尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は、就任2年を控えた9日の記者会見で、海兵隊員殉職事件の捜査外圧疑惑に関する特検法(C上等兵特検法)に再議要求権(拒否権)を行使する考えを示した。夫人のキム・ゴンヒ女史のブランドバッグ受け取りについては初めて「謝罪」したが、野党のキム夫人関連特検導入要求は「政治的な攻撃」だと反論した。野党は「尹大統領は民意を受け入れ変化する機会を自らはねつけた」と強く批判した。
尹大統領は同日午前、大統領室で「尹錫悦政権2年国民報告および記者会見」を開き、昨年7月に起きた海兵隊員殉職に関して「前途洋々たる若い海兵隊員(C上等兵)が民間人支援作戦中に殉職したことは、国軍統帥権者としても残念で非常に胸を痛めている」と述べた。
だが、尹大統領は「(警察の高位公職者犯罪捜査処で)進められている捜査と司法手続き、捜査関係者の心構えと姿勢をひとまずは信じて見守るのが正しいと考える」とし、2日に野党「共に民主党」の主導で国会で可決されたC上等兵特検法に拒否権を行使する方針を示唆した。また「(捜査結果を)見て、国民から『身内かばいの疑いがある、納得できない』という反応があったら、私から特検を求める」と述べた。
尹大統領はキム・ゴンヒ女史のブランドバッグ受け取りに関して「妻の賢明でない行動で国民の皆さまにご心配をかけた点を謝罪する」とし、初めて「謝罪」を口にした。最近着手した検察捜査については「公正で厳正にきちんと進めると思う」と述べた。
その一方で、尹大統領は野党が要求する「キム・ゴンヒ氏のドイツモーターズ株価操作疑惑特検」に関しては「真相を明らかにするためではなく、政治的な攻撃であり政治行為」だと主張した。「ドイツ(モーターズ株価操作)やこのような事件に対する特検問題も、前政権で2年半ほど私をターゲットにし、検察が特捜部まで動員して厳しく捜査した」とし、「前政権が私と私の家族をかばってずさんな捜査をしたということなのか、問わざるを得ない。それ自体が矛盾している」と述べた。
この日尹大統領は、「少子化対応企画部」を新設し、この部の長官は社会副首相を兼任しつつ教育・労働・福祉政策全般を監督するという構想も明らかにした。次期首相を含む後続内閣改造は「急いで行うつもりはない。国民のためにきちんと仕事ができる方を探して人事を行う」とした。
尹大統領が記者会見を行ったのは、2022年8月17日の就任100日の記者会見以来631日ぶり。4月10日の総選挙を経て、民意を傾聴しコミュニケーションを強化するという意思が込められている。だが、共に民主党のパク・チャンデ院内代表は「国民の期待に全く応えられていない、非常に失望した会見」だと酷評した。「総選挙の結果に対する省察は全く見られなかった。依然として『私はよくやったが、意思疎通が足りなかった』ということに固執している」とし、「誤答を書いておいて正解だと言い張るようなもの」だと批判した。正義党のキム・スヨン先任報道担当も「責任逃れで始まり責任逃れで終わった記者会見だった」とし、「国民は尹大統領の努力を感じられなかったのではなく、退歩を身にしみて感じたからこそ投票で政権を審判したのだ」と批判した。