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「野党第一党代表襲撃犯は元与党党員の極右勢力」と言えない韓国警察

登録:2024-01-11 00:24 修正:2024-01-11 09:50
釜山警察庁、「イ・ジェミョン代表襲撃」の最終捜査ブリーフィングで 
党籍と「残す言葉」の公開を最後まで拒否し物議醸す
ウ・チョルムン釜山警察庁長が10日午後、釜山蓮堤区の釜山警察庁で、共に民主党のイ・ジェミョン代表襲撃事件と関連して捜査結果を発表している/聯合ニュース

 韓国警察は、野党「共に民主党」のイ・ジェミョン代表を凶器で攻撃したK容疑者(67)の党籍情報と、犯行前に作成した文章の全文を公開しなかった。警察は政治的波紋を懸念し、犯行の背景と動機を表わす主な情報を隠したり、選別的に公開しているという批判は免れないものとみられる。

 釜山(プサン)警察庁捜査本部は10日に開いた最終捜査結果ブリーフィングで、K容疑者は「イ・ジェミョン代表が大統領になることを防ぐために」犯行におよんだと発表した。注目すべきなのは、警察が犯行動機を説明するために抜粋引用したK容疑者の文章において、自分の行動について恥じたり、処罰を恐れて隠そうとしたりする気配が全くない点だ。警察が伝えた犯行前に作成された文章の内容は次のとおり。

 「司法府内における北朝鮮追従勢力によってイ代表の裁判が引き延ばされ、イ代表を断罪できずにいる。総選挙に公認権を行使すれば、国会が左傾化した勢力の手に渡る。イ代表が大統領になり、国が左派勢力の手中に収まることを阻止するために犯行した。自由人の救国の熱望と行動の呼び水になればと思う」

 内容と登場する表現からみて、K容疑者の文章は彼が長い間与党「国民の力」の党員であり、最近まで太極旗集会に参加していたという周囲の証言、犯行のために昨年民主党に「偽装入党」したという推論に信憑性を持たせる。しかし、警察はK容疑者の文章を部分的に抜粋しており、原文をそのまま引用したわけではないとみられる。これから罪を犯す者が、自分の行為の正当性を主張する文章に「犯行した」という表現を使うとは考えられないからだ。

 不要な誤解と憶測を避けるためには、警察が犯行前にK容疑者が作成したという文章の全文を公開すれば良いが、警察は「被疑事実の公表に当たるため、公開できない」という立場を示している。しかし、犯行動機を訪ねる記者団に対し、K容疑者自ら「(警察に提出した)弁明文を参考にしてほしい」と答えた状況で、警察のこのような説明は説得力に欠けるというのが大方の見解だ。その上、警察はK容疑者の書いた文章の一部をブリーフィングの核心内容である「犯行動機」の捜査結果に引用までしている。

 犯行動機と関連した重要な情報である党員の履歴を最後まで公開しなかったことも物議を醸している。捜査機関が捜査過程で得た党籍情報を公開できないようにしている政党法の条項は、自由な政党活動と市民の政治的自由を保障するためのものであって、国民の「知る権利」を阻害するためのものではないからだ。

 捜査本部のブリーフィングを見守った地元の法曹人たちは苦々しい表情を浮かべた。刑事事件専門のC弁護士は「警察は『イ・ジェミョン(代表)テロ犯は国民の力の元党員の太極旗部隊』という事実を警察の口から発表することを負担に思うあまり、かなり無理をしたようだ」と語った。カン・ギョンホ弁護士は「被疑事実の公表と国民の知る権利の間で接点を見出す問題だ。政治的に敏感な問題なので、(警察は)K容疑者の文章全体を公開しない方針を決めたとみられる」と話した。

キム・ヨンドン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1123805.html韓国語原文入力:2024-01-10 21:24
訳H.J

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