尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の夫人、キム・ゴンヒ女史が関与したという疑惑が持ち上がったドイツモーターズ株価操作事件の一審判決が2月上旬に行われる予定だ。キム女史に対する検察の取調べが依然として行われていない中、裁判所がキム女史と被告たちの共謀関係などをどのように判断するかに注目が集まっている。
ソウル中央地裁刑事23部(チョ・ビョング裁判長)は、2月10日午前11時に宣告期日を開く。 同事件の被告はドイツモーターズのクォン・オス前会長と株価操作を主導した「選手(専門家)」のL氏とK氏、証券会社の前・現役員と職員および「金主」の役割をしたS氏など計9人。株価操作に関与した情況が数回明らかになったキム女史は、裁判にかけられなかった。
クォン前会長ら被告9人は2009年12月から3年間共謀し、ドイツモーターズの株価を操作し引き上げた疑い(資本市場法違反)が持たれている。90人余りの口座157個を動員し、仮装売買・馴合い売買などで相場を操り、2千ウォン台後半だった株価を8千ウォン台まで引き上げたという。
同事件の最大の争点は公訴時効だ。検察が把握した同事件の犯行時点は2009年12月~2012年12月の3年。2010年9月、株価操作を主導した専門家が交代(L氏→K氏)され、第1段階と第2段階に区分されるが、検察は第1段階と第2段階を包括して一つの犯罪とみて、2021年12月に起訴した。しかし、第1段階(2009年12月~2010年9月)の時期に株価操作を主導したL氏は、「クォン前会長と仲が悪くなり、途中で関係が途絶えた」と主張している。株価操作疑惑の公訴時効は2010年だが、2010年9月以後の容疑とは関係がないため、検察の公訴提起が間違っているということだ。
公訴時効の問題は、キム女史の関与疑惑とも関連している。尹錫悦大統領は大統領選挙当時「L氏を信じて2010年1月14日に新韓証券株式口座を一任したが、損失が大きく、2010年5月20日付でL氏と関係を絶った」という趣旨で釈明した。第1段階の時期(2009年12月~2010年9月)に株価操作専門家のL氏と関係性があったことを認めているわけだが、裁判所が第1段階と第2段階の犯行を分けて公訴時効を別に適用すれば、キム女史側も公訴時効満了を主張できるものとみられる。ただし、キム女史は2011年1月に作成されたいわゆる「キム・ゴンヒXファイル」が登場し、株価操作第2段階の時期にも引き続き株価操作に関与したのではないかという新しい疑惑が持ち上がっている。
同事件のもう一つの争点は、相場操作のための共謀関係が認められるかどうかだ。被告たちはそれぞれ投資目的でドイツモーターズの株式を買い入れただけだと主張している。彼らの共謀関係が認められるかどうかによって、キム女史の疑惑判断にも影響を及ぼすことになる。昨年12月、同事件の容疑に対する公訴時効が全て満了したため、すでに起訴されたクォン前会長などとの共謀関係が認められた場合にかぎり、キム女史の公訴時効を停止しうる。
検察は裁判所の要請によって、同事件と関連した各口座が誰の、どのような行為によって動員されたのかを特定することにした。このため、どのような経緯でキム女史の口座が株価操作に利用されたのか、一審判決文に痕跡が現れる可能性もある。これに先立ち、裁判所は昨年12月、結審公判で「事件外的な論争よりは公訴事実の争点に集中し、審理を進めた」と強調した。
ある部長検事出身の弁護士は「判決で(キム女史の)共謀関係などが説示されたり証拠資料が現れたりした場合、検察も再び調べるだろう」としながらも、「期間によって公訴時効の問題などで無罪判決が出れば、口座を貸した人々も検察で嫌疑なしの処分を受ける可能性が高くなる」と見通した。