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韓国視察団、汚染水の検証はできずとも…これだけは確かめよ

登録:2023-05-18 05:43 修正:2023-05-30 23:33
福島訪問が形式的な行為にとどまらないようにするために
福島第一原発の敷地内のタンクに保管中の放射性物質汚染水/AP・聯合ニュース

 韓国の専門家視察団が今月23~24日を含む4日間の日程で東京電力福島第一原発を訪問するが、日本政府の反対により「試料採取」などによって韓国政府が汚染水の安全性を独自に検証する道は閉ざされた。視察団の限界は非常に明確だが、今年の夏ごろに海に放出される汚染水の安全性を検証するために、詳細に検証すべき3つのポイントをここで取り上げる。視察団が現場を見て回った後もこれといった意見を表明しなければ、韓国は日本の汚染水放出を黙認したという誤ったメッセージとして国際社会に伝わる恐れがある。福島産の水産物を輸入することになるという「最悪の結果」へもつながりうる。

(1)基準値以下は2.8%のみ、ALPSの性能は十分か

 福島第一原発の汚染水の海への放出の最大の争点は安全性だ。現在、汚染水は1060基を超える巨大なタンクに収められている。この汚染水は多核種除去設備(ALPS・アルプス)を通すことで少なくとも1回の浄化を経ているが、その70%ほどには依然としてセシウム、ストロンチウム、ヨウ素など生命体に致命的な影響を及ぼす放射性物質が基準値以上含まれている。日本政府はこれをALPSで複数回浄化し、放射性物質の濃度を法定基準値以下に下げてから、今年の夏ごろに海に放出する計画だ。

 日本政府や東京電力は韓国視察団を、1千基以上ある汚染水タンクのうち、2年以上にわたってALPSによる浄化を繰り返し法定基準以下に抑えた水の入っているタンク(30基、2.8%)に案内する可能性が高い。これまでに台湾、そして太平洋の18の国と地域が加盟する太平洋諸島フォーラム(PIF)も、30基の一部である「K4」タンク群を視察している。韓国視察団は、東京電力がすでに検証済みのタンクのみを見学する程度にとどまる可能性が高い。

 この1年間、汚染水の安全性を独自に検証してきた太平洋島しょ国は、このような不安要因があることから日本政府に「放出の延期」を要請している。彼らは今年2月の声明で、「貯水タンクの複雑さと巨大さという特性を考えると、これまでに行われたALPS処理水テスト量では、適切で十分な結果が得られない。海への放出の必要性を判断するに足りない」と指摘している。韓国視察団は、日本が見せようとするごく少数の「安全な」水のタンクで終わるのではなく、ALPSの性能を徹底的に把握するとともに、東電に汚染水総体の危険性を管理する能力があるかを判断しなければならない。

(2)事故前に比べ10倍のトリチウム、生物学的安全性は?

 2つ目の検証ポイントは、ALPSでは除去できないトリチウム(三重水素)の安全性だ。原発からはトリチウムが排出される。各国はそれぞれ定められた基準に則ってこれを排出する。日本は、2011年3・11の福島第一原発事故の前には年間2.2兆ベクレル(2010年現在)に達するトリチウムを海に放出していた。しかし今夏に放出が始まれば、その10倍の年間22兆ベクレルが海に注がれる。東京電力は、福島第一原発に保管中の132万トンの汚染水にはトリチウムが約860兆ベクレル含まれていると推定している。最近も汚染水は毎日90~140トン増加しているため、少なくとも40年以上にわたって海に流さなければならない。

 トリチウムの安全性をめぐっては諸説紛々としている。原子力の専門家は概して「特に影響はない」と主張するが、非常に憂慮している生物学者も多い。米サウスカロライナ大学のティモシー・ムソー教授(生物学)は先月、国際環境団体「グリーンピース」が主催した記者会見で「トリチウムの生物学的影響を扱った論文を全数分析したところ、複数の論文で、トリチウムの生物学的な遺伝子損傷の大きさが代表的な放射性物質であるセシウムの2倍以上であることが繰り返し確認された」と強調している。

 日本政府と東京電力がトリチウムの生物学的影響をどれほど検証したのかは、まったく知られていない。40年を超える長期的影響は、まだ人間の知恵が届かない未知の領域だ。東京電力は昨年9月から福島第一原発内で、トリチウムを海水で希釈した汚染水でヒラメやアワビなどを育てており、その飼育場を視察団に見せている。生物に対する影響をどのように観察・追跡するつもりなのか、調査を徹底すべきだ。

PIF事務局と彼らの諮問を受ける独立的な研究陣は今年2月に福島第一原発を現場視察した。一行は、2年以上にわたってALPSでの浄化を繰り返し放射性物質を法定基準以下に抑えた「K4」タンク群を視察した=東京電力ウェブサイトより//ハンギョレ新聞社

(3)海への放出以外に方法はないのか

 放射能汚染水の海への放出は、日本と隣接していて魚の消費量の多い韓国にとっては致命的だ。放出が始まれば、韓国の漁業者が特に大きな打撃を受けうる。日本においても同じ理由で、海への放出に代わる安定的な代案を探るべきだとする声が絶えない。時間はまだ残されている。東京電力は当初、汚染水タンクは今年の夏から秋にかけて満杯になると予想していたが、降水量の減少や汚染水低減政策などの影響でその時期は来年2~6月まで引き延ばされた。

 日本の漁業者と市民社会団体は、汚染水を10万トン級の超大型タンクに貯蔵する方法や、汚染水にセメントや砂などを混ぜて固体として保管する「モルタル固化」を提案している。日本の民間シンクタンク「原子力資料情報室」の共同代表を務める伴英幸さんも、10日の韓国国会での討論会で「10万トン級のタンクは世界各国で石油の備蓄に使われるなど検証済み。モルタル保管法も他の核施設で実施されている技術だ。海洋放出だけが唯一の方法ではない」と述べている。専門家が含まれる視察団であるだけに、このような声も幅広く受け入れ、汚染水の放出を止める生産的な代案を提示すべきだ。

東京/キム・ソヨン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/japan/1092060.html韓国語原文入力:2023-05-17 06:00
訳D.K

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