原子力安全委員会(原安委)が、文在寅(ムン・ジェイン)政権時代に建設が中止された慶尚北道蔚珍(ウルチン)の新ハヌル原子力発電所の3、4号機の建設を許可した。蔚珍に建設される9、10番目の原発となる新ハヌル3、4号機が完成すると、全国で稼動する発電用原子炉の数は30基となる。
原安委は12日午前の会議で「新ハヌル3、4号機の建設許可」案件を決議したと明らかにした。韓国水力原子力(韓水原)が2016年に建設許可を申請してから8年たって、本格的な工事が許可されることになったのだ。韓水原によると、新ハヌル3号機は2031年、4号機は2032年から商業運転に入る計画だ。新ハヌル3、4号機は出力1400メガワットの加圧水型軽水炉(APR1400)で、現在運用中の新ハヌル1、2号機と基本設計は同じ。
新ハヌル3、4号機の建設事業は、文在寅政権時代に「エネルギー転換ロードマップ」に則って中止された。しかし尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が2022年7月に建設事業の再開を宣言したことで、再び審査手続きがはじまった。昨年6月に政府は実施計画を承認。その後、原安委は位置、設備の技術基準、環境への影響、解体計画書、重大事故政策などを検討し、この日、建設許可決定を下した。韓国原子力安全技術院は、「原発の安全性に影響を与えるほどの地震および陥没などの地質学的災害は発見されておらず、津波などの可能性も低いため、用地の安全性は確保されている」と説明した。
国内で新規原発建設が許可されたのは、2016年6月のセウル3、4号機(新古里5、6号機)以来8年3カ月ぶり。セウル3、4号機(来年完成予定)に続き、新ハヌル3、4号機まで完成すれば、韓国では計30基の原発が稼動することになる。政府は現在、2029年までに40年間の運用許可期間が終わる古里(コリ)、ハンビッ、ハヌル、月城(ウォルソン)の計10基の原子炉に対して、稼働延長手続きを進めている。産業通商資源部は今年6月の第11次電力需給基本計画実務案によって、3基の新規原発に加えてさらに小型モジュール原発(SMR)1基を建設する計画も明らかにしている。尹大統領が国政課題として掲げた「脱原発政策の廃棄および原子力産業エコシステムの強化」の一環だ。
このように新規原発建設が本格化したことについて、市民団体「核から安全に暮らしたい蔚珍の人々」のイ・ギュボン代表はハンギョレに、「文在寅政権時代にロードマップに則って中止された事業なのに、政権が変わったからといってこのようにまたも推進されるのはとうてい理解できない。一つの敷地に10基の原発が密集して建設されるわけで、どうして安全だと断言できるのか分からない」と述べた。原発建設予定地から4キロほど離れた蔚珍郡竹辺里(チュクピョンニ)に住むチョン・ジョンニュルさん(53)は、「今の原発産業の腹を膨らませるために後代の魂を売る行為」だと語った。