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尹大統領、「民意聴取」掲げ民情首席を復活させたが…「司法リスク防御」との批判も

登録:2024-05-08 06:00 修正:2024-05-08 09:24
「警察と検察の掌握力を高めるのが狙い」  
「民意聴取が主な任務の市民社会首席は空席」
尹錫悦大統領が7日、ソウル龍山の大統領室庁舎で新民情首席に任命したキム・ジュヒョン元法務部次官を紹介した後、取材陣の質問に答えている/聯合ニュース

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は7日、民情首席室を新設し、キム・ジュヒョン元法務部次官を民情首席秘書官の指名した。掲げた名目は「民意聴取」だ。しかし野党と市民社会は、尹大統領が公約を覆し民情首席室を復活させたことについて、「警察や検察への掌握力を高め、司法リスクを防御するのが狙い」だと一斉に反発した。

 尹大統領は同日、龍山(ヨンサン)の大統領室でキム新首席を任命した事実を自ら発表し、「前回、(野党『共に民主党』の)イ・ジェミョン代表と会談した時も、野党代表団が民意聴取機能について指摘した」「金大中(キム・デジュン)大統領も逆機能を懸念し、法務秘書官室だけを置いていたが、結局は就任から2年で民情首席室を復元した」として、今回の人事の背景を説明した。民情首席室の設置は民意に耳を傾けるための措置であり、野党とマスコミが指摘してきた内容を受け入れたものである一方、歴代政権が例外なく運営した組織を「復元」することだと強調したのだ。

 しかし、尹大統領の説明にはあまり説得力がなかったものとみられる。「参与連帯」は同日発表した声明で、「本来、民意聴取機能を果たす市民社会首席室は現在空席のまま」だとし、「(国会や市民社会などと意思疎通を図る)市民社会首席の機能強化などを通じた民意聴取が十分可能であるにもかかわらず、民情首席を復活させた」と批判した。民主党のチェ・ミンソク報道担当は「民情首席を通じて民意を聴取するとはつじつまが合わない」とし、「警察や検察を前面に出して世論の動向でも把握するつもりなのか」と批判した。

 野党と市民社会でこのような反発が出てくる理由は、歴代の民情首席の役割のためだ。公式に民情首席は、高位公職者人事検証▽国政をめぐる世論聴取▽高位公職者の服務動向の点検▽大統領の親戚の管理▽警察や検察との意思疎通などの機能を担当するが、「民意聴取」よりは「警察や検察の指揮」に重きが置かれてきた。このため尹大統領も、大統領当選後の2022年3月14日、「過去、警察や検察を掌握した民情首席室は合法を装って政敵や政治的反対勢力を統制したケースが一度や二度ではなく、世評の検証を装い国民の身元調査などを行ってきた」と指摘した。さらに尹大統領が民情首席の廃止を公約し、これを履行したことで、政界では検察総長出身の尹大統領が誰よりも民情首席の弊害をよく知っているために下した決定だと評価された。

 だが、尹大統領が民情首席を復活させ、その下に民情秘書官(新設)、公職綱紀秘書官、法律秘書官を置く方針を発表したことで、公約を覆したという批判はもちろん、問題に挙げた「警察と検察の掌握」をめぐる議論を自ら招くことになった。特に、キム新首席は司法研修院18期で、イ・ウォンソク検察総長(27期)よりも9期先輩だ。上下関係に厳しい検察の特性から、民情首席を通じた大統領室の検察統制が容易に行われる構造であるわけだ。このため、検察内部からですら懸念の声があがっている。地方のある部長検事は「(民情首席が)実質的に警察や検察を管掌し、捜査内容をあらかじめ受け取る役割も遂行する可能性がある」と懸念を示した。また別の部長検事は「過去の民情首席室と検察の関係に回帰するだろう。民情首席が検察の人事にも強い影響力を発揮するかもしれない」と語った。ただし、彼は「最近の若い検事たちが(そのような雰囲気を)受け入れるかは疑問」だと付け加えた。

 野党は尹大統領が民情首席を復活させた目的が「検察掌握を通じて家族を司法リスクから救う」こと(民主党のチェ・ミンソク報道担当)にあると強く疑っている。4月10日の総選挙で野党が圧勝したことで、尹大統領を狙った「海兵隊C上等兵殉職事件への捜査外圧疑惑特検法」(C上等兵特検法)の国会議決▽検察の(尹大統領夫人の)キム・ゴンヒ女史のブランドバッグ授受疑惑捜査専門チームの構成▽第22代国会で株価操作疑惑などキム女史関連特検の推進予告など、圧力が強まったことを受け、検察高位幹部出身を民情首席に座らせて警察と検察を掌握し、司法リスクに備えようとしているということだ。正義党のキム・ミンジョン報道担当は「大統領一家と側近を不正疑惑から守るのにこれほど(キム首席ほど能力が)検証された人物はいないだろう」としたうえで、「レームダックを越えてデッドダックという評価を受けている尹錫悦大統領が、捜査機関の統制で危機を免れようとするありふれた人事手法」だと主張した。

 これに対し、尹大統領は「司法リスクがあれば私が(解決)しなければならない問題であり、私の問題、また私に対して提起されたことがあれば、自分で説明して解決しなければならないのであって、民情首席が解決すべきことではないと思っている」と一線を引いた。与党「国民の力」のチョン・ヒヨン首席報道担当も「民情首席室の新設のすべての焦点は何よりも『意思疎通』にある」とし、「ありのままの民意を聴取し国政運営に反映するという強い意志」だとして歓迎した。非尹(錫悦)派のユン・サンヒョン議員はフェイスブックへの投稿で、「民情首席室と共にできるだけ早く(キム・ゴンヒ女史を公に担当する)第2付属室も設置しなければならない」という意見も出した。

 当初民情首席を廃止し法務部に渡した公職者人事検証機能や、特別監察官と第2付属室をなくし事実上放置されてきた親戚管理機能を取り戻すかも関心事だ。これと関連して大統領室の高官は「(今後)協議して作る方針」とだけ述べた。

イ・スンジュン、ソン・ヒョンス、イム・ジェウ、チョン・ヘミン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1139597.html韓国語原文入力:2024-05-08 00:02
訳H.J

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