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互いに大使を呼び出した韓国とイラン、両国関係に乱気流…「韓国との関係見直し」

登録:2023-01-20 03:04 修正:2023-01-20 07:08
尹大統領「UAEの敵はイラン」発言の波紋 
イラン、凍結原油代金70億ドルにも言及
外交部は19日、駐韓イラン大使を呼んで「UAEの敵はイラン」との尹錫悦大統領の発言に対する政府の立場を重ねて説明した。写真は同日のソウル龍山区の駐韓イラン大使館/聯合ニュース

 「アラブ首長国連邦(UAE)の敵はイラン」との尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の発言の波紋が広がっている。イランはイラン駐在韓国大使を呼び出し、約70億ドル(8兆6600億ウォン)の原油代金問題まで提起しつつ「関係見直し」に言及し、韓国政府も異例にも駐韓国イラン大使を呼び出した。

 イラン外務省は18日(現地時間)、レザ・ナジャフィ法務・国際機関担当次官がユン・ガンヒョン駐イラン韓国大使をテヘランの外務省庁舎に呼び、尹大統領の発言に抗議したと発表した。ナジャフィ次官は「韓国大統領の発言は友好関係に対する干渉と同じであり、この地域の平和と安保を害する。韓国政府はこの発言について直ちに説明し、アプローチのあり方を修正すべきだ」と述べた。尹大統領は15日、UAEに派遣されている韓国軍のアーク部隊を訪問し、「UAEの敵、最も脅威となる国はイランであり、韓国の敵は北朝鮮」だと述べた。

 ナジャフィ次官は、2018年の米国によるイラン制裁の復活後に韓国で凍結されているイランの70億ドルの資金に言及し「イランの資金の凍結に対して効果的な措置を取らなければ、イランは韓国との関係を見直すことになるだろう」と述べた。ナジャフィ次官が言及した70億ドルとは、米国のトランプ政権が2018年にイラン核合意(包括的共同行動計画、JCPOA)を離脱し、対イラン制裁を復活させたことに伴い、韓国政府もイランの石油販売代金の口座を凍結したことで、韓国が支払っていないイランの資金だ。70億ドルは、イラン国外に凍結されているイランの資金の中で最大規模とされる。

 イラン外務省はまた、尹大統領は核兵器製造の可能性に言及しているとし、これは核拡散防止条約(NPT)に反するものであり、韓国政府は釈明すべきだと述べた。これは11日に尹大統領が国防部から業務報告を受けた際に、北朝鮮の挑発が強まることを想定し、「大韓民国が戦術核を配備するとか、独自の核を保有することもありうる。もしそうなれば、韓国の科学技術でより早期に(核兵器を)保有できるだろう」と述べたことに対するものだ。今回のイラン外務省の抗議は、尹大統領の「UAEの敵はイラン」発言の翌日の16日に「外交的に不当で全面的に無知」と反応してからわずか2日後になされた。

 イラン外務省の行動に対し、韓国外交部も対抗的な対応を取った。大使の呼び出しに対抗措置を取るのは、外交では異例だ。チョ・ヒョンドン第1次官は19日、サイード・バダムチ・シャベスタリ駐韓イラン大使を外交部庁舎に呼んだ。外交部のイム・スソク報道官がブリーフィングで明らかにした。イム報道官は「チョ次官は、尹大統領の発言はUAEで任務遂行中の韓国将兵に対する激励の観点からのものであり、韓-イラン関係などイランの国際関係とはまったく関係がないと改めて説明した」と語った。イム報道官は、イランによる「NPT違反」との主張については「韓国はNPTの不拡散義務を誠実に履行しており、履行意志に変わりはない」と述べた。

 外交部は、尹大統領の発言の波紋が広がっていることに当惑している。チョ・ヒョンドン第1次官は17日、国会外交統一委員会で、「イラン側には韓国の立場を伝えており、イランも韓国の説明を理解したようだ」と述べている。外交部は19日にも、「大使呼び出しは両国間の多様な外交的意思疎通のあり方のひとつに過ぎない」とし、「(尹大統領の発言で)韓-イラン関係が特に悪化したり影響を受けたりはしていない」として火消しにあたっている。

 外交部内部では、ヒジャブデモに対する弾圧で国際社会から孤立しているイラン政府が、今回の事件を機に70億ドルの凍結資金問題などで韓国政府に対して募らせていた不満を示すことで、外交攻勢を繰り広げているとみる向きもある。政府は昨年11月の国連総会でイラン人権決議案に賛成しており、12月にはイランを国連女性の地位委員会から除名する決議案にも賛成している。

 専門家たちは、尹大統領の発言に触発された両国の対立が拡大することを懸念している。国立外交院のキム・ジュンヒョン前院長は本紙の電話取材に対し「最悪の場合、ホルムズ事態のようなことが再び起こりうる」とし、外交部が積極的に説明すべきと語った。2021年1月、韓-イラン関係の悪化を受け、イランはホルムズ海峡の公海上を航行中だった韓国国籍の船舶「韓国ケミ号」を拿捕(だほ)した。政府当局は今回も、ホルムズ海峡を通る韓国国籍の船舶の安全対策を協議しているという。

 こうした中、共に民主党のキム・ジョンホ議員ら韓・イラン議員親善協会に所属する野党議員は、国会で19日に記者会見を行い「尹大統領の発言はややもするとUAEとイランの関係についての問題にとどまらず、韓国がイランを敵と考えているとの誤解を招き、韓国とイランとの対立の火種になりうる」と批判した。同議員らは「政府は相手の立場に立って考えるという気持ちと真摯な姿勢でイラン側に十分に釈明し、必要ならば丁重に謝罪すべきだ」と訴えた。

シン・ヒョンチョル、キム・ミヒャン、オム・ジウォン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/1076471.html?_fr=mt1韓国語原文入力:2023-01-19 19:31
訳D.K

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