28日、国会本会議に上程された「(海兵隊員)C上等兵特検法」の可決を阻止したことで、与党は直ちに大きな混乱は免れたが、「結局、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の保身を選んだ」という汚名を避けられなくなった。C上等兵特検に向けた国民の要望が高いうえに、2日後に開院する第22代国会で192議席を確保した汎野党圏が、1号法案としてC上等兵特検法を可決すると意気込んでおり、「(特検法の再可決まで)時間を稼いだだけ」ともみられている。
尹大統領が21日、再議要求権(拒否権)を行使して国会に送り返した「C上等兵特別検事法」がこの日の再表決で否決されたことを受け、最大野党「共に民主党」をはじめとする野党6党は表決直後に国会中央ホールで糾弾大会を開き、「最悪の議会惨事の日」、「尹錫悦保身党」だとしてそろって与党「国民の力」を批判した。民主党のイ・ジェミョン代表は、「国民の切実な意志を与党議員たちがくじいてしまった。結局、真実を隠蔽することが(与党の)利益になる状況だと考えざるを得ない」と述べた。民主党のパク・チャンデ院内代表も「国民は今日を一握りの権力を守るために国民の声を踏みにじった最悪の議会惨事の日として記憶するだろう」とし、「いったい何がそんなに不安で恐ろしいからといって『離脱票の取り締まり』までして真実を隠すのか」と述べた。
「一丸」となって否決を死守した与党は「龍山(ヨンサン)出張所」、「大統領親衛隊」という批判にもかかわらず、ひとまずは安堵している様子だ。しかし、野党は同日の表決結果が、尹錫悦政権に対する国民の批判世論を高める「薪」の役割を果たすとみている。直ちに野火のように広がる怒りではなくても、「拒否感」が着実に高まっているということだ。民主党のある初当選者は「今回与党が離脱票を投じれば大統領室の『共犯』という疑惑を晴らすことができたのに、火に油を注いでいるようだ」と述べた。民主党幹部のある議員も「C上等兵特検は国民的共感が非常に高いイシューなので、より強く戦わなければならない」と語った。
特に、C上等兵特検法の否決は保守支持層の離脱を触発しうるカードという分析もある。改革新党のホ・ウナ代表は本会議後の記者会見で、「最後まで特検を避けようと努める尹大統領には国民の審判が下るだろう」とし、「無念な死を遂げた兵士の死の前に、卑屈に沈黙を守る与党は、もはや保守でも何でもない」と述べた。民主党の別の党役員は「C上等兵特検法は保守層の一部にとっても重要なイシューだ。もし危険水域の支持率20%台後半まで崩れれば、与党も変化せざるを得ないだろう」と見通した。
このため、野党は場外集会を通じて批判世論を高めると同時に、30日に第22代国会が開院し次第、C上等兵特検法の再発議で共同戦線を張る計画だ。祖国革新党のファン・ウンハ院内代表は「総選挙の民意よりさらに強い国民の怒りが沸き立っている」とし、「第22代国会の野党6党に提案する。C上等兵特検法を第22代国会で最初に可決させる法案にしよう」と提案した。野党6党は25日、特別検事法の成立を求める汎国民大会を主催したのに続き、来月1日には特検法の否決を糾弾する汎国民大会に出席し、引き続き市民社会と連帯していく方針だ。新しい国会が初日から与野党の全面戦争になる見通しだ。
現在115議席の保守与党の議席は、第22代国会では108議席に減る。与党で8人が心変わりするだけで、尹大統領の拒否権は無力化される。在籍議員300人のうち3分の2の200人が団結すれば、大統領が拒否権を行使した法案も可決させることができるからだ。「政権審判論」という総選挙の民意に後押しされた「強硬派」が占める192議席の野党は、C上等兵特検法だけでなく、2月に否決された「(尹大統領夫人)キム・ゴンヒ特別検事法」はもちろん「ハン・ドンフン特検法」の可決まで予告している。
民主党の党役員は「国民の暮らしと関連した法案はもちろん、尹錫悦政権の不当な権力行使に対する強力な国政調査と特検法を推し進める」と述べた。2期目の当選を果たしたある議員も「尹大統領は証拠を隠滅し、局面を転換する時間を稼いだだけだ。国会が開会すれば、間髪入れずキム・ゴンヒ特検法などを推進しなければならない」と述べた。第22代国会常任委員長を配分するための与野党の院構成をめぐる交渉も一層厳しくなる見込みだ。
祖国革新党と野党圏支持層では、C上等兵特検法と関連づけて「尹大統領弾劾」の声もあがっている。ただし、民主党はこの主張には慎重を期しながらも、それに向けた名目作りに入っている様子だ。民主党指導部議員は「まだ弾劾の話を持ち出す時期ではない」としながらも、「国民の熱気が高まっているため、それに歩調を合わせて戦っていくしかない」と語った。