北朝鮮が9月25日、28日、29日と3回にわたってミサイルを発射した。26~29日の米原子力空母「ロナルド・レーガン」を含む韓米合同海上演習、29日のカマラ・ハリス米副大統領の訪韓および非武装地帯(DMZ)訪問、30日の韓米日の対潜水艦戦訓練などが、北朝鮮の「5日間で3回ミサイル発射」の背景とみられる。
今回のミサイル発射には2つの特徴がある。まず、米空母が韓国に来ている中、北朝鮮が弾道ミサイルを発射したのは今回が初めてだ。米空母は9月23日に釜山に入港して東海に移動し、26~29日に韓米合同演習、30日に韓米日対潜戦訓練を行った。
これまで北朝鮮は韓米合同演習を控えている間は「北侵演習」だとして激しく非難する一方、実際の演習期間には軍事行動を控えてきた。特に米空母が韓国に来ている間は、軍事行動で対抗したことがない。偶発的な衝突が全面衝突に広がる危険を懸念したためだ。
今回韓国に来た米空母、原子力潜水艦は、朝鮮半島有事の際、米国が韓国に提供する拡大抑止の中で最も強力で象徴的な戦略兵器だ。北朝鮮は今回のミサイル発射を通じて「核武力があるため、これ以上拡大抑止を恐れる必要はなく、十分対応できる」という自信をのぞかせたものとみられる。
このような北朝鮮の自信は、29日のミサイル2発の発射時間(午後8時48分~8時57分)にも現れた。北朝鮮が夜にミサイルを発射した事例は少なかった。晴れた日の明るいうちにミサイルを発射する理由は、飛行を観測しやすく、湿気による電子装備の誤作動を防ぐためだという。
29日夜に行われた発射は、「実戦配備を終えた」という北朝鮮のメッセージといえる。ミサイル開発段階では安定的な実験環境が重要であるため昼間に発射するが、実践配備されると様々な訓練シナリオに合わせて一日中いつでも発射できなければならない。今回、北朝鮮は29日夕方だけでなく、25日(午前6時53分)、28日(午後6時10分~20分)など朝や遅い午後、夜に分けてミサイルを発射した。発射場所も平安北道泰川(テチョン、25日)、平壌順安(ピョンヤン・スナン、28日)、平安南道順天(スンチョン、29日)と様々だった。いつでもどこでもミサイルを発射できるという自信を見せつけたのだ。
29日夜、北朝鮮がミサイルを発射した時間は米国ワシントンの現地時間で午前8時直前であり、米国政府が業務を始める頃だ。今回のミサイル発射は、「米空母のような拡大抑止でも無駄だ」という、北朝鮮が米国に送る政治的メッセージとみられる。
北朝鮮が拡大抑止を揺さぶっているが、大統領室は北のミサイル発射後「韓米首脳間で合意された拡大抑止の実行力と連合防衛態勢を強化することにした」と重ねて明らかにした。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は、北朝鮮の脅威を掲げて韓米日軍事協力の強化に乗り出している。30日に東海で3国対潜水艦作戦訓練を行い、10月3~13日にはフィリピンで開かれる「2022年カマンダグ訓練」に海兵隊が参加して韓米日とフィリピンが共同訓練を行う。米国とフィリピンが主導する中国牽制を狙ったこの訓練に韓国が参加するのは今回が初めて。