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韓国検察、「大統領夫人疑惑」捜査チーム設置…大統領職務との関係性は明らかになるか

登録:2024-05-07 06:16 修正:2024-05-07 08:56
キム・ゴンヒ女史のブランドバッグ授受疑惑めぐる捜査の争点 
検察、キム女史を直接取り調べる可能性も  
ドイツモーターズ株価操作についても取り調べの可能性あり 
民主党「特検前に組織を守ろうとした判断」 
昨年12月11日、尹錫悦大統領とオランダを国賓訪問するキム・ゴンヒ女史が京畿道城南のソウル空港に到着し、移動している/聯合ニュース

 イ・ウォンソク検察総長が尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領夫人のキム・ゴンヒ女史の「ブランドバッグ授受」疑惑について速やかな捜査を指示したことで、キム女史の刑事処罰の可能性だけでなく、取り調べ実施の可能性についても関心が集まっている。公職者の配偶者は請託禁止法上、刑事処罰の対象ではないため、キム女史が刑事処罰を受ける可能性は低いが、事実関係を確認するために直接取り調べが行われる可能性は高いためだ。この場合、ドイツモーターズの株価操作事件関連の取り調べまで同時に行われる可能性があるとみられている。

 6日のハンギョレの取材の結果、ソウル中央地検刑事1部(キム・スンホ部長)は特別捜査担当の4次長検事傘下の反腐敗捜査3部、犯罪収益還収部、公正取引調査部からそれぞれ1人ずつ、計3人の検事の派遣を受けた。イ総長が2日、ソウル中央地検のソン・ギョンホ地検長から報告を受けた際、「専門捜査チームを設け迅速かつ徹底的に捜査せよ」と指示したことに伴う措置だ。

 チームを設けた検察は、9日に尹錫悦大統領とキム女史を告発したインターネットメディア「ソウルの声」のペク・ウンジョン代表を告発人として取り調べる計画だ。ただし、ペク代表がハンギョレに「追加の告発および陳情のため20日以降に日程を調整してほしいと要請する予定」だと明らかにしたことから、取り調べが延期される可能性もある。

 昨年11月27日、「ソウルの声」はキム女史が2022年9月に在米韓国人統一運動家であるチェ・ジェヨン牧師(62)から300万ウォン(約34万円)相当のクリスチャン・ディオールのバッグを受け取る姿などを撮影した映像を報道し、同年12月、尹大統領夫妻を最高検察庁に請託禁止法違反、収賄などの疑惑で告発した。同メディアはチェ牧師以外の請願人からキム女史が多数の「贈り物」を受け取った情況が映像で確認できるとして、さらなる告発も準備している。

 検察が本格的な捜査に乗り出した場合、捜査結果に劣らず関心を集めているのは、キム女史を直接取り調べるかどうかだ。ブランドバッグなどを渡したチェ牧師、それを受け取ったキム女史、配偶者の尹大統領などの行為に対する法律的判断のためには、明確な事実関係の取り調べが必要であり、このためにキム女史の取り調べは避けられないためだ。

 検察がキム女史を直接取り調べることになれば、ドイツモーターズ株価操作関与疑惑に関する取り調べも共に行われる可能性がある。同事件は、ソウル中央地検反腐敗捜査2部(チェ・ジェフン部長)が担当しており、捜査部署は異なるが、キム女史を何度も呼び出して取り調べるのは容易ではないため、検察内ではあり得るシナリオとみている。検察高官は「ドイツモーターズ事件で起訴された人たちの二審裁判が終わる前だとしても、キム女史を取り調べる可能性は残っている。キム女史(ブランドバッグ関連)の取り調べが可能になる時点で、もう一度正確に判断しなければならない」と述べた。

 捜査が本格化すれば、ブランドバッグと大統領職務との関連性が主な争点になるものとみられる。請託禁止法は公職者の配偶者が公職者の「職務と関連して」一度に100万ウォン(約11万円)を越えるものや、年間300万ウォンを超過する金品を受け取ってはならないと定めている。配偶者への処罰条項はないため、職務関連性が認められてもキム女史が処罰される可能性は低い。しかし、いったん職務関連性が認められれば、尹大統領の違法性を問わなければならないため、大統領室にとっては負担となりうる。請託禁止法は「配偶者が公職者の職務と関連のある禁止金品を受け取った場合」のみ公職者に「所属機関長への報告」義務を課しており、これに違反した場合は処罰(3年以下の懲役または3000万ウォン以下の罰金)の対象にしている。

 請託禁止法は、報告義務が発動される場合、所属機関長に「書面」で報告するよう規定している。書面報告書の様式も存在する。尹大統領本人を機関長と解釈し、報告義務がないとみなすこともできる。一方、報告義務はあり、報告は法規定どおり「書面」でなされなければならないとみることもできる。検察が後者と判断すれば、尹大統領が作成した書面報告書の有無が尹大統領に対する刑事処罰が下されるかどうかを分けうる。

 告発人は、夫婦は法的に経済共同体であるため、大統領夫人が収賄の共犯にもなり得ると主張する。大統領の収賄罪の場合、「包括的賄賂罪」として職務の関連性が幅広く認められるため、収賄罪も成立するということだ。

 しかし法曹界では、収賄罪の成立は容易ではないという意見が多い。賄賂捜査の経験が多い検察関係者は「職務の関連性さえ認められれば請託禁止法違反、これに加えて見返り性・不正請託まで認められれば収賄」だとし、「『請託禁止法が認められないのに収賄罪は認められる』状況はほとんどない」と語った。部長判事出身の弁護士も「大統領の人事権範囲が広いのは事実だが、実際に二人の間でどんな対話が交わされたのかが重要だ」とし、「職務関連の不正請託の有無が捜査で糾明されない限り、収賄罪は成立しない」と指摘した。

 検察総長が告発から5カ月が経って事実上の公開捜査を指示したことについても、その背景をめぐり様々なうわさが飛び交っている。イ総長は、キム女史の株価操作疑惑事件と関連し、直接取り調べる必要があると主張したことで、大統領室と軋轢があったという。このため、大統領室が民情首席秘書官を復活させ、その後、高官を通じて検察統制に乗り出す動きを見せたため、総長が独自行動に出たという見方もある。ある次長検事は「イ総長が事件を穏便に収めるつもりなら、警察に送るか、既存の捜査チームで片づけただろう」とし、「(政権と関係なく)『正道を歩む』というメッセージを送ったものとみられる」と話した。

 一方、総選挙で圧勝した野党「共に民主党」の「キム・ゴンヒ特検」を意識した選択という見方もある。また別の検察関係者は「(捜査に手を付けていない状態で特検が発足した場合、打撃を受ける可能性があるため)組織を守るための判断とみられる」と語った。

ペ・ジヒョン、チョン・ヘミン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1139412.html韓国語原文入力:2024-05-06 22:12
訳H.J

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