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停戦協定70周年…「韓米日同盟に全賭け」では平和を築けない

登録:2023-04-25 08:22 修正:2023-04-25 13:22
2018年の平和プロセス座礁後、最長の「対話ゼロ」 
尹政府、韓米日同盟だけに専念…北朝鮮、核武装に走る
朝鮮半島終戦平和キャンペーン所属のメンバーが臨津閣で署名運動を行っている= 統一義兵提供//ハンギョレ新聞社

 4月15日、仁川(インチョン)空港。4月26日に予定されている韓米首脳会談の準備のために米国を訪問して帰ってきたキム・テヒョ大統領室国家安保室第1次長は、「米国の盗聴問題と関連し、韓米両国が同盟関係を強化できる『災い転じて福となす機会にしよう』と、『意気投合』した」と述べた。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の外交安保ラインの実力者であるキム次長は、ワシントンでは情報分野を含む韓米日三角同盟を推進する意向を明らかにした。北朝鮮の核開発の高度化や米中戦略競争の激化、ロシアとウクライナ戦争など安保環境の変化に対応するためには、70周年を迎えた韓米同盟をさらに強化すべきというのが尹錫悦政権の考えのようだ。

 翌日の4月16日、臨津閣(イムジンガク)。朝鮮半島終戦平和キャンペーン所属のメンバーたちが終戦宣言と平和協定の締結を促す署名運動を繰り広げた。分断と戦争の傷を象徴す臨津閣は、外国人も多く訪れる観光名所だ。メンバーたちは朝鮮半島で戦争はまだ終わっておらず、またいつでも起こりうるとし、世界市民が戦争を終えて平和を作ることに力を合わせてほしいと訴えた。その結果、100人以上の参加を引き出した。同キャンペーンは休戦協定締結70年目の7月27日までに100万人を目標に署名運動を行っている。

 このように尹錫悦政権と市民社会の隔たりは大きい。対米・対日関係に「全賭け」している尹錫悦政権は、米国と日本の不法行為にまで目をつぶり、韓米日三角同盟に向かってひた走っている。一方、市民社会は「韓米日三角同盟に全賭け」が北朝鮮の核とミサイル高度化とあいまって停戦体制をさらに不安定にし、戦争危機まで招きかねないと批判の声を高めている。

 このような隔たりは歴史のタイミングと向き合っている。朝鮮戦争を止めることにした停戦協定は7月27日に70周年を迎える。また、10月1日は韓米相互防衛条約締結70周年だ。ところが、停戦協定と韓米同盟が同年に生まれたのは偶然ではなかった。休戦交渉当時、北進統一を国是として掲げた李承晩(イ・スンマン)政権は停戦協定に断固反対していた。一方、早期休戦を大統領選挙の公約に掲げた米国のアイゼンハワー政権は、何としても停戦交渉を完了させようとした。結局、韓米は停戦協定と引き換えに韓米相互防衛条約を結ぶことで合意した。70年間にわたり朝鮮半島問題の両軸として機能してきた停戦体制と韓米同盟は、朝鮮戦争が生んだ「歴史の双生児」であるわけだ。

 最初から停戦体制と韓米同盟は相互依存的だった。ところが停戦協定第60項には、「3カ月以内に」朝鮮半島問題の平和的解決に向けた高官級政治会談を招集するよう建議するという内容が含まれている。すなわち、停戦協定は平和協定を通じて恒久的かつ強固な平和体制に進むための過渡期的装置だ。まさにこの部分で、平和体制と韓米同盟は高度の緊張関係をはらんでしまう。韓米同盟とその物理的な核心である在韓米軍の主な役割は、停戦体制の維持と管理にある。これは停戦体制が平和体制に切り替われば、韓米同盟も変化が避けられないことを示している。

 このような構造的緊張を解決しようとする試みがなかったわけではない。1990年代初め、盧泰愚(ノ・テウ)政権の朝鮮半島脱冷戦プロセスは、米国の在韓米軍の3段階削減計画および作戦統制権の移管をめぐる議論と軌を一にしていた。しかし、在韓米軍の削減ではなく、むしろ増強が必要だと考えていた米国の強硬派の妨害で、朝鮮半島平和プロセスと韓米同盟の柔軟化はいずれも失敗に終わってしまった。

 2000年6月に史上初の南北首脳会談に臨んだ金大中(キム・デジュン)大統領は、在韓米軍の駐留を容認するという金正日(キム・ジョンイル)総書記の意向を伝えた。これを聞いた米国のクリントン政権も、朝米関係の正常化に乗り出した。朝米は同年秋に互いに特使を派遣し、クリントン大統領の訪朝にも合意した。しかし、11月に米国で政権交代が起き、すべてはなかったことになってしまった。そしてホワイトハウスの新しい主になったジョージ・W・ブッシュ政権は、北朝鮮との交渉を中断し、北朝鮮の脅威を口実にミサイル防衛体制(MD)の構築を宣言したうえ、北朝鮮をイラク、イランと共に「悪の枢軸」と称し、先制攻撃対象にした。これに対抗して北朝鮮は核兵器の開発に本格的に乗り出した。

 奇しくもブッシュ政権を経て、停戦体制の平和体制への転換と韓米同盟、そして朝鮮半島非核化の間の「三角関係」が水面上に浮上した。平和体制は朝鮮戦争を公式に終わらせ、南北・朝米の敵対関係を平和関係に転換することを意味する点で、北朝鮮を「共同の敵」とする韓米同盟との緊張は避けられないものだった。しかし、対話と交渉を通じて北朝鮮の核問題を解決するためには、平和体制は選択ではなく必須だった。結局、6カ国協議では平和体制問題を南北米中が参加する「別途のフォーラム」で取り上げることにした。しかし、2007年の韓国大統領選挙の結果、大統領府の主が変わったことで、平和体制は後回しにされ、韓米同盟強化論が猛威を振るった。

 その後、10年間水面下に沈んでいた平和体制が再び浮上した時点は2018年だった。4・27板門店(パンムンジョム)南北首脳会談と6・12シンガポール朝米首脳会談で、平和体制と関係改善、そして非核化を同時的かつ並列的に進めることに合意したのだ。しかし、米国の主流は自分たちの大統領だったドナルド・トランプを怯えた目で見守っていた。恐怖の実体は「いつか在韓米軍を連れ戻したい」と語っていたトランプが、朝鮮半島平和体制と非核化が可視化すれば米軍の撤退を命じるのではないかという懸念だった。その恐怖を和らげるため、トランプ政権の外交安保チームは終戦宣言を白紙化するなど、朝米交渉の妨害に奔走し、議会は国防授権法を通じて在韓米軍を2万8500人以下に減らすことができないようにした。朝鮮半島問題に関して米国の主流が最も重要視するものが何かということを、改めて確認した瞬間だった。

 2019年に入って「トップダウン」方式の朝鮮半島平和プロセスが座礁したことで、朝鮮半島はそれ以前と完全に変わってしまった。30年近く核開発を「手段」として平和体制と朝米国交正常化、そして制裁の解決を追求してきた北朝鮮は、南北・朝米首脳会談が失望だけを残したと判断し、核武装そのものを「目的」にし始めた。時間が経つにつれ、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が述べた「新たな道」は、安保は核で、経済は自力更生で、外交は中国とロシアを中心に進めていく路線であることが明らかになっている。

 このような北朝鮮の路線は、北朝鮮に対する韓米の政策手段が枯渇しつつあることを意味する。非核化を最高の目標にしてきた韓米は、北朝鮮の安全保障上の懸念を解消できる平和体制、北朝鮮の深刻な経済難を解決できる制裁の解除と経済協力、外交的孤立から抜け出せる韓米日との関係改善を非核化の相応措置にしてきた。しかし2019年を経て核兵器を「国体」にすることにした北朝鮮では、もはや平和体制、制裁の解決、関係改善という言葉は姿を消した。事実上、放棄したという意味だ。

米ワシントン訪問を終えたキム・テヒョ国家安保室1次長が15日午後、仁川国際空港第2旅客ターミナルから入国した後、取材陣に応じて質問を聞いている=仁川/聯合ニュース

 その結果がまさに「対話ゼロ」の時代だ。南北の公式の対話は2018年12月以降、これまで一度も開かれていない。1971年に南北対話が始まって以来、最も長い空白だ。朝米対話も2019年10月の実務会談以後、扉が固く閉ざされている。これまた1990年以来最長期間だ。韓米が対話を提案しても、北朝鮮が一切応じない状態が続いている。

 対話が消えた朝鮮半島では、韓米同盟と韓米日軍事協力が猛威を振るっている。これらは朝鮮半島の南側では称賛の対象に、朝鮮半島の北側では糾弾の対象になっている。特に尹錫悦政権は、韓米同盟の強化と韓米日軍事協力の推進以外には、韓国の安全保障を守るいかなる代案もないかのように、これにすべてを賭けている。古希を迎えた韓米同盟を記念し、強化することに余念がないあまり、「70歳の停戦協定」を平和協定に生まれ変わらせることには全く関心がない。政治的二極化と機能不全現象が激しくなっている国会も同じだ。

 これに対し、米議会の一部では「朝鮮半島平和法案」の制定を目指す動きがみられる。民主党のブラッド・シャーマン下院議員が19人の議員と共同発議した同法案には、いくつかの注目すべき点がある。まず2021年に法案発議者は民主党所属3人だったが、今回はアンディ・ビックス共和党議員をはじめとする20人が共同発議者として名前を連ねた。また、以前の法案にはなかった在韓米軍関連条項も含まれた。米政府に朝鮮半島平和協定の締結に向けた外交的関与を求めながらも、「同法案のいかなる内容も、韓国および他国に駐留している米軍の地位には影響を及ぼさない」と明記したのだ。このような米議会の動きは、韓国にも示唆するところが大きい。平和体制と韓米同盟の共存の可能性を真剣に探索し、朝鮮半島の平和を定着させる案を模索しているためだ。

 今年で2つの70周年を迎えた韓国は、重大な岐路に立たされている。予告された道は、韓米同盟の強化と韓米日三角同盟の追求が北朝鮮の核開発の高度化とあいまって朝鮮半島停戦体制の不安が高まるものだ。朝鮮半島休停戦体制の不安が国際的な新冷戦構図とかみ合って、韓国に加えられる危険がさらに大きくなる恐れもある。冷戦という巨大な構造的暴力が分断、戦争、停戦体制の根源として働いたように、新冷戦の鋭い刃が朝鮮半島停戦体制に向かって伸びているためだ。尹錫悦大統領が韓米同盟を強化するために、ウクライナに兵器供与を示唆したことに対し、ロシアが北朝鮮に最新兵器を提供する可能性をちらつかせて対抗したのは予告編に当たる。

 ならば、他の道はないだろうか。実際、平和体制と韓米同盟間の構造的な緊張を乗り越え、平和プロセスを推進するには進歩政権より保守政権の方がはるかに有利だ。金大中、盧武鉉(ノ・ムヒョン)、文在寅(ムン・ジェイン)政権は平和協定を口にするたびに「在韓米軍を撤退させ、韓米同盟を崩壊させようとしているのか」という保守陣営の理念攻撃に苦しめられた。これに対し、尹錫悦政権と与党「国民の力」が南北米中参加の平和協定交渉を提案したとしても、理念攻撃に苦しむことはほとんどないだろう。むしろ超党的な協力と国民的な支持を受けながら、また北朝鮮にも異なる道を示すことで、朝鮮半島平和プロセスの新たな章を開くことができる。私たちも、保守が主導し中道と進歩が支持して協力する真の安全保障に向けた道に進むべき時ではないだろうか。

チョン・ウクシク | ハンギョレ平和研究所長(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/1089092.html韓国語原文入力:2023-04-24009:37
訳H.J

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