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[コラム]「21世紀の皇帝」習近平が予告した3つの未来

登録:2022-10-26 10:50 修正:2022-10-26 12:32
23日、北京人民大会堂で開かれた中国共産党第20回党大会閉幕式の途中、胡錦濤前主席が警護員に連れられて望まない退場をしながら、習近平主席に何かを話しかけている=北京/AFP・聯合ニュース

 世界が見守る中、中国の習近平国家主席は「21世紀の皇帝」となった。中国の次期最高指導部の常務委員7人全員が習主席に忠誠を誓う腹心だ。中国共産党内で習主席の決定に批判的な意見を出せる人物は全員追い出された。習主席の終身政権を牽制する制度と勢力も消えた。

 習近平主席の決定に従い一糸乱れず動くことになる中国は、どのような道に進むのだろうか。習主席は16日、中国共産党第20回党大会の業務報告演説で、中国が進むべき新しい方向を公開した。そこでは「中国式現代化」とマルクス主義、安保不安を3つのキーワードに挙げられる。

 習主席は「中国式現代化」を実現するとし、「中国共産党が率いる社会主義現代化であり、自国の状況に合う中国の特色に基づく」と定義した。中国の巨大な人口規模に合わせて、共同富裕、全過程にわたる民主主義、人類運命共同体などを実現するということだ。

 これに対して中国のある外交筋は「中国はこれまで西欧が提示してきた民主と人権、自由の基準に従わず、(北朝鮮、ロシアなど)中国と制度が合う国を集めて中国中心の陣営を作り、中国式発展モデルを外部に拡散させるという意味が込められている」と説明した。

 中国の統治理念と戦略を作ってきたイデオローグである王滬寧が、習近平の就任3期目に合わせて発表したというこの概念は、中国が米国主導の国際秩序に本格的に対抗するという「挑戦状」とみることができる。

 中国を導く理念として「マルクス主義の中国化、時代化」が強調された。最近、中国共産党の文書で習主席を「偉大なるマルクス主義政治家、思想家、戦略家」と称するのとつながっている。「21世紀のマルクス」である習主席は毛沢東を越える偉大な指導者という含意が込められている。

 一方で、中国がビッグデータと人工知能(AI)を通じて「社会主義」を実現し、貧富の格差を減らし、共同富裕を実現するという公約ともみることができる。20世紀の社会主義計画経済の失敗は、政府が現実をちゃんと把握する方法がなかったためだが、今や中国共産党は先端技術を利用して一人ひとりの経済・金融情報を漏れなく把握できるため、「社会主義」を実現できると判断している。現実的には国有企業中心の国家資本主義の強化に帰結する可能性が高い。

 習近平主席は、5年前の第19回党大会で54回言及した安保を、今回は91回も言及した。それだけ安保不安が大きくもあり、また不安を強調する政治的必要性もあるからだ。米国の中国に対する牽制攻勢が強いだけでなく、特に米国と同盟国がロシアに対して予想より強力な制裁をするのを見て、中国の不安は大きくなった。一方で、この不安な状況で習近平主席を中心に完全に団結してこそ、米国を越えて勝利することができ、台湾統一も果たせるという主張が、習近平主席の長期政権を支える公約の中心の役割を果たしているためだ。

 匿名を求めた中国外交筋は「いま中国人の大半は、台湾統一は必ずしなければならないと考えており、習近平主席は毛沢東を超える偉大な指導者として名を残したいと考えているため、台湾統一を必ず推進するだろう」と述べた。習主席が党大会で「武力統一策をあきらめない」と宣言したのは、「香港(デモ強硬鎮圧と国家保安法)事態以後、台湾を説得する一国二制度の統一の可能性は消え、事実上武力統一策だけが残ったため」だと説明した。

 習主席が当分は制裁に備えた先端技術、食糧、エネルギーの自給自足を最大限推進し、この準備が終わり外部環境が中国に有利だと判断される時、台湾統一を推進する可能性が高くなった。

 中国のこのような「遠大な計画」が、外部環境に対する冷徹な判断よりは、内部の政治的不安から始まったという点を考慮すれば、これを実現しようとする過程で無理が繰り返される可能性がある。2010年以後、中国の成長率が低迷し不平等が危険なほど悪化すると、中国共産党指導部は市民らによる下からの変化要求が噴出し、ここに外部勢力が介入して共産党権力が崩れる恐れがあるという恐怖に襲われた。この問題の解決師として乗り出した習近平主席の権力集中と恐怖政治、先端技術監視と愛国主義扇動が、中国を外部世界との「闘争」への道に導いてきた。

 韓中国交正常化から30年のあいだ韓国が馴染んできたあの中国は、もはや存在しない。韓中関係の二つの柱だった緊密な経済関係と北朝鮮核問題解決のための協力という前提も大きく揺れている。米国発デカップリングだけでなく、先端技術の自立を強調する中国発デカップリングも速くなり、巨大な荒波が押し寄せている。「北朝鮮‐中国‐ロシア」の陣営化を試みる中国は、北朝鮮が7回目の核実験をしても、国連安保理の追加制裁に同意する可能性は低い。一方で、中国は外交孤立から脱するために韓国やドイツとの関係を重視しているので、政府は危機を防ぎ協力を維持する外交の空間を作っていかなければならない。

 何より中国の変化を正確に判断することが重要だ。中国が一夜にして今の状況になったわけではない。労働運動家やウイグル人、香港人たちの苦痛が大きくなっても「中国の内政だから目をつぶろう」としていた間に、中国はこのように変わってしまった。いまや目を大きく開く時だ。

パク・ミンヒ|論説委員 minggu@hani.co.

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1064123.html韓国語原文入力:2022-10-26 02:54
訳C.M

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