大統領室は11日、慶尚北道星州(ソンジュ)の在韓米軍THAAD(高高度防衛ミサイル)基地が今月末に正常化すると発表した。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権では、THAADの臨時作戦配備を正式作戦配備に変えることを「基地正常化」と呼ぶ。韓国と中国のTHAADに関する約束と中国が主張する「三不一限」のうち、「一限」はすでに配備されたTHAADの運用を制限するという意味であるため、「基地正常化」はこれと衝突しうる。
大統領室の高官は同日、龍山(ヨンサン)大統領室で記者団に対し「THAADの基地正常化は現在進行中であり、早いスピードで(基地)進んでいる」とし、「運用面で8月末ごろにはほぼ(基地)正常化するものとみている」と述べた。韓国と中国の間で「三不一限」論議が起きた翌日に、韓国政府が8月末という具体的な正式配備の日程を初めて明らかにしたため、注目を集めている。「THAAD基地正常化」は尹錫悦大統領の大統領選挙公約だった。
同関係者は中国の「三不一限」の主張に対して、「THAADは北朝鮮の核・ミサイルからわが国民の生命と安全を守るための自衛的防衛手段であり、安全保障上の主権事項だ」として、「決して協議の対象にはなり得ない」と述べた。国防部のイ・ジョンソプ長官も同日、THAAD配備は安全保障上の主権に当たるため、中国が反対するとしてもTHAAD基地の「正常化政策」を変えないと強調した。イ長官は同日、ソウル龍山区の国防コンベンションで開いた出入記者団懇談会で、「地域住民との協議体構成がほぼ最後の段階にきており、終わり次第環境影響評価を行い、その後残った過程を進めて(THAAD基地を)正常化する」と述べた。
2017年4月に慶尚北道星州に配備されたTHAADは、現在、臨時配備されている状態だ。THAADの正式配備とは、コンテナなど臨時施設で生活する韓国と米国将兵の勤務条件を改善▽各種物品と資材の基地への陸路搬入を保障▽THAAD基地内の一部の米軍施設用地の供与手続き完了などを指す。これらを行うためには、THAAD基地の近隣住民などが参加する環境影響評価協議会を設け、環境影響評価法に従って一般環境影響評価を実施しなければならない。住民たちの反対で最初の段階である協議会を設けられず、一般環境影響評価を進めることができないため、臨時配備状態に留まっている。政府がTHAADを正式配備するために、THAAD基地への進入路を阻んでいる住民たちを強制解散させる場合、衝突も予想される。
前日、中国外交部報道官が9日の韓中外相会談の内容を説明する中で「韓国政府は対外的に『三不(THAADを追加配備せず、米国のミサイル防衛システムに参加せず、韓米日軍事同盟を結ばない)一限』の政治的『宣誓』を正式に行った」と発言し、論議が始まった。
大統領室の高官はこの日、記者団から「三不一限」の主張に関する質問を受け、「中国側の意図を把握中」だとし、「THAAD三不に関しては、どのような関連資料があるかを含め、引継ぎを受けた事案はない」と強調した。同関係者は、中国がその後「宣誓」(対外的な公式の約束)を「宣示」(人々に立場を広く表明)に修正して掲載した事実を伝え、「何度も申し上げるが、そのような意味で継承すべき合意や条約ではない。尹錫悦政権には尹錫悦政権の立場がある」と説明した。
シン海明駐韓中国大使はこの日、THAADと関連して「両国がすでに達成した共通認識と了解を堅持し、相互政策の安定性と持続性を維持しながら、引き続きこの問題を適切に処理していかなければならない」とし、中国政府の主張を繰り返し強調した。
一方、イ・ジョンソプ長官はこの日「慶尚北道星州のTHAAD基地のレーダーで中国まで覗き込む」という中国側の主張に対しては、「THAAD砲台のレーダーの位置は、中国の方に向けられるとすぐ目の前に山があって遮蔽されるので、物理的に(中国を狙って)運用できない位置」だと述べた。イ長官は「THAAD砲台は米国の防衛のための役割を果たす構造ではなく、朝鮮半島の防衛のみできる位置だ。THAADレーダーの位置は中国にも説明している」と述べた。