韓国政府は「全世界の原子力発電の容量を2050年までに2020年の3倍水準にまで拡大」することを目標とする国家間協力への参加を宣言した。しかし、大事故の危険性はさておくとしても、原発によるエネルギー生産コストが日増しに高まっていることなどを考慮すると、原発拡大による炭素排出削減計画は現実とかけ離れていると指摘する声があがっている。
産業通商資源部は2日(現地時間)、「第28回国連気候変動枠組み条約締約国総会(COP28)」が行われているアラブ首長国連邦のドバイで、韓国、米国、フランス、英国、スウェーデンなど世界22カ国が「ネットゼロ・ニュークリア」イニシアチブの支持宣言文を採択したと発表した。
産業部はこれと関連して、同部のカン・ギョンソン第2次官がこの日、同イニシアチブに対する支持演説を行い、韓国がすでに気候危機解決のためにエネルギーミックスにおいて原発の役割の拡大を推進していることを強調しつつ、韓国の安全な設計・施工・運営などの原発産業の全ライフサイクルにわたる技術と経験を全世界と共有することを明らかにしたと語った。
世界原子力協会(WNA)が主導した今回のイニシアチブは、気候危機の解決に向けて原発をクリーンエネルギーと認め、2050年までに全世界の原発の発電容量を2020年の3倍に拡大するため、国家間協力を行うとする内容などを盛り込んでいる。
韓国を含む22の参加国は、WNA、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)、国際エネルギー機関(IEA)などの分析結果を根拠として、2050年までに炭素純排出量をゼロにする「ネットゼロ(炭素中立)」を達成するためには、原子力による発電量を現在の2~3倍ほどに増やさなければならないと主張している。米国のジョン・ケリー気候問題担当大統領特使はこの日の宣言式で、「原子力が他のすべてのエネルギー源に対する包括的代案になるとは主張しないが、科学は核なしでは2050年のネットゼロに到達できないということを示している」と述べた。
原発が脱炭素の解決策として改めて注目されるようになったのは、最近のロシア-ウクライナ、イスラエル-ハマス戦争などの影響で世界的にエネルギー安全保障の危機が高まっているからだ。2011年の福島第一原発事故を機として大事故に対する警戒心が高まり、国際社会に脱原発の風が巻き起こったうえ、放射性廃棄物の処理問題や高価な建設費などを理由として、このかん主要先進国においても新規建設は停滞していた。
専門家は、原子力発電所の建設期間の長期化とコスト高騰が続いているため、宣言通り2050年までに発電量を3倍に増やすことの実効性に疑問を示している。特に韓国の場合は、2020年現在で23.25ギガワットの原発設備量を2050年までに3倍に増やすためには、昨年末から稼動を開始した「新韓蔚(ハヌル)1号機」のような1.4ギガワット級の原発を毎年1基以上建設しなければならない。
気候環境団体「オイル・チェンジ・インターナショナル」のデビッド・トング研究員はニューヨーク・タイムズとのインタビューで、「今回の宣言は、原子力エネルギーは高く、(建設に)非常に時間がかかるという現実とかけ離れている」と指摘した。