国連総会への出席を機に予告されていた尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領と米国のジョー・バイデン大統領との首脳会談は、結局は実現しなかった。大統領室は、今年5月のソウルでの首脳会談に続いてニューヨークで改めて首脳会談を行い、インフレ抑制法(IRA)などの敏感な経済懸案を解決すると期待を膨らませていたが、肝心の会談は「48秒の対面」と夫婦同伴形式の団体レセプションでの同席にとどまった。大統領室は「重要なことは時間の総量ではない」と意味付けしたが、これといった成果が見られないため「手ぶら外交」という評価は避けられそうにない。
大統領室の高官は22日(現地時間)未明、ニューヨークのプレスセンターで記者団に対し、前日の2回の韓米首脳同士の対面について、「インフレ抑制法、通貨スワップ、拡大抑止の問題などについて、(このかん)両国の国家安全保障会議(NSC)の集中検討を指示してきた。事前検討内容を圧縮し、本日確認する場を設けた」と説明した。バイデン大統領の国内政治日程などのために当初予告していた韓米首脳会談は行われなかったが、両国首脳が19日の英国ロンドンでのチャールズ3世国王主催のレセプションでの対面に続き、21日には「グローバルファンド第7回増資会合」と夫婦同伴レセプションでさらに2度目の対面をしたため、これまで両国の実務陣レベルで十分に議論してきた議題を「確認」し「裁可」したことに意味を持たせたのだ。この関係者は「できれば首脳会談を行うことが当初の目的だったが、一種の『プランB』を発動したもの」と語った。
大統領室は、特に尹大統領が「米政府がインフレ抑制法を執行する過程で韓国側の憂慮を解消できるよう、韓米間で緊密に協力しよう」と要請したことに対して、バイデン大統領が「韓米間で真剣な協議を続けよう」と答えたことなどをあげ、「首脳同士で協力の意志を明示的に表現したことが進展」(チェ・サンモク経済首席)だと強調した。
しかし、この日の両首脳の2度の対面後のホワイトハウスの発表は雰囲気が違った。ホワイトハウスは同盟の強化と北朝鮮への対応での協力の立場を表明した後、「サプライチェーン回復の弾力性、核心技術、経済・エネルギー安保、グローバル保健、気候変動を含む広範な優先懸案について協力策を議論した」と述べるにとどまった。韓国側の最大の関心事だったインフレ抑制法や韓米通貨スワップを議論したという発言はまったくなかった。
一方、尹大統領がこの日のバイデン大統領との「48秒の対面」のために、予定されていた「韓米スタートアップサミット」「K-ブランドエキスポ」に不参加となったことで、これらの行事は大統領のあいさつを中小ベンチャー企業部長官が代読するなど、中途半端なものになった。