「告発教唆疑惑」の主要人物である大邱(テグ)高等検察庁のソン・ジュンソン次長検事(検事長)が、一審で懲役1年を言い渡された。裁判所はソン検事長の「選挙介入」容疑は認めなかったが、検事の政治的中立性は違反したと判断した。ソン検事長がキム・ウン議員候補(現「国民の力」議員)に告発状を渡した事実も認めた。ただし、逃走の恐れがあるとは言い難いとし、法廷拘束はしなかった。
ソウル中央地裁刑事合議27部(キム・オクコン裁判長)は31日、公職選挙法・個人情報保護法・刑事司法手続き電子化促進法の違反および公務上秘密漏洩の疑いで裁判を受けてきたソン検事長に、懲役1年を言い渡した。ただし、公職選挙法違反容疑と一部公務上秘密漏洩容疑は無罪と判断した。2022年5月、高位公職者犯罪捜査処(公捜処)がソン検事長を起訴してから、1年9カ月。
ソン検事長は2020年4月、最高検察庁の捜査情報政策官として在職中に、汎与党関係者に対する告発状を当時の未来統合党の国会議員候補だったキム・ウン議員に渡し、21代総選挙に影響を及ぼそうとしたという疑惑を受けている。ソン検事長からキム議員に渡された告発状には、当時検察総長だった尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の配偶者であるキム・ゴンヒ女史と、当時釜山(プサン)高検次長検事(検事長)だったハン・ドンフン氏(現「国民の力」非常対策委員長)が被害者として記載されていた。この過程で「チャンネルA事件」の情報提供者の実名が記された判決文を渡すなど、個人情報を漏洩したという容疑も適用されている。
裁判所は、最高検察庁捜査情報政策官室で当時告発状の作成などが行われたとみた。ソン検事長がキム議員に告発状を渡したとも判断した。「上層部」の介入の有無が再び議論になる可能性が高まった。「検事総長の目と耳」といわれる捜査情報政策官が、自身と直接関係のないキム女史とハン氏が被害者である告発状を公然と政党に送った形になるためだ。検察内外では「上層部」の指示がない限り、ソン検事長の一存では進められないのではという疑念の声が事件初期からあがっていた。しかし、公捜処は2022年5月、尹大統領とハン氏に嫌疑なしの処分を下した。追加捜査のためには、新たな告発が必要な状況だ。
これに先立ち、2021年9月にはインターネットメディア「ニュースバース」が「告発教唆疑惑」を報道した後、公捜処は同月ソン検事長とキム議員に対する強制捜査に着手した。以後、公捜処は11月と12月にソン検事長の拘束令状を2回請求したが、全て棄却された。公捜処は翌年5月、ソン検事長だけを裁判にかけた。2020年4月当時民間人だったキム議員は公捜処の捜査対象ではないとして検察に渡したが、検察はソン検事長の裁判が進められた2022年10月、キム議員に嫌疑なしの処分を下した。
裁判過程で被告人のソン検事長が昇進する異例のことも起きた。公捜処に起訴された当時、大邱高等検察庁の人権保護官だったソン検事長は、ハン・ドンフン氏が法務部長官だった時代の2022年6月、ソウル高等検察庁の訟務部長にポストを移し、昨年9月に検事長に昇進した。最高検察庁がソン検事長の疑いがないとし、昨年4月に監察を終結した後のことだ。ただし、先月国会がこれに対する疑惑でソン検事長の弾劾訴追案を可決し、憲法裁判所の決定が残っている状態だ。