李明博(イ・ミョンバク)政権時代に「コメント工作」容疑で有罪が確定したキム・グァンジン元国防部長官が赦免された。尹錫悦大統領は就任後4回目の特別赦免(恩赦)を断行し、過去の国政壟断の主役たちとセウォル号遺族を不法に監視した軍人、「文化放送」(MBC)労組を弾圧した幹部たちを多数恩赦の対象に加えた。
法務部のシム・ウジョン長官職務代行は6日、ソウル鍾路区(チョンノグ)の政府ソウル庁舎でブリーフィングを開き、「旧正月を迎え中小企業家、小商工人、庶民生計型刑事犯などを含め980人に対する恩赦を断行する」と発表した。施行日は7日。
シム代行はまた「旅客・貨物運送業の運行停止、食品接客業の営業停止、生計型漁業の免許停止、運転免許関連措置など行政制裁に対する特別減免措置と公務員懲戒の赦免などを45万5398人に対して実施する」と発表した。シム職務代行は今回の恩赦の目的を「活力ある庶民経済、国民統合のためのきっかけ作り」だと説明した。
高位公職者などの恩赦の対象者は計24人だ。まず李明博政権時代、国軍サイバー司令部に「政治的なコメント」を付けるよう指示し、世論を操作した容疑で懲役2年が確定したキム・グァンジン元長官が含まれた。キム元長官は2012年の総選挙と大統領選挙前後に、軍サイバー司令部司令官や部隊員などに対し、当時の政府と与党を支持し野党を非難するコメントを9000件余り掲載するよう指示した疑い(軍刑法上の政治関与)などで、2018年に裁判に付された。キム元長官は昨年8月に開かれた破棄控訴審で、懲役2年を言い渡された。その後、再上告をしたが、裁判所が1日にこれを取り下げたことで、刑が確定した。しかしこの日、残刑執行免除を受け、収監を免れた。
朴槿恵(パク・クネ)政権時代、文化・芸術界の特定人物を支援対象から排除するいわゆる「文化界ブラックリスト」事件の主役となったキム・ギチュン元大統領秘書室長も残刑執行免除の対象に含まれた。キム元室長も1月、破棄差し戻し審で懲役2年を言い渡されたが、再上告せず、刑が確定した。
この他にセウォル号惨事遺族など民間人を不法に監視した容疑で、昨年12月の控訴審で懲役2年が言い渡されたキム・デヨル、チ・ヨングァン元国軍機務司令部参謀長も残刑執行を免除された。李明博政権時代、警察のコメント世論工作に加担した疑いで昨年5月の控訴審で懲役6カ月に執行猶予1年を言い渡され、上告せず刑が確定したソ・チョンホ元国家情報院第2次長は、刑宣告失効および復権された。刑宣告失効になれば執行猶予などの効力が消え、前科がなくなる。復権の場合、有罪宣告による各種資格が回復する。いずれも被選挙権などが回復するため、今回の総選挙に出馬できる。
報道機関の労組活動を妨害した元報道機関の関係者たちも大勢恩赦の対象に含まれた。全国言論労働組合文化放送本部(第1労組)の運営を妨害し、組合員の記者やプロデューサーなどを非製作部署に発令するなど、不当労働行為を働いた容疑で昨年10月に最高裁で懲役8カ月に執行猶予2年が確定したキム・ジャンギョム元MBC社長と、懲役1年に執行猶予2年が確定したアン・グァンハン元社長も、刑宣告失効および復権された。ペク・ジョンムン元MBC副社長、クォン・ジェホン元MBC副社長も復権した。
この他に「不法政治資金」容疑で2019年に懲役7年が確定したイ・ウヒョン元国会議員は残刑執行が免除され、キム・スンヒ元国会議員、イ・ジェホン元坡州(パジュ)市長、シム・ギジュン元国会議員、パク・ギチュン元国会議員、ファン・チョンモ元尚州(サンジュ)市長、チョン・ガプギル元光山区庁長も復権された。
「セウォル号遺族査察」疑惑で有罪が確定したが、昨年8月の光復節恩赦対象に含まれたソ・ガンウォン元機務司令部参謀長は、今回は朴槿恵元大統領弾劾を控えた2017年に戒厳令文書作成関連の虚偽公文書作成容疑で有罪が確定した事件で、復権対象に含まれた。
財界の5人にはSKグループのチェ・ジェウォン首席副会長とLIGグループのク・ボンサン会長が含まれた。チェ首席副会長はSKグループのチェ・テウォン会長と共謀し、SKグループ系列会社のファンド出資金465億ウォン(約52億円)を横領し、オプション投資金などに流用した疑いで起訴され、2014年2月に最高裁で懲役3年6カ月が確定した。
ク会長はLIGグループの厳しい財政状態を知りながらも、2200億ウォン(約245億8千万円)相当の企業手形(CP)を発行し、不渡り処理した疑惑で起訴され、2014年7月に懲役5年が確定した。
一方、法務部は模範囚942人に対して先月30日付で仮釈放したと発表した。また、信用回復支援策によって、小額延滞履歴者約298万人に対する信用回復支援も来月12日から施行する予定だ。
今回の高位公職者の恩赦対象者の中には、恩赦の決定を控えて突然上告を取り下げ、刑が確定した人が多い。このため、恩赦をめぐり政府と対象者の間に事前交流があったのではないかという疑惑が持ち上がっている。これに対し、法務部のクォン・スンジョン検察局長は「恩赦を約束するケースはない」とし、「外部委員の多数で構成された恩赦審査委員会で審議結果がどのように出るか分からない状態で、恩赦の約束を受けて再上告をしなかったり、上告を諦めたりすることは難しい」と述べた。