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日本のAV俳優参加の「アダルトフェスティバル」韓国で中止…議論は終わっていない

登録:2024-04-20 08:04 修正:2024-04-21 06:59
論議の経緯を振り返る
「アダルトフェスティバル(2024 KXF The Fashion)」の主催者側が18日、YouTubeを通じてイベントの中止を告知した=YouTube動画よりキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 日本のAVの俳優が参加する、いわゆる「アダルトフェスティバル(2024 KXF The Fashion)」の開催をめぐり、ここ数日激しい論議が繰り広げられている。京畿道の水原市(スウォンシ)と坡州市(パジュシ)、ソウル市に続き、ソウル市江南区(カンナムグ)などが、イベント開催不許可あるいは禁止の意向を表明し、17日に改革新党のチョン・ハラム比例代表当選者が「男性の性的自己決定権を制限して男性の本能を悪魔化する社会は、まったく正常な社会ではない」として、ソウル市のオ・セフン市長と江南区庁のチョ・ソンミョン庁長の公正な行政権行使を求め、議論をさらに激しくさせたのだ。

■「アダルトフェスティバル」、いったいどんなイベントなのか

 アダルトフェスティバルは、実際のところ、今年初めて開催されるものではない。アダルトコンテンツの製作会社「プレイジョーカー」と、「韓国成人コンテンツ協会」(KACA)は昨年12月10日、京畿道光明市(クァンミョンシ)で初めてのイベントを開催した。

 これらの団体がKACAのウェブサイトに掲載した文章には、昨年のイベントには1300人が来場し、「(今年のイベントでも)ビキニの水着、SM(サドマゾヒズム、苛虐・被虐的行為)の衣装を着たAV俳優のファッションショーを披露」と紹介されている。

 前売り券サイトによると、今年のフェスティバルの一般チケットは7万ウォン(約7900円)、VIPチケット(先着順30席)は320万ウォン(約36万円)。7万ウォンのチケットの場合、購入時にAV俳優のサインをもらえて写真撮影が可能だという説明になっているが、VIPチケットの正確なサービス内容は公開されていない。主催者側は、今月初めに国会の国民請願に投稿した資料で、5000人以上が入場券を買ったことを明らかにした。

 今年のイベントが当初予定されていた場所は、京畿道水原市の管轄だった。しかし、アダルトフェスティバル開催のニュースが知られると、水原女性団体ネットワークと水原市民社会団体協議会が反発し、ブレーキをかけた。

 水原女性団体ネットワークなどは3月12日に記者会見を開き、「(昨年のイベントで)チケットを購入した男性を対象に、AV俳優が『類似売春』とみなすことができる行為を提供したことが確認された」として、「これは、『女性の性』を媒介に収益だけを狙う性搾取であり、性売買を擁護する文化を拡散させるだけだ」と批判した。イベントの会場が近くの小学校から横断歩道をはさみ50メートルの距離にあるという事実が広まると、保護者らの反発も加わった。

 主催者側は3日後、YouTubeに投稿した動画を通じて「未成年者は立ち入り禁止で身分証の確認後に入ることのできるイベントであり、成人が成人のためにビキニを着てファッションショーをすることが、何の問題になるという話なのか」と反論した。「大韓民国の人たちの初体験の年齢は13.6歳で、子どもたちの性文化は先行しているというのに、親たちだけが遅れている」として、「正しい性文化のためには、アダルト関連の会社との協業が切実に求められる時代」だとも主張した。

 しかし、プレイジョーカーが昨年のアダルトフェスティバルの場面を紹介したYouTubeの動画をみると、ビキニを着た女優が男性参加者に密着して身体を接触させる様子が登場する。うつ伏せになった男性の上に乗って胸などの身体を密着させる動作もみられた。インターネットのコミュニティには、「現場で志願した参加者が体にシールを付け、(ビキニを着た)俳優が目隠しをしてその人を探したり、うつ伏せになると俳優が上に乗ってくるゲームがあった」という昨年のイベント参加体験談も投稿されていた。

「水原女性の電話」などで構成された水原女性団体ネットワークが3月12日、水原駅の文化広場でアダルトフェスティバルのイベント反対の記者会見を行っている=水原女性の電話提供//ハンギョレ新聞社

■「成人だけが来るのに何が問題なのか」vs「女性を取引する商品扱い」

 性暴力予防の教育活動を行うキム・ヨンソ講師は、主催者側の主張に対して「初体験年齢が13.6歳だとして、『どうせ子どもたちはみんな知っている』という論理を展開しているが、13.6歳で結ぶ性関係がいかに危険であるかを教えることこそ、社会と大人の役目だ」と述べた。あわせて、「AV俳優を招いてビキニショーをする手法では、『正しい性教育』はできない」と述べた。

 「男性と共にするフェミニズム」の代表であり、性平等教育活動家であるイ・ハン講師も、性に対する厳格主義は警戒しなければならないが、今回のイベントには問題があるとみる。「(性に対して)理由なしに断片的に女性を対象化する形式のイベントを進めることは望ましいとはいえない」として、「世の中のすべての男性が、女性を対象化するかたちだけで性を享有することを前提にしているようだ」と指摘した。

 お金を払いビキニのみを着用した女性の体を見物したり、身体接触をさせることは、結局は人を自律的な主体でなく「取引対象の物」とみなしているため、社会がこれを容認しなければならない「文化」ととらえるべきかどうかという問いも続いた。

 日本のAV産業自体に内在する性搾取や人権侵害、暴力に目をつぶり、これを楽しむことができる性文化だと主張することに対する問題意識も強かった。坡州市のキム・ギョンイル市長は5日、イベント禁止の意向を明らかした文書で、「日本のAVは女性の身体を過度に露出させ、強制わいせつや強姦などを助長する動画を生産したりもしており、俳優が制作会社から金銭的に搾取され、身体・精神的虐待にあった事例もある」と指摘した。

■「男性対女性」の構図に突然脱線

 「男性の権利」を前面に出し、アダルトフェスティバルの開催を許可すべきだという改革新党のチョン・ハラム氏の主張に対しても、論議が入り乱れている。チョン氏は17日、自身のフェイスブックに「女性専用19禁(19歳以下禁止)公演」を取り上げ、「女性たちの本能は自由かつ主体的な女性たちの正当な権利であると認められる反面、男性たちの本能はそれ自体が犯罪視され、低質でおぞましいものに置き換えられている」と書いた。

 はたしてこのイベントが「正しい性文化」を作るためのものなのかという論争を、「男性対女性」の対決の構図に捻じ曲げげたものだ。しかし、男性対女性の構図で事案をみるのは女性に対する暴力と搾取の歴史を消す機械的な性平等だという反論が出てきた。

 延世大学のナム・イム・ユンギョン教授(文化人類学)は、「アフリカ系アメリカ人に対する警察の残忍な対応に抗議する『黒人の生命は大切だ(Black Lives Matter)』運動が始まると、『白人の生命も大切だ(White Lives Matter)』というスローガンが出てきて、最終的には『すべての生命は大切だ(All Lives Matter)』という言葉で締めくくられた。すべての生命が重要だという言葉は正しいが、そのような普遍的な言葉は、アフリカ系アメリカ人が体験した差別の歴史を消すものだ」と説明した。すなわち、「女性も楽しんで男性も楽しもう」というような観点は、女性に対する暴力と差別の歴史を削除することだという趣旨だ。

 チョン氏の発言の適切性の有無は別にして、今回の事案を男性対女性の対決の構図と解釈する観点は、むしろアダルトコンテンツに対する討論と議論を不可能にさせる消耗的な論争だけを誘発するという苦言も出てきた。

国際人権団体「ヒューマンライツ・ナウ」(HRN)が2016年に公開した報告書には、AVへの出演を強要された後、その動画が販売され続け、最後には自殺した被害者の事例が言及されている=HRNの報告書よりキャプチャー//ハンギョレ新聞社

■「法的問題はない」が…教育環境保護法を理由に禁止した地方自治体

 イベントの内容をめぐる論争とは別に、水原市などの一部の地方自治体が、議論になったイベントを禁止する過程でみせた態度には、やや残念な点もあった。

 水原市の場合、3月14日までは「法的欠点はなく、イベントを禁止することはできない」としていたが、女性団体や市民団体、保護者らの抗議が強まると、3月29日に会場の近くに小学校があるという理由(教育環境保護に関する法律第9条に基づく「禁止された業者や施設」)を引き合いに出し、イベントを撤回しなければ行政代執行を行うと立場を変えた。

 ソウル市の江南区庁は16日、食品衛生法第44条(食品接客業者は、店舗内で善良な美風良俗を害する公演・映画・ビデオ・レコードを上映、使用してはならない規定)などを前面に出し、イベント開催を阻止するという立場を表明した。関連付けられる法律の条項を動員し、論議が広がることを避けようとしたとみなされかねない点だ。責任ある地方自治体として、女性を他人の欲求のために機能する物とみる(性的対象化)問題を不許可の理由として明確にして、性に対する話題を投げかける手法を取らなかったのだ。こうした手法は、むしろ主催者側が地方自治体の決定を容易に受け入れられないようにする要因になったようにもみえる。

 主催者側は、いったんはソウル市江南区で20日に開催予定だったイベントを中止することを、18日にYouTubeのチャンネルを通じて告知した。しかし、直前までイベント開催を強行する意向を明らかにしていただけに、すぐに論議が終わるかどうかは未知数だ。主催者側代表は先月末、国会誓願で「水原市は、民間業者が3カ月間準備していたアダルトフェスティバルについて、合法的であるため禁止できないという立場を表明していたのに、イベントの3週間前という時点で突然不当な圧力を加え、イベントが開催されないよう妨害した」と主張したのに続き、法的対応まで予告している状態だ。主催者側はこれと関連し、YouTubeチャンネルで19日にイベント中止などに関する立場などを表明することを明らかにした。

ジェンダーチーム総合 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/rights/1137295.html韓国語原文入力:2024-04-19 15:44
訳M.S

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