「ミョン・テギュン」という名前が再び韓国メディアのニュースのヘッドラインを飾っている。野党が(政治ブローカーの)ミョン・テギュン氏関連の特検法案を発議し立法手続きに入る中、与党「国民の力」の有力な大統領選挙候補がミョン氏とかかわった情況を示す検察捜査結果が流れたからだ。政界では、ミョン氏問題が憲法裁判所の大統領罷免決定後に開かれる早期大統領選の局面を揺るがす超大型の台風になる可能性もあるとみられている。野党6党の主導で27日に国会本会議を通過した「ミョン・テギュン特検法案」に与党が集団で反対票を投じた理由でもある。与党内部では「ミョン・テギュン疑惑を早期に払拭できなければ、大統領選期間中、なすすべもなく足を引っ張られる恐れがある」という懸念の声もあがっている。
「共に民主党」など野党6党が共同発議したミョン・テギュン特検法は、在席274人のうち182人の賛成(反対91人、棄権1人)で国会本会議で可決された。国民の力は本会議の全議員総会を開き、党の方針として「反対」を決めたが、キム・サンウク議員だけが賛成票を投じた。国民の力は、ミョン・テギュン特検が国民の力全体を狙った「政略特検」だと主張してきた。ミョン・テギュン特検法は、ミョン氏が尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領夫妻との親交を背景に、様々な選挙の公認候補選びに介入し、金銭的利益を手に入れ、地域と中央政界に不当な影響力を行使した疑惑を対象にしている。
特検法は国民の力の第20代大統領選と予備選過程、2022年6月1日の地方選挙、2024年4月10日の総選挙過程なども捜査の対象にしている。特に、オ・セフン・ソウル市長とホン・ジュンピョ大邱(テグ)市長など与党の有力な大統領選挙候補についても、ミョン氏に依頼した世論調査費用を側近に代納させたという疑惑が持ち上がっており、党内外ではミョン・テギュン特検法が施行された場合、「党が焦土化する恐れがある」とみている。クォン・ソンドン院内代表が同日開かれた最高委員会議で、「(ミョン・テギュン特検法は)与党と保守陣営を焦土化するためのもの」だとしたうえで、「早期大統領選挙を狙って第2のキム・デオプ(1997年大統領選の際、イ・フェチャン候補の息子に関する虚偽事実流布で実刑となった人物)を作るという政略特検」だと激しく非難した背景だ。
一方、民主党はミョン・テギュン特検法が「12・3内乱事態の原因と内幕を明らかにするカギ」(パク・チャンデ院内代表)であり、「早期大統領選の局面で最も鋭い刃先」(党幹部の議員)になるとみている。パク院内代表は同日、本会議に先立って行われた議員総会で、「ミョン・テギュン・ゲートは、尹錫悦とキム・ゴンヒ夫妻のアキレス腱であり、ミョン・テギュン特検は尹錫悦が崩した公正と常識を正し、尹錫悦が破壊した憲政秩序と民主主義を正すための法案だ」と述べた。
民主党にとって「ミョン・テギュン・ゲート」は、槍と盾の役割を果たせる切り札といえる。来月、イ・ジェミョン代表の公職選挙法控訴審判決などを控えた状況で、与党の有力候補に対するネガティブ・キャンペーンで対抗できるだけでなく、与党内の分裂も引き出せるとみているためだ。何より特検法が、前回の地方選挙と再・補欠選挙だけでなく、昨年行われた第22代総選挙まで捜査対象にしているため、与党全体が「ミョン・テギュン・ゲート」のブラックホールに陥る可能性もある。
このような事実をよく知っているため、国民の力はチェ・サンモク大統領権限代行副首相兼企画財政部長官に再議要求権の行使を要請し、再採決に持ち越される場合に備え、票の取り締まりにも乗り出す構えだ。クォン院内代表は同日、「特検法制の要求権行使を要請するか」を尋ねる取材陣に「当然だ」と答えた。チェ代行が再議要求権を行使する可能性が高いが、民主党は再議決と再発議に乗り出し、大統領選挙の局面で十分活用するものとみられる。民主党の親イ・ジェミョン派のある議員は「特検法が繰り返し挫折したとしても、与党の大統領選候補らの不正疑惑が含まれた通話録音が公開されたにもかかわらず特検を拒否する与党の態度が国民に良い印象を与えることはないだろう」と語った。