この10年間で、ソウルは人口1千人当たりの精神健康医学科の専門医の数が2倍近くに増えた一方、江原道は10%減少していた。農漁村地域の自殺率の方が高い状況にあって、精神健康医学科の医師がソウルに集中しているため、地域間のメンタルヘルスの不均衡が強まっている。
野党「共に民主党」のチョン・ジンスク議員室が健康保険審査評価院から提出を受けた精神健康医学科の専門医の地域ごとの偏差を示した資料を8日に確認したところ、ソウルの「人口1千人当たりの精神健康医学科の専門医の数」は、2014年6月の時点で0.067人だったが、今年6月には0.130人となっており、10年間で92.5%増加していた。増加率は世宗(セジョン、147.1%)が最も高く、大田(テジョン、56.6%)、釜山(プサン、45.9%)、蔚山(ウルサン、42.1%)など大都市で高かった。
一方、江原道は同じ期間に0.064人から0.057人へと10.1%減少。全国で唯一、専門医の数が減少していた。忠清南道(4.1%)、慶尚北道(7.9%)、慶尚南道(10.1%)なども人口1千人当たりの専門医数の増加率が低かった。10年間で精神健康医学科の専門医数は全国で3067人から4232人へと1165人(38%)増加しているが、増加した人数の45.7%(532人)がソウルに、21.6%(252人)が京畿道に集中していた。江原道、慶尚北道、慶尚南道、全羅北道、全羅南道、忠清北道、忠清南道の19の市・郡には、10年もの間、精神健康医学科の専門医が1人もいなかった。
うつ病などのメンタルヘルスと関係する自殺率は、高齢層が多い農漁村地域で高い。統計庁の資料によると、自殺率(人口10万人当たりの自殺者数、昨年)は忠清南道が36.5で最も高く、続いて江原道(34.7)、忠清北道(33.3)の順だった。世宗市が20.0で最も低く、次いでソウルが23.2だった。全国平均は27.3だった。
公共医療や政府の事業も、農漁村地域のメンタルヘルス診療やサービスの空白を埋められずにいる。全国地方医療院連合会の説明によると、寧越(ヨンウォル)医療院、安東(アンドン)医療院、忠州(チュンジュ)医療院は専門医が見つからず、現在は精神健康医学科がない。チョン・ジンスク議員室の資料によると、情緒に困難を抱える人に心理相談サービスを提供する保健福祉部の「全国民メンタル投資支援事業」は、全国1026のサービス提供機関の48.3%(496機関)がソウルと京畿道に集中している。江原道高城郡(コソングン)、慶尚北道高霊郡(コリョングン)など58の市郡区には1つもない。
嘉泉大学吉病院精神健康医学科のカン・スンゴル教授は、「社会的関係の断絶などに直面する高齢者の多い農漁村のメンタルの健康問題も深刻なのに、へき地に住む住民は十分な診療が受けられない」とし、「政府は農漁村地域を対象としたメンタルヘルスに関する事業を増やすべきだ」と述べた。チョン・ジンスク議員は、「地方は事実上、メンタルヘルスの死角地帯として放置されている。政府はこれを解決するために積極的に投資すべきだ」と述べた。