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[社説]「報復起訴」検事の弾劾を棄却した憲法裁、公訴権の乱用を煽るのか

登録:2024-05-31 06:03 修正:2024-06-11 08:29
イ・ジョンソク憲法裁判所長が30日、憲法裁判所の大審判廷で「検事弾劾」事件に対する宣告を進めている/聯合ニュース

 韓国の憲法裁判所が30日、「ソウル市公務員スパイ捏造事件」の被害者ユ・ウソン氏を報復起訴した現職検事の弾劾を棄却した。最高裁判所(大法院)の公訴権乱用判決によって国会が議決したアン・ドンワン検事弾劾訴追に対し、9人中5人の保守派の憲法裁判官が反対したのだ。彼らはアン検事の行為に「罷免するほどの事由が存在しない」という意見を示した。しかし、違法な起訴で国民を苦痛に陥れ、最高裁が事実上「報復起訴」だと判決を下した行為よりも重大な罷免理由がどこにあるというのか。

 アン検事は2014年、検察がユ氏のスパイ容疑の証拠として提出した中国政府の公文書が捏造であると明らかになり、ユ氏の無罪が宣告され、同僚検事らが懲戒を受けたことを受け、4年前にすでに起訴猶予処分した対北朝鮮送金の容疑(外国為替取引法違反)でユ氏を裁判にかけた。最高裁は2021年、ユ氏の外国為替取引法違反の容疑を公訴棄却した原審(2審)判決をそのまま確定した。原審は、ユ氏に対する起訴が「通常的または適正な訴追裁量権の行使とは考えがたく、何らかの意図があるとみられるため、公訴権を恣意的に行使したものであり、違法だ」と判決を下した。アン検事がユ氏のスパイ容疑に無罪が宣告されたことに対する「報復」のために公訴権を乱用したと判断したのだ。ユ氏は、国家情報院がでっち上げた証拠をもとに起訴され、長い間裁判を受けるなど、途方もない精神的、肉体的苦痛を味わった。そんなユ氏を別件で起訴し、さらなる苦痛を与えたのは、憲法が規定した公務員の公益実現義務に背く行為だ。特に、検事は国家刑罰権を行使する強力な権限を持っており、さらにその義務が重要視される。にもかかわらず、棄却意見を出した憲法裁判官たちはアン検事の行為が罷免の事由ではないと主張する。もし、検事ではなく一般公務員だったとしても、このような決定を下しただろうか。

 韓国の検事は捜査と起訴をほぼ独占しており、大抵の違法行為は捜査さえ受けない。アン検事も内部監査や懲戒を受けておらず、時効が過ぎたため刑事処罰もできない。弾劾でなければ、いかなる不利益も受けない特権層がまさに検事だ。「公益の代表者であり人権擁護機関として様々な権限を与えられた検事が公益実現の義務に違反したことに厳重な憲法的懲罰を加え、これ以上検事による憲法違反が繰り返されないようにしなければならない」というキム・ギヨン裁判官とムン・ヒョンベ裁判官、イ・ミソン裁判官、チョン・ジョンミ裁判官の少数意見に、より一層注目したい。今回の憲法裁の決定は、検事の特権意識をさらに助長する契機になりそうなのが残念だ。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/1142796.html韓国語原文入力:2024-05-3018:19
訳H.J