21人のフィリピン人移住労働者と2人の通訳に4月から5月にかけてアンケート調査とフォーカスグループインタビュー(FGI)を実施した結果を公開した。現在、88人のフィリピン人労働者が2つの民間業者に所属し、ソウルで家事管理士として働いている。
今回の調査で把握されたモデル事業の最大の問題は、家事管理士たちが当初フィリピンでケア専門家(caregiver)資格を取って韓国に入国する際、家事管理ではなくケア専門家として活動するとして契約を結んだにもかかわらず、実際に家庭で集中的にやっていることはケアではなく掃除や皿洗いのような家事管理だということだ。移住労働者のAさんは「2つの家庭に通っているが、1つの家庭ではほとんど家事労働だけをしており、もう1つの家でも家中を掃除してようやく2人の子どもを見ることができる」と語った。Bさんは「ベビーシッター契約にサインしたが、今まで一度も子どもの世話はしていない。家をきれいに保つのが職務」だとして、契約書と実際に行う労働が異なると不満を打ち明けた。大半の移住労働者は「子どもたちの英語教育は基本」だとして、英語の宿題を見てやっている、1歳の乳児に英語を教えているとも証言した。さらに、ゴミ捨てや犬の散歩をさせられたり、雇い主の親戚の家の掃除までさせられるという回答もあった。
最低賃金は保障されているものの、労働条件は劣悪だった。住居費、交通費、社会保険料、携帯電話の料金などを引いた実際の手取り額は、平均で127万ウォン(約13万5000円)ほど。15人の有効回答があり、1週間の労働時間が40~52時間と答えた人が7人(46.7%)、30~40時間が5人(33.3%)だった。30時間未満と回答した人も3人(20%)にのぼった。イ・ミエ教授は「彼女たちは子どもの世話の専門家として入国したが、実際には家事労働者として働かされるという契約違反の問題と共に、不十分な賃金、不安定な労働時間、仲介業者の管理・統制中心の非対称な労働関係が最も深刻な問題だった」とし、「彼らの在留の安定を保障し労働権を強化する一方、専門性を基盤として公正に処遇することが必要だ」と語った。