遺体は全長60メートルの交通壕(塹壕と塹壕の間をつなぐ壕)内に頭を同じ方向に向けて仰向け、またはうつぶせになって倒れていた。両腕は後ろに曲げたままで、靴を履いた状態で発見された遺体もあった。一部の区域では遺体の脚の間に別の遺骨が二重三重に重なっていた。
「忠清南道瑞山市(ソサンシ)反逆容疑犠牲事件」の遺体発掘現場で、73年前の集団虐殺を示す完全なかたちの60体以上の遺体(遺骨)、遺品などが発掘された。
犠牲者の大半は農業を営んでいた20~40代
真実・和解のための過去事整理委員会(真実和解委)は遺骨収拾を前に、30日午前11時に遺体発掘現場をメディアに公開した。真実和解委は財団法人東方文化財研究院(イ・ホヒョン院長)と共同で、今月10日から20日間あまりにわたって忠清南道瑞山市葛山洞(カルサンドン)176-4の烽火山(ポンファサン)交通壕近隣の現場で遺体発掘を行ってきた。反逆容疑事件に関する遺体発掘は忠清南道牙山(アサン)に続き2度目。
今回の遺骨発掘は「瑞山・泰安(テアン)反逆容疑犠牲事件」に関するもの。同事件は第1期真実和解委が2007年1月から調査を開始し、2008年12月に真実究明を決めた事件だ。調査の結果、1950年10月上旬から同年12月末までに、瑞山警察署と泰安警察署に所属する警察官、治安隊、海軍が瑞山郡仁旨面葛山里(インジミョン・カルサンリ)の塹壕など、少なくとも30カ所あまりで、法に則った手続きなしに集団虐殺した事件であることが明らかになった。
この事件の犠牲者と確認された人の数は977人。第1期真実和解委は、少なくとも1865人の民間人が犠牲になったと判断した。犠牲者は大半が農業で生計を立てていた20~40代の成人男性で、女性も一部含まれていた。
第1期真実和解委による調査で参考人の多くは、邑・面単位で大規模虐殺があったと陳述した。瑞山警察署の「身元記録審査報告」にもとづき、当時の銃殺の目撃者や遺体の収拾者などと共に現場を調査中に発見した地域でもある。第1期真実和解委の報告書によれば、この交通壕での銃殺は西の豊田里(プンジョンニ)方向から3回、東の葛山里方向から5回目撃されている。
60メートルの区間を3区域に分けて行われた今回の発掘で、発見された遺体は60~68体。第1区域から13体、第2区域から30~35体、第3区域から17~20体。遺体は幅と深さがそれぞれ1メートル以下の狭い交通壕に沿って密集した状態で発見された。太い脚の骨だけでなく、脊椎や肋骨(ろっこつ)までもが完全に残っている状態だった。
これらの遺体の鑑識に当たる予定の忠北大学のパク・ソンジュ名誉教授は、発掘地の遺骨の状態について「遺骨の頭骨が同じ方向に横たわっていることから、交通壕の外の麓で処刑された後に交通壕内に放り込まれたようだ」と語った。交通壕の中からはM1カービンの薬きょうが発見されたが、その量がそれほど多くないことも交通壕の外で銃殺が執行されたことを示していると同氏は述べた。
「野良犬が遺体をくわえて下りてきて再埋葬」証言を裏付け
パク教授はまた「遺体の輪郭は比較的明確だが、頭の中に土が入っているため収拾の過程で多くが壊れるのではないかと懸念される」と話した。真実和解委は、一部の遺体が上下に重なった状態で発見されたことについて「虐殺が行われた後、村の野良犬が遺体をくわえて村まで下りてきて、村の里長が青年たちと交通壕周辺の遺体を交通壕内に再埋葬したという証言を裏付ける」と語った。今回の遺骨発掘ではM1カービンの薬きょうと共に、白い4つ穴ボタン、ゴムのズボンひも、指輪などの遺品が発見された。
この日、現場にやって来た朝鮮戦争前後民間人犠牲者全国遺族会の瑞山地域の会長を務めるチョン・ミョンホさん(74)は、「怒りが爆発する出来事だ。どうして何の法的手続きもなしに人を山に連れこんで殺しておいて、すべて獣の餌にするようなことができるのか。政府は率先して後続措置を取るべきだ」と語った。
第2期真実和解委は実効性のある遺骨発掘に向け、そして委員会終了以降も遺骨発掘事業が続けられる法的・制度的条件を整えるために、昨年7月に「遺体埋葬推定地の実態調査および遺体発掘の中・長期ロードマップ樹立最終報告書」を発表し、これを根拠に全国6地域、7カ所を選定して遺骨発掘を進めている。
このうち反逆容疑の犠牲者が埋葬された牙山市排芳邑(ペバンウプ)のソンジェ山では62体が、同市塩峙邑白岩里(ヨムチウプ・ペガムリ)のセジギ2地点では2体が、国民保導連盟の犠牲者たちが埋められた慶尚南道晋州市観旨里(チンジュシ・クァンジリ)の山からは20体が発掘されている。やはり国民保導連盟員が犠牲となった忠州市虎岩洞(チュンジュシ・ホアムドン)と安城市宝蓋面其佐里(アンソンシ・ポゲミョン・キジャリ)では遺体が発掘されておらず、大邱(テグ)刑務所の在所者が犠牲となった大邱達城郡嘉昌面龍渓里(タルソングン・カチャンミョン・ヨンゲリ)では24日から発掘が始まっている。