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「韓中日、同じように急激に社会衰退…最初のシグナルは少子化」

登録:2023-11-15 00:19 修正:2023-11-15 07:32
中央大学のシン・グァンヨン名誉教授、ドイツ欧州研究センター10周年記念講演
韓国、中国、日本の3国は現在、深刻な人口絶壁に直面している/聯合ニュース

 「東アジアの3カ国、韓中日は、歴史的軌跡は異なるものの、急激な社会的衰退に直面しているという点では同じです」

 10日から12日までの3日間、ソウル銅雀区(トンジャック)の中央大学で開催された同大学のドイツ欧州研究センター創立10周年を記念する国際学術大会で、同大学のシン・グァンヨン名誉教授は「異なる過去、同じ未来」と題する初日の基調講演で、このように述べた。シン教授はまず「韓国、中国、日本の3カ国は今、何を考えるべきか」との問いを投げかけつつ、「20世紀後半までは、3国の過去はかなり異なっていた。激戦を繰り広げる対立も少なくなかったが、3国が直面している暗うつな未来はまったく同じだ」と語った。

 韓中日3国は今日の東アジアの代表的な経済大国だ。中国は国内総生産(GDP)世界第2位の経済大国であり、国防費第2位の軍事大国でもある。日本もGDP世界第3位の経済大国であり、対外純資産の規模が1位の国でもある。韓国も、一時は両国から束縛された時期があったものの、それを乗り越えて世界第10位前後の経済大国となった。3国とも驚くべき超高速経済成長を通じて経済大国となったが、今日では社会的にはいずれも「社会的衰退(Social Degradation)」という持続可能性の危機に直面している、というのがシン教授の見立てだ。

 シン教授の規定した3国が直面する社会的衰退の最初のシグナルは、少子化だ。合計特殊出生率が人口の維持に必要な水準(2.1)以下になるという構造的変化を示しはじめた時期は、日本は1950年代末、韓国は1980年代初め、中国は1990年代初めだった。このように少子化のはじまりには時差があったものの、3国とも今では同じように「人口絶壁」に直面している。

中央大学のシン・グァンヨン名誉教授が10日、中央大学テシンホールで開催された同大学ドイツ欧州研究センター創立10周年記念東アジアカンファレンスで、基調講演をおこなっている=イ・チャンゴン先任記者//ハンギョレ新聞社

 日本は2005年から人口が減少しているうえ、2023年には実に80万人が減ると予想されている。合計特殊出生率は1.26人(2022年)だ。韓国は2019年から人口が減少しはじめている。2022年現在、世界で最も低い出生率である0.78人を記録している。中国もやはり昨年から人口が減少しはじめている。2022年の出生率は中国史上最低の1.09人。

 このような現象の原因は、韓国と日本では婚姻数の少なさ、また結婚したとしても晩婚であること、非婚率も高まっていること。中国は、結婚は増えているものの、結婚しても子どもを産まない夫婦の割合が高いという点が韓日との微妙な違いだ、というのがシン教授の説明だ。同じ少子化といっても流れが異なるということだ。

 少子化と連動する高齢化率(65歳以上の人口が総人口に占める割合)も日本は29.1%(2022年)で、世界最高齢社会だ。韓国も同年の高齢化率が17.5%で超高齢社会(高齢化率20%以上)へと向かっており、2025年には初めて20%を超える見通しだ。中国も昨年初めて65歳以上の人口が2億人を超えて総人口の14.2%を占めるなど、高齢化社会(高齢化率7%以上)から高齢社会(高齢化率14%以上)へと移行している。

 韓国は3国の中でも特に高齢化のはやさが際立っており、問題はより大きい。65歳以上の人口がすでに900万人を超えている韓国は、高齢社会から超高齢社会に到達するのに7年しかかからないと予測される。英国(50年)、フランス(39年)、米国(15年)などの西欧諸国はもちろん、高齢化が急激な日本の10年よりもはやい。

資料:経済協力開発機構(OECD)加盟国の貧困率の比較//ハンギョレ新聞社

 韓中日3国が直面する社会問題は、このような「人口学的急変」にとどまらない。不平等の深化とともに、新たな貧困層が登場していることも同じだ。所得分配を示す指標であるジニ係数を見ると、2021年に中国は0.466を記録している。日本は0.334、韓国は0.331だった。ジニ係数は0に近づくほど所得分配が均等であることを示しており、中国の不平等が特に深刻であることが分かる。

 似たような高齢者の貧困化現象も知られている通りだ。2021年時点での韓国の高齢者の貧困率は40%を上回る。中国は19%(2020年)、日本も20%にのぼる。西欧先進国は、米国(23.1%)を除けば大半の国で15%以下だ。ドイツは9.1%、フランスは4.4%で、欧州の先進国はおおむね10%未満にとどまっている。

韓中日の自殺率(人口10万人当たりの数、2021年/中国は2022年)=OECD//ハンギョレ新聞社

 このような社会問題は自殺率とも連動することから、問題は深い。韓国は経済協力開発機構(OECD)加盟国で自殺率が最も高く、2021年の自殺率(人口10万人当たりの自殺者数)は24.1人に達する。日本も同年に15.4人と比較的高い。中国も8.1人(2022年)を記録するなど増えつつある。シン教授はただし「韓国の自殺者は貧困高齢者が多く、日本は病気で失職した中年層で多く、中国は農村地域で働く高齢者が多い」とし、「これは、誰がその国で最も脆弱なのかをよく示している」と語った。

 西欧諸国ではこのような社会問題を、租税と福祉政策によって緩和したり解決したりしている。シン教授は、韓中日3国は租税制度と社会政策が不十分で、特に韓国と中国は福祉への支出も少ないため、これらの問題の深刻さを和らげることに失敗していると指摘した。

 シン教授は「結論として、東アジア3国は共通して経済成長にばかり関心を寄せ、それによって発生する様々な社会問題にきちんと対応できずにいる」とし、「(このままでは)東アジア3国は同じように一世代のうちに起こる深刻な社会の衰退を避けることは難しいだろう」と指摘した。シン教授は「普通の人々が安心して暮らせる社会になってこそ、そのような暗い未来から脱することができるだろう」と繰り返し強調した。

イ・チャンゴン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1116174.html韓国語原文入力:2023-11-14 07:00
訳D.K

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