尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は12日、サムスン電子のイ・ジェヨン副会長、ロッテグループのシン・ドンビン会長など財閥オーナーを含め1693人に対する8・15光復節特別赦免を断行した。李明博(イ・ミョンバク)元大統領とキム・ギョンス元慶尚南道知事は対象から外れた。低い支持率のせいで政治家の無分別な赦免は節制されたようだが、「法の上に財閥がいる」と言われる韓国社会の不快な命題はむしろ一層際だって確認された。
スタートから「企業フレンドリー」基調を露骨に明らかにしてきた尹錫悦政府は、前もって赦免の「予告篇」を流してきた。ハン・ドクス首相は先月27日、国会対政府質問でイ副会長やシン会長の赦免を大統領に積極的に建議すると明らかにした。全国経済人連合会(全経連)などの経済団体も、繰り返し財閥オーナーらの赦免を要求した。さらにサムスンの法的義務履行を監視するというサムスン順法監視委員長まで加勢に立つほどであった。
尹大統領はこの日、出勤途中の略式記者会見で「今回の赦免は何よりも民生と経済の回復に重点を置いた」と明らかにした。いつものように名分は「経済危機の克服」だった。今回は「半導体危機論」が主要なレパートリーだ。しかし、財閥オーナーの赦免が国家経済はもちろん、企業の経営にどんな影響を及ぼすのかは全く検証されていない。イ副会長だけでも、昨年の仮釈放以後「5年就職制限規定」にも何ら拘泥されずに正常な経営活動をしている。今回赦免された東国製鋼のチャン・セジュ会長とSTXグループのカン・ドクス元会長は、現下の経済局面と何の関連があるのか。財閥オーナーの不法行為が企業と株主に負わせる経済的被害を考えれば、こうした「免罪符」がむしろ未来の被害につながることを懸念しなければならない。
財閥オーナーと政治家に対する赦免の可否が交錯すると、決まって国民世論に従ったという話が出る。だが、イ副会長の赦免に対する賛成率が高い調査結果は、経済危機の中で世論主導層とマスコミの一方的な世論集めと関係がないとみるのは難しい。一方、2017年に実施されたある世論調査で、韓国社会が「金があれば無罪になり、金がなければ有罪になる」社会かを問う質問では、91%が「同意する」と答えた。現在、この結果は大きく異なるだろうか。
これにより尹大統領が特検チームの一員として直接参加した2016年国政壟断事件重要な二つのわいろ供与・収受者が全員赦免復権された。イ副会長はこの日、サムスン物産合併当時の会計操作疑惑で裁判を受けた後、「国家経済のために懸命に奔走している」と話した。しかし、正義党は「時が来ればみな釈放するくらいなら、何のために裁判をするのか」と問いただした。尹錫悦政府は、これが「公正」と「正義」なのかという問いに答えなければならない。