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総選挙で共倒れの危機感に、急いで手を取り合った尹大統領と韓国与党委員長

登録:2024-01-24 06:25 修正:2024-01-24 08:38
衝突から2日後、舒川市場の火災現場で対面 
尹錫悦大統領が23日、忠清南道舒川郡舒川邑の舒川特化市場の火災現場で、国民の力のハン・ドンフン非常対策委員長と握手を交わしている=大統領室提供//ハンギョレ新聞社

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が与党「国民の力」のハン・ドンフン非常対策委員長に辞任を要求してから2日後、「列車で一緒に(ソウルに)帰ろう」と手を差し出した。ハン委員長は「大統領に対する深い尊重と信頼の念を抱いている」と答えた。突然の辞任圧力につながった大統領室と親尹錫悦派の非難攻勢、事前手続きなしの和解場面の演出までの2泊3日は、明快なところがあまりない「急発進ミステリードラマ」だが、総選挙を控えて与党の自滅は防ぐべきという切迫感が働いたのは明らかだ。

 破局に突き進むかのように見えた二人の対面は何の前触れもなく行われた。与党「国民の力」が先に、ハン委員長がこの日計画した党事務局の訪問日程を先送りし、午後に忠清南道舒川(ソチョン)特化市場の火災事故現場を訪問すると、午前9時40分頃に公示した。それから約2時間後、大統領室も尹大統領が事故現場を訪問すると発表した。前後の事情に詳しい与党の関係者はハンギョレに「現場を訪問すると先に連絡したのは大統領室だが、尹大統領がハン委員長に会うために時間を合わせた」と伝え、尹大統領が対面に積極的だったと説明した。結局、二人はイ・グァンソプ大統領秘書室長がハン委員長に辞任を要求してから2日後の同日午後1時40分頃、火災現場で対面した。

 大統領室と親尹錫悦派から「ハン委員長とこれ以上行動を共にするのは難しい」という発言が飛び出すなど、破局まで予想されていた二人がこの日、何事もなかったように軋轢の収拾に乗り出したのは、約70日後に迫った総選挙のためだという分析が多い。党指導部の関係者は「尹大統領が夫人のキム・ゴンヒ女史問題で20年来のハン委員長を追い出す姿は、総選挙に何の役にも経たない。世論が良くないので、ひとまず極限までは進まないようにすべきというメッセージと思われる」と指摘した。大統領室の関係者は「韓国の支持層は内輪もめそのものを嫌う。二人の軋轢が続くと、総選挙を控えて共倒れになる」と語った。

 両者が戦いを広げた場合、大義名分も実益もないという点も負担になったものとみられる。尹大統領としては、事あるごとに法的根拠もなしに党務に介入するという批判に悩まされなければならず、まだ党内の基盤が堅固でないハン委員長としては政権3年目の大統領と対立する与党代表として不安な状況を迎えるためだ。

尹錫悦大統領が23日、忠清南道舒川郡舒川邑の舒川特化市場の火災現場で、国民の力のハン・ドンフン非常対策委員長に会って、一緒に現場を視察している/聯合ニュース

 与党では今回のことで「垂直的党-大統領室関係」のイメージは払拭できるという期待の声もあがっている。大統領室では「大統領室と与党の関係を建て直すための第一歩」、「尹大統領は尹大統領の道を進み、ハン・ドンフン委員長はハン・ドンフン委員長の道を歩むことで一件落着した様子」という反応が出た。

 尹大統領側としては、20年来の最側近であるハン委員長でさえ「キム女史問題は触れてはならない逆鱗」という点を明確にし、与党内部でキム女史のブランドバッグ授受疑惑に関する謝罪などの要求をしばらくの間でも抑える効果も上げたとみられる。大統領室と与党の主要な関係者は、キム女史が「おとりカメラ工作の被害者」であり、謝罪をすれば野党に攻撃の口実を与えるとみている。

 ハン委員長にとっては、このような混乱の中でも「与党内のナンバーツー」であることを誇示したことが成果といえる。ハン委員長が「苦難」を経て尹大統領の信頼を再び取り戻した場合、今後本格化する公認候補推薦の局面でさらに党掌握力が高まる可能性が高い。

 しかし、これを裏返してみれば、そのまま二人の課題となる。与党内の最大のリスクの一つであるキム女史問題を解決できなければ、二人が指導力を十分に発揮することも、党と大統領室の関係を健全に導くことも不可能だからだ。国民の力のある初当選議員は「二人の正面衝突でハン・ドンフン委員長が『尹錫悦のアバター』のイメージから脱却したように見えるが、結局、キム女史問題をどうにか片づけなければ、本人にも残るものがあまりなかった戦いになるだろう」と語った。特に「与党と大統領は垂直的とか水平的だという話が出るような関係ではない。相互協力するパートナー関係」(先月26日)というハン委員長の認識が変わらない限り、両者の関係立て直しは容易ではないとみられる。

 迅速に鎮静局面に向かう状況が釈然としないという指摘もある。与党の内輪もめを「パフォーマンス」と主張してきた改革新党のイ・ジュンソク代表は同日、「SBS」のインタビューで、「国民から見て、二人が争うこともあるんだ、ハン委員長が勝つときもあるんだ(と思うことになれば)、上下関係というものを払拭させ、総選挙に有利になるだろう」とし、「(結局二人の)主戦場は公認管理委員会になるだろう」と述べた。

ペ・ジヒョン、ソ・ヨンジ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1125632.html韓国語原文入力:2024-01-24 02:31
訳H.J

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