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[社説]「告発教唆」疑惑の捜査に着手した公捜処、命運かけて真相究明を

登録:2021-09-11 06:57 修正:2021-09-11 07:24
検察による汎与党陣営の要人やメディア関係者らに対する「告発教唆」疑惑の中心人物である国民の力のキム・ウン議員(中央の眼鏡の人物)が10日、汝矣島の国会議員会館にある自身の事務所で、家宅捜索に来た公捜処の捜査官に抗議している=共同取材写真//ハンギョレ新聞社

 高位公職者犯罪捜査処(公捜処)が、ユン・ソクヨル前検察総長時代の検察による汎与党陣営の要人やメディア関係者らに対する「告発教唆」疑惑事件の捜査に本格的に取りかかった。公捜処は9日、ユン前総長とソン・ジュンソン前最高検察庁捜査情報政策官(現・大邱高検人権保護官)を「職権乱用権利行使妨害」などの容疑で立件したのに続き、10日にはソン検事と韓国野党の国民の力のキム・ウン議員の事務所と自宅などに対する家宅捜索に乗りだした。6日に「司法正義を立て直すための市民行動」がユン前総長らを告発してからわずか3日後だ。公捜処は、検察などの権力機関の犯罪を捜査するために設立された機関だ。組織の命運をかけて、実体的な真実を突きとめてほしい。

 今回の「告発教唆」疑惑の本質は二つだ。検察の選挙介入と検察権の私物化疑惑だ。政治的中立を守らなければならない検察が、総選挙を控えて野党と結託し、汎与党陣営の要人やメディア関係者らに対する告発をそそのかしたのだとすれば、衝撃的なことであるに違いない。告発状にはユン前総長と妻のキム・ゴンヒ氏らが被害者として摘示されているという点で、この告発状を検察が作成したのが事実だとすれば、“総長保護”のために検察権を私物化したという批判を逃れることはできない。

 しかし、今回の疑惑の鍵といえるキム議員は、これまでの数回のメディアのインタビューや記者会見で、話を変えたり論点を明確にしないことで一貫しており、むしろ混乱ばかりを増幅させてきた。キム議員にテレグラムを通じて告発状などを渡した人物と目されているソン検事は、6日にこの件に関する事実を否認した後は、メディアとの接触などを避け、沈黙で一貫している。ユン前総長は一歩踏み出し、今回の疑惑を「与党陣営の政治工作」だと主張し、反発の度合いを強めている。

 そのため、政治攻防から脱して真実を究明しようとするには、公捜処が捜査に乗りださなければならないという指摘が多かった。これまで敏感な事件に消極的な態度を示してきた公捜処が、今回は比較的速やかに捜査に着手したのは、そのような指摘を意識したものだとみられる。もちろん、捜査の過程では難関は少なくないだろう。すでに国民の力は「野党弾圧」だと強く反発している。ホ・ウナ首席報道担当は論評を出して「現職の野党議員に対する無慈悲で違法な家宅捜索でも足りず、第1野党の有力な大統領候補に対して、仮定と推測に基づいた速戦即決の立件を押し通した」と述べ、「名前を『政権保衛処』に変えよ」と主張した。捜査対象者は捜査や刑事法に詳しい元職と現職の検事であるため、証拠を確保することからして容易ではないだろうという懸念も出ている。公捜処より先に調査に乗りだした最高検察庁との有機的な協力が必要な理由だ。公捜処と検察は、ただひたすら実体的な真実を究明するという覚悟で力を合わせなければならない。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/1011297.html韓国語原文入力:2021-09-11 02:00
訳M.S

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