北朝鮮の核・ミサイル開発の脅威が高まっているが、国連など国際社会の統制機能は失われた状態だ。ロシアのウクライナ侵攻と米中の覇権争いが激化し、新冷戦構図が強化されたためだ。
北朝鮮は今年、3回にわたって大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験を行った。昨年も約30回、少なくとも70発の弾道ミサイルを発射した。国連安全保障理事会決議は、北朝鮮が弾道ミサイルとその技術を利用したすべての飛翔体を発射することを禁止している。
しかし、北朝鮮に対する国連安保理制裁は2017年の対北朝鮮制裁強化決議案の採択が最後だった。その後、国連は北朝鮮の相次ぐミサイル実験に一致した声を上げることも行動もできずにいる。
北朝鮮は先月31日、軍事偵察衛星「万里鏡1号」を搭載した飛翔体「千里馬1型」の打ち上げを試みたが失敗した。これに対し国連安保理は2日、公開会議を開いた。ロバート・ウッド駐国連米国次席大使は「安保理決議に対する露骨な違反であり、緊張を高める行為」とし「海洋、航空交通を妨害しただけでなく、日本と韓国に不安を与えた」として制裁の必要性を強調した。これに対して中国の耿爽次席大使は「米国が朝鮮半島をインド太平洋戦略に編入させ、その周辺で軍事的駐留を大きく増強し、朝鮮半島と周辺国の戦略的安保利益を深刻に侵害している」と反論した。ロシアのアンナ・エフスティグニエワ次席大使も「米国とその同盟国の圧力増加が北朝鮮の行動を触発した。制裁圧力の強化という非人道的政策に反対する」と述べた。
結局、会議は対北朝鮮糾弾声明や追加制裁決議案を採択できなかった。北朝鮮は軍事偵察衛星の再打ち上げを予告している。安保理は先月27日にも、北朝鮮の油類輸入上限を引き下げる内容などを盛り込んだ対北朝鮮追加制裁決議案を表決に付したが、これも中国とロシアが反対して否決された。
安保理で新しい決議案を採択するためには、米国、フランス、英国、ロシア、中国の常任理事国5カ国のうち1カ国も拒否権を行使してはならない。新冷戦構図が続く限り、北朝鮮の核やミサイルに対する制裁も望みが薄いわけだ。
加えて最近悪化した韓中関係は、北朝鮮の核・ミサイル解決策をさらにこじらせる可能性が高い。特に中国は、先月22日に訪韓した中国外交部の劉勁松アジア担当局長を通じて「4不可」方針を伝えたが、これには「悪化した情勢の下で韓国の対北朝鮮主導権行使不可」項目が含まれている。これは、韓国が米国密着政策と韓米日協調強化方針を継続し、台湾問題など中国の核心利益を侵害すれば、韓国の対北朝鮮政策や国際社会の対北朝鮮制裁に協力的な姿勢を取らないことを暗示したものとみられる。
北韓大学院大学のヤン・ムジン教授は「北朝鮮制裁の実効性を高めるためには、中国と協議しなければならないが、韓国は中国とも対立している。結局、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政府が追求する対北朝鮮強硬策が実効性よりは国内政治に重点を置いているという意味」だと述べた。