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韓国、自傷・自殺危険群160万人…「予防策のほかに治療と病床確保が急がれる」

登録:2023-12-06 06:29 修正:2023-12-06 08:05
メンタルヘルス政策革新案の意味と課題
チョ・ギュホン保健福祉部長官が5日、政府ソウル庁舎でメンタルヘルス政策革新案を発表している=保健福祉部提供//ハンギョレ新聞社

 韓国政府が5日、今後5年間で7800億ウォン(約870億円)が投入される「心の健康(メンタルヘルス)政策革新案」を発表したのは、最近うつ病や統合失調症などの精神疾患が社会問題として浮上するほど急増したという判断によるものだ。これに対応するために、精神疾患予防策の他にも急性期患者(急性・救急患者)の治療に必要な病床を増やす措置を求める声があがっている。

 保健福祉部が5日に出した資料によると、韓国で精神疾患により診療を受けた患者数(認知症を含む)は、2015年の289万人から2021年には411万人へと6年間で42.2%増えた。関連治療費も同期間、4兆1千億ウォン(約4600億円)から6兆5千億ウォン(約7300億円)へと58.5%上昇した。福祉部は自傷や自殺などの可能性があるメンタルヘルス中・高危険群の規模を160万人と推算している。

 特に20・30代の青年層を中心に精神疾患が急速に増えている。20代のうつ病患者は、2018年の9万9696人から昨年は19万4322人へと2倍近く増加した。2020年の新型コロナウイルス感染症の大流行以降、社会的な交流がなく孤立し、経済的困難を経験する世帯が増えており、憂鬱や不安障害などが増えているというのが福祉部の説明だ。

 適切な時期に治療を受けなければ、精神疾患は自殺や他人への危害などにつながる恐れがある。今年8月、京畿道城南市(ソンナムシ)の書ヒョン駅通り魔事件や、大田(テジョン)のある高校で20代男性が40代教師を凶器で刺した事件が代表的な事例だ。警察庁によると、精神障害を持つ犯罪者は2012年の5302人(全体犯罪者の0.3%)から昨年9875人(全体の0.8%)へと86.3%増えた。

 政府が政策の焦点を精神疾患の早期発見と予防に置いたのもそのためだ。福祉部は2025年から20~34才の青年層が2年ごとに国家のメンタルヘルス検診を受けられるようにするほかにも、重大労働災害の経験者や感情労働者などの心的外傷後ストレス障害(PTSD、トラウマ)を予防する職業トラウマセンターを現在の14カ所から来年23カ所に拡大することにした。来年7月からは学生や会社員、社会福祉施設・医療機関従事者など1600万人を対象に、メンタルヘルスの異常兆候や支援の要請のしかたなどを案内する自殺予防教育を義務化する。

 福祉部のイ・ヒョンフン・メンタルヘルス政策官はブリーフィングで、「統合失調症は25歳、うつ病障害は30歳などに最も多く発病するというメンタルヘルス医学界の意見がある。20~30代に主に始まるこのような疾患を早期発見し、カウンセリングや薬物治療などで回復させる」と述べた。

 医療界では政策の実効性のために、急性精神疾患者を治療する大型病院の病床などの十分な確保を求める声があがっている。大韓神経精神医学会によると、精神科の入院病床は2017年の6万7千床から今年は5万3千床に減った。入院日数30日以下の急性期精神科患者の1日の入院料は18万2千ウォン(約2万4千円)で、米国(統合失調症基準54万ウォン)の3分の1水準であるため、収支が合わず大学病院が病床を減らした結果だ。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領はこの日、「精神救急病床を2倍増やし、すべての市・郡・区に設置し、入院環境も大幅に改善する」と発言したが、夜間や休日などに救急患者を収容する病床の他にも、入院を通じた集中的な治療に向けた病床の確保が求められている。

 ソウル大学医学部のキム・ユン教授(医療管理学)は、「精神疾患入院に対する国民健康保険の報酬は低い一方、(クリニックなどで主に行う)カウンセリングの診療報酬は高いため、大型病院の医療スタッフが開院などを理由に急速に減っている」とし、「急性期患者を治療する大学病院・総合病院の入院報酬を上げる一方、メンタルヘルス医学科などの専攻の配分を増やし、十分な専門医が輩出されるようにすべきだ」と述べた。

チョン・ホソン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/health/1119201.html韓国語原文入力: 2023-12-06 00:19
訳H.J

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