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「過密」が日常のソウル…危険と隣り合わせ

登録:2022-11-01 11:25 修正:2022-11-01 12:07
ソウルの地下鉄9号線に乗った乗客が車内を埋めつくしている=イ・ジョンア記者//ハンギョレ新聞社

 29日夜に起きた梨泰院(イテウォン)惨事後、日常生活で「圧死の危険性」を思い浮かべる人が多くなった。人口950万人の都市ソウルで「過密」は聞き慣れた単語だったが、いまやいつでも遭遇しうる日常の中の危険となったのだ。今回の事故を契機に、政府は都市過密環境を分析し、総合対策を立てなければならないという世論が起きている。市民一人ひとりも過密環境の危険性を認知しなければならないという宿題を抱えることになった。

 ソウル汝矣島(ヨイド)で働く会社員のイ・ユミさん(仮名・31)は、「通勤時間に人が集中する地下鉄9号線の急行列車に乗るが、梨泰院での事故のニュースを聞いて『圧死することもありうる』と初めて思うようになった」とし、「地下鉄のエレベーターのように乗車人員や重さに制限を設ける必要がある」と話した。キム・ソヒョンさん(仮名・30)もアイドルのコンサートで息ができなかった経験を思い出した。キムさんは「スタンディングの最前列で観覧したが、歌手が近づくたびに後ろから観客が押すので胸が圧迫され、息がしづらかった。公演後も胸痛が続いた」と話した。

 ソウルの人口が減っているとはいえ、依然としてソウルは非常に過密状態だ。国家統計ポータルによると、昨年の時点でソウルの人口は950万人、人口密度は1平方キロメートル当たり1万5699人。2番目に人口密度が高い釜山(4320人/平方キロ)と比べても4倍近い。世界都市分析ホームページ「シティ・メイヤー・スタティスティックス」によると、2018年時点でソウル(仁川を含む)の人口密度は世界6位(人口数上位300都市のうち)。1~5位はインドのムンバイ・コルカタ、パキスタンのカラチ、ナイジェリアのラゴス、中国の深センだった。

29日夜、ソウル龍山区梨泰院洞のハミルトンホテル付近の通りに人が密集している/聯合ニュース

 過密そのものよりも、過密環境に慣れてしまっていることがより大きな危険要素だ。米国の災害管理専門家で国土安全保障省の元次官補のジュリエット・カイエム氏は30日、CNNとのインタビューで、ソウル市民が密集環境に慣れているということを梨泰院惨事の要因として挙げた。「ソウルの人々は混雑した空間に慣れているので、危険を感知できなかった可能性もある」として「『混雑する空間に慣れすぎているという危険』もある」と分析した。

 このような状況にもかかわらず、大規模な人数が集まる状況に対する対応マニュアルは不十分なのが実情だ。斜面ごとに狭い路地のある梨泰院一帯に10万人を超える人が押し寄せたが、ソウル市と龍山区(ヨンサング)、警察は特別な対策を立てていなかったことが明らかになった。管轄自治体である龍山区は安全管理計画自体を立てておらず、警察も秩序維持などを担当する制服警察官58人を配置しただけだった。

 韓国安全専門家協会のイ・ソンギュ会長は「政府も国民もソウルの都市の真ん中で人が圧死することもありうるという事実を体感できておらず、そのためにこれまで安全対策も不十分だった」として「今回の事故で生じた学習効果として、政府は過密環境に対する対策を新しく立てなければならない」と述べた。ソウル大学保健大学院のファン・スンシク教授は「今回の事故は一方通行などの動線を管理し、混雑時間帯に梨泰院駅の無停車通過を事前に計画していたら予防できただろう」と述べた。

 圧死事故で大規模な惨事を経験した諸外国が事故後に取った対策を参照すべきだという意見も出ている。英国は、ヒルズボロ競技場に人が殺到し、鉄柵に閉じ込められた観衆が下敷きになって死亡する事故が1989年に発生して以来、サッカー場の安全管理のためのサッカー観衆法を制定した。この法は、サッカー球団に観客の入場を許可し統制する免許を与え、監督機関を設置して免許を管理させるとの内容を骨子とする。また、自由席をなくし、指定席制を義務化する内容も盛り込まれた。

 サウジアラビアはメッカ聖地巡礼期間に圧死事故が繰り返されたことを受け、2016年、特段の対策を樹立して発表した。聖地巡礼許容時間を制限し、大寺院に入場する時はGPSチップが内蔵された電子ブレスレットを着用させることとした。

 日本は2005年に兵庫県の明石花火大会で起きた圧死事故後、国家公安委員会の規則と警備業法を改正し、警備業務に「混雑警備」条項を追加した。中国の上海でも、2014年に新年行事に押し寄せた人で36人が死亡する圧死事故が起きた後、観光地・公園など公共場所の群集安全管理方法についての条例がつくられた。関係機関との有機的な情報共有、多数の群衆が集まった場合には現場観測を強化するなどの内容が盛り込まれている。

 国内外の専門家たちは、過密事故を防ぐためには「予測」が何より重要だと強調する。仁川大学のチョン・チャンギ名誉教授(都市環境工学部)は「予測をきちんと行ってこそ予防と対応が可能」と強調した。龍仁大学のキム・テファン教授(警護学科)も「日本は明石花火大会の事故後、行事の主催者が存在しなくてもクリスマスや正月など人が集まる時は、警察、消防、自治体が協業して独自の安全計画を立てる」とし、「ハロウィーンに人が集まるのは今年が初めてでもないのに、(動線を分離する)分離帯設置や事故予防策など、災害安全担当部署の対応策がなかった」と指摘した。

 市民や機関も過密の危険性に対する警戒心を持たなければならないという助言もあった。ソウル市立大学消防防災学科のイ・ヨンジュ教授は「地下鉄や公演会場には非常に多くの安全装置があるが、人は早く行こうとして、あるいは公演をもっと楽しもうとして、危険を冒すことがある」とし、「制度的な補完も重要だが、市民たちも自ら警戒心を持って過密環境が与えるリスクに備えなければならない」と述べた。

チョン・ヘミン、ソ・へミ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1065148.html韓国語原文入力:2022-11-01 08:55
訳C.M

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