尹錫悦（ユン・ソクヨル）大統領の夫人、キム・ゴンヒ女史がインターネットメディア「ソウルの声」が贈り物として渡したブランド物のバッグを受け取ったという疑惑と関連し、大統領室は28日にも公式の立場を明らかにしなかった。野党「共に民主党」は真相究明が必要だという立場を示した。
「ソウルの声」は前日、ユーチューブチャンネルを通じて「昨年9月13日、チェ・ジェヨン牧師がソウル瑞草区（ソチョグ）のアクロビスタ（尹大統領の自宅のマンション名）を訪れ、キム・ゴンヒ女史に会い、300万ウォン（約34万円）相当のブランドバッグをプレゼントした」として、プレゼントを渡す場面が映った映像を公開した。「ソウルの声」は、映像がチェ牧師の腕時計についたカメラでこっそり撮影されたものだと明らかにした。
映像で、チェ牧師がプレゼントを渡すとキム女史は「またそんな…本当にやめてくださいね」と言いながらプレゼントを受け取った。チェ牧師は28日、「ソウルの声」の報道で、「（バッグをプレゼントする以前の昨年6月にまた別のプレゼントを渡したとき）会話の途中で電話がかかってきて、キム女史が電話に出た。『何だって？ 金融委員に任命ですって』としながら、メモ用紙とペンを探したが見当たらず、後ろにある机に移動し何かを書き留めながら通話を終えた」として、キム女史の人事介入疑惑も取り上げた。事実ならば、政治的には国政介入、法的には弁護士法違反疑惑を招きかねない内容だ。チェ牧師は韓国で生まれたのち、米国に移民し米国の市民権を持っており、統一運動家として知られている。
同報道の根拠となった映像を撮影する過程とこれを報道したことについて、法的・倫理的問題も議論になっている。「ソウルの声」は同日、自社所属のイ・ミョンス記者が私費でこのプレゼントを用意し、チェ牧師を通じてこれをキム女史に渡したと明らかにした。大統領選挙を控えた昨年1月、イ記者とキム女史の通話内容が「文化放送（MBC）」で報道され、キム女史はこれに反発して報道禁止のための仮処分を申し立てた。
「ソウルの声」は「おとり取材については議論があり得る」としながらも、「おとり取材で保障される国民の知る権利がその危険性や非倫理性より著しく重要な場合は、（おとり取材が）認められる」と主張した。
大統領室は同報道の翌日も立場を表明しなかった。与党関係者たちは当初（プレゼントを）返す目的だったが、ソウル瑞草洞の自宅から漢南洞（ハンナムドン）の官邸に移転したことで、返す時期を逃したとして、このバッグは大統領室の倉庫に「返還すべき贈り物」に分類され保管されていると主張している。
このプレゼントが尹錫悦大統領の職務と関連した場合は、請託禁止法違反の素地がある。請託禁止法は、公職者の配偶者が公職者の職務と関連して1回100万ウォン（約11万4千円）または1年に300万ウォンを超える金品などを受け取ってはならないと定めている。
配偶者が授受禁止金品などを受け取った事実を知った場合、公職者はすぐに所属機関長に報告し、直ちに提供者に返還する義務がある。返還が難しい事情がある時だけ、所属機関長に引き渡すことができる。
民主党のパク・ソンジュン報道官は同日、書面ブリーフィングを通じて「ユーチューブチャンネルの主張が事実ならば、明白な請託禁止法違反だ。見返りを求めるような賄賂なのかどうかも明確にしなければならない」と主張した。さらに「キム女史はチェ氏から高価なブランドバッグをプレゼントされたのか。受け取ったなら、それを返したのか。それとも今も持っているのか。大統領室の立場は何なのか明らかにすべき」だとして、「ブランドバッグをプレゼントしたチェ氏と面会した理由は何であり、不適切な請託があったのかも明らかにすべきだ」と述べた。
一方、これを報道したチャン・インス記者は最近まで「MBC」の記者として勤めていた。報道を控えた21日、退職願が処理されたことが分かった。「MBC」の関係者は「9月末頃に報告があり、報道局でいくつかのファクトに対する追加確認とおとり取材をめぐる議論について検証などが必要だと判断し、これを進めていた」と語った。
訳H.J
