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[現場]女性は行けない公園…「防犯カメラ30台に何の意味があるんですか」=韓国

登録:2024-02-20 01:24 修正:2024-02-20 08:07
地域社会と空間まで破壊した強姦殺人
13日、ソウル冠岳区のある公園に設置されている防犯カメラ。この公園では昨年8月に女性が殺害された=クァク・チンサン記者//ハンギョレ新聞社

 「もともとは人も多く平和な公園なのですが、あれ以来、若い女性は来ません」

 ソウル冠岳区(クァナック)のある公園で30代の女性が殺害されてから6カ月が過ぎた。司法手続きは進められている。犯人のチェ・ユンジョン容疑者(31)は先月、一審で無期懲役の判決を受けた。しかし、地域社会はまだ犯罪被害から回復できていない。防犯カメラ(CCTV)は増えたが、住民たちにとって「公園」は消えた。住民のイ・ギボクさん(76)は「住民、特に20~30代の若い女性が公園に来ない」と話した。

2人以上同伴しろとの横断幕だけが

 13日午後2時ごろに記者が訪れた公園は、人影があまりなかった。この日昼、公園にやって来た20人あまりの住民は、高齢女性も少し見られたものの、大半は男性だった。大きなイヌを連れてやって来たユン・アヒョンさん(28)が唯一の若い女性だった。「事件後、夜は公園にまったく来ません。怖いですからね。愛犬が大きいから散歩する広い場所が必要で、あえて来たんです」

 週末の18日午後1時も状況はほぼ同じだった。公園を訪れた30人のうち、若い女性はユンさんのようにイヌを連れた人が2人のみ。公園の登山路には「安全のために2人以上同伴で登山してください」、「人通りの少ない脇道より利用客の多い正式な登山路を通行してください」と書かれた横断幕が掲げてあった。

1月に訪れたソウル冠岳区の登山路の入口に「安全のために2人以上同伴で登山してください」と記された横断幕が掲げてある=キム・チェウン記者//ハンギョレ新聞社

 努力がなかったわけではない。区役所は事件後、30台の防犯カメラを犯行現場の近くに追加設置した。元警察官が林道の安全を守るためにパトロールにあたるなど、監視も強化した。しかし、昨年11月からパトロールは中断している。冬季の終わる今年5月から再開するという。

 警察に特別な動きはない。昨年、無差別犯罪が相次いだことを受け、刑事機動隊や機動パトロール隊を作って治安需要のある地域に配置するとしていたが、このところ政治家に対するテロが相次いだことで、当面は政治家の保護に投入される予定だ。

 犯罪によって被害を受けるのは人だけではない。空間も破壊されるのだ。地域社会に欠かせない空間なら、再設計してよみがえらせる必要がある。犯罪防止の観点からは「防犯カメラの追加設置」などだけでは足りない可能性もある。

弱者の経験にもとづいて空間や施設の修正が必要

 韓国性暴力相談所のキム・ヘジョン所長は「学校前で交通事故が起きた際、事故防止のために道路の構造をすべて変更するのと同様に、犯罪の起きた後の空間は女性や子どもなどの弱者の経験にもとづいて再設計する必要がある。そうしてはじめて、あらゆる人にとって安全な空間として生まれ変わることができる」と述べた。

 都市計画が専門の嘉泉大学のホ・オク教授(行政学)は、「隠れられる空間ができないよう、空間を再配置して開放感を持たせたり、運動器具など人が多く集まる施設を追加で設置したりするのもよい。空間を明るく構成する必要もある」と提案した。

13日、ソウル冠岳区のある公園を、住民たちが散歩している=クァク・チンサン記者//ハンギョレ新聞社
クァク・チンサン、キム・チェウン、コ・ギョンジュ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1128823.html韓国語原文入力:2024-02-19 05:00
訳D.K

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