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ソウルに続き大邱まで…クィアフェスティバル相次ぐ受難、韓国の保守自治体の意図は

登録:2023-06-19 09:58 修正:2023-06-19 13:35
ホン・ジュンピョ大邱市長が17日午前、大邱市中区の公共交通専用地区で大邱クィアフェスティバルに対し行政代執行を行う公務員を激励している/聯合ニュース

 韓国の全国各地で性的マイノリティの行事が妨げられている。最近は主要都市の自治体の首長らが、同性愛に対する偏見と排除を強化するのに先頭に立っているかたちだ。

 ソウル市が3日、クィアフェスティバル組織委員会のソウル広場使用を不許可としたのに続き、12日、仁川市(インチョンシ)は仁川女性映画祭が編成した上映プログラムからクィア映画を外すよう要求し、物議をかもした。17日にはクィアフェスティバルが行われた大邱市中区(テグシ・チュング)の公共交通専用地区で、会場を撤去するために出動した大邱市の公務員たちと撤去を阻止しようとする警察が衝突するという前例のない状況まで発生した。3つの広域自治体の首長はいずれも与党「国民の力」所属だ。

 17日の大邱の状況は、大邱市と中区所属の公務員500人余りが、道路占用許可を受けていないという理由でクィアフェスティバル会場に対して「行政代執行」(撤去)を実行しにきたことで発生した。警察は集会の届け出がなされた合法的な行事であるため、秩序維持と参加者保護のために、大きな衝突を招く恐れのある地方自治体の行政代執行突入を止めようとした。警察関係者はハンギョレの電話インタビューで「クィアフェスティバルは適法に届け出が受理されており、法的に保護されなければならない。道路占用許可を受けていないとしても(行政代執行をする)正当な理由にはならない。道路法第74条の行政代執行の適用特例によれば、反復的かつ常習的に道路を占用する場合や、道路通行および安全を確保するために迅速に必要な措置を取る必要がある場合には行政代執行ができるが、これに該当する事項はない」と述べた。警察と行政当局の対峙は、行事開始直前の午後12時頃、公務員たちが身を引いたことで終わった。

 だが、ホン・ジュンピョ大邱市長は18日、自身のフェイスブックに「大邱市公務員の公務執行を抑圧・妨害し、公務員を負傷させ、公共道路を無断で遮断してクィアたちのパーティー会場に開放した大邱警察庁長は、大邱市の治安行政を担う資格がない」と書きこんだ。さらに「集会、デモの届け出さえあれば集会制限区域でも道路占用許可なしに交通を遮断しパーティーができるよう開放するならば、大韓民国の大都市が混乱に陥るのは明らか」だとし、クィアフェスティバルに対する自身の行政代執行の指示が正当だったことを強調した。

 クィア関連行事の受難は今になって始まったことではない。国民の力と所属の政治家たちは、周期的に「同性愛反対」、「クィアフェスティバル不許可」などを公言し、性的マイノリティに対する嫌悪を助長してきた。彼らの行動が徹底的に「票」を意識した行動だというのは、よく知られた事実だ。韓国で性的マイノリティの政治・社会的権利を認めることに最も激しく反対する集団は、保守プロテスタント教団と同教団に所属する大規模な教会だ。彼らは重要な選挙があるたびに「票数」を持ち出して「同性愛反対」を公約化するよう政党や候補たちに要求した。建国大学尚虚教養学部のイ・グァンフ教授は、18日のハンギョレの電話インタビューで、「ソウルと大邱などで見せた保守の自治体首長らの態度は驚くべきことではない」とし、「政党アイデンティティや支持層結集という選挙戦略の面からみれば、(クィアフェスティバルを不許可とするのは)政治的に合理的な選択に近い」と述べた。

 注目すべき点は、これらの首長たちが性的マイノリティ問題とは関係のない宗教問題に対しては概して寛容な態度を見せているという点だ。ホン・ジュンピョ市長は、大邱市の慶北大学の西門付近で2年以上続くイスラム寺院建設対立問題に対しては「自分の宗教が尊重されるためには、他人の宗教を蔑んだり排斥してはならない」と述べ、寺院建設を妨害する地域住民と一部の極端なプロテスタント関係者を批判している。しかし、ホン市長が強調した「認定」と「寛容」は性的マイノリティには認められない価値だという事実が、今回の大邱クィアフェスティバルに対する行政代執行の試みで明らかになった。野党「共に民主党」大邱支部がこの日発表した論評も、ホン市長のこのような「矛盾」に照準を当てている。論評では「イスラム寺院建設に賛成し、キリスト教の教理は『愛』だと説いてすべての宗教を受け入れようと言った人が、クィアフェスティバルに対しては『愛』どころか『憎しみ』にあふれている。これ以上の詭弁はない」と批判が述べられた。

 「ホン・ジュンピョ式寛容」の二重性が「票」のためだという事実は、当人の発言でも確認することができる。ホン市長は10日、フェイスブックに「(イスラム寺院建設に反対する)一部の住民を扇動する人たちは、ソウルから来た特定の似非キリスト教勢力だと報告を受けた。大邱キリスト教総連合会はイスラム教に反対しないと連絡が来た」と書きこんだ。大邱キリスト教総連合会は今年、大邱クィアフェスティバルの集会禁止仮処分を申立てるなど、行事反対の先頭に立った。

 中央大学社会学科のイ・ナヨン教授は、「来年の総選挙が近づくにつれ、統治の失敗を外部の敵や内部のマイノリティに転嫁し、政治的窮地を脱しようとする右派ポピュリズムの慣性が戻ってくる可能性が高い」とし、「連帯の力で、無分別な憎悪と嫌悪の政治に立ち向かわなければならない」と述べた。

キム・ギュヒョン、パク・ダヘ、イ・スンウク記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/area/area_general/1096490.html韓国語原文入力:2023-06-19 08:16
訳C.M

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