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悪化の一途辿る北朝鮮核問題…尹政権の対策には「いかにして」がない(1)

登録:2023-06-12 06:42 修正:2023-06-12 10:41
ソン・ハニョン先任記者の政治舞台裏 
 
「ワシントン宣言」で拡大抑止を強化 
北朝鮮が核保有国であることを事実上認める 
米国の無関心と韓国の保守政権は「傍観」
米国を国賓訪問中の尹錫悦大統領とジョー・バイデン米大統領が4月26日午後(現地時間)、ホワイトハウスで開かれた韓米首脳会談後、共同記者会見を行っている=ユン・ウンシク先任記者//ハンギョレ新聞社
ソン・ハニョン先任記者の政治舞台裏//ハンギョレ新聞社

 私たちはどのようにして北朝鮮の核兵器の脅威にさらされながら暮らすようになったのでしょうか。誰もが知っていることだと思うかもしれませんが、実は違います。北朝鮮の核の歴史や事情は決してそう簡単ではないのです。

 北朝鮮が核に関心を持ち始めたのは1950年代からです。朝鮮戦争当時、マッカーサー将軍が核兵器使用をちらつかせたのが直接的なきっかけだったといいます。北朝鮮は1956年、旧ソ連と「合同核研究所組織に関する協定(核技術協定)」を締結し、科学者を派遣して電子物理、放射化学、原子炉に関する理論と実務を学びました。

 1960年代と1970年代には寧辺(ヨンビョン)核研究団地を造成し、研究用原子炉を導入するなど、制度整備、専門人材養成、施設拡充で核兵器開発の基盤を整えました。1975年頃にはすでに使用済み核燃料の再処理技術を習得していました。

 1980年代には本格的に核能力の開発に乗り出しました。使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを抽出する施設を建設し、再処理活動を密かに進めました。

核をめぐる朝米の「熾烈な交渉」

 1989年、フランスの商業衛星が寧辺の核施設を撮影し公開したことで、北朝鮮の核が世の中にその姿を現しました。北朝鮮は1974年に国際原子力機関(IAEA)に、1985年に核拡散防止条約(NPT)に加盟していたため、国際社会から強い圧力を受けました。

 ちょうど冷戦の終結で米国が世界に配備した戦術核兵器を回収していた時期でした。米国は在韓米軍に配備していた戦術核を撤去しました。1991年12月、韓国と北朝鮮は「朝鮮半島非核化共同宣言」を発表しました。

 しかし、朝鮮半島非核化共同宣言後、北朝鮮の核施設の査察をめぐりIAEAを前面に押し出した米国と北朝鮮の間で軋轢が生じました。北朝鮮は1993年にNPTからの脱退を宣言しました。これが第1次北朝鮮核危機です。1994年10月、朝米枠組み合意の成立でこの危機はヤマ場を越え、北朝鮮はNPT脱退を撤回しました。

 ところが2002年、米国のジェームス・ケリー元国務次官補が大統領特使として北朝鮮を訪問し、高濃縮ウランを利用した核開発の疑惑を持ち上げました。その後、米国のジョージ・W・ブッシュ政権は朝米枠組み合意に基づく重油支援などの義務履行を中止し、北朝鮮は激しく反発しました。これが第2次北朝鮮核危機です。北朝鮮は監視査察団を追放し、NPTからの脱退を重ねて宣言しました。朝米枠組み合意が崩れたのです。

 2003年から南北、米国、中国、日本、ロシアが参加する6カ国協議が開かれました。議長国の中国による積極的な仲裁で、2005年9月19日、共同声明の発表に漕ぎつけました。同共同声明の最も重要な内容が朝鮮半島非核化でした。

 しかし、米国が「北朝鮮がバンコ・デルタ・アジア(BDA)を通じて偽造ドル紙幣を流通させ、不法国際取引代金をマネーロンダリングした」と発表したことで、同声明は水の泡となりました。朝米関係は悪化し、北朝鮮は2006年10月、1回目の核実験に踏み切りました。

 その後、北朝鮮の核問題は悪化の一途を辿りました。北朝鮮は2009年5月に2回目、2013年2月に3回目、2016年1月と9月にそれぞれ4回目と5回目、2017年9月に6回目の核実験を行いました。

 北朝鮮の核問題はこのように非常に長い歴史と背景を持つ複雑な事案なのです。

 北朝鮮の核兵器開発は誰の責任でしょうか。もちろん北朝鮮の責任です。北朝鮮の核兵器開発は民族の生存を担保にした賭けです。到底容認できません。

 しかし、北朝鮮の核開発を阻止できる数回の節目でチャンスを逃してしまった韓国と米国の責任もあります。李明博(イ・ミョンバク)政権と朴槿恵(パク・クネ)政権の10年間、韓国政府は手をこまねいていました。米国は対外政策の優先課題のうち北朝鮮の核問題をどんどん後回しにしました。2019年にベトナムのハノイで開かれた2回目の朝米首脳会談で、最後の瞬間、ジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)の妨害で交渉が「ノー・ディール(物別れ)」に終わったのは、今でも悔やまれる瞬間でした。

(2)に続く

ソン・ハニョン|政治部先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/1095367.html韓国語原文入力:2023-06-119:14
訳H.J

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