韓国与党「国民の力」が非常対策委員会体制に傾く中、「尹心(尹大統領の意向)」が党を揺さぶっているという批判の声があがっている。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が国民の力のイ・ジュンソク代表を「内部に銃を向けていた党代表」と酷評したのに続き、クォン・ソンドン党代表職務代行兼院内代表体制の早期交替の過程にも関与し、党務に介入しているという指摘だ。党内からは、非常対策委員会体制に変わっても大統領室ばかりを向くことになるだろうという憂慮の声があがっている。
クォン・ソンドン代行体制は31日、事実上崩壊した。7月11日の議員総会で党代表代行として追認されてからわずか20日。クォン院内代表は大統領室私的採用問題を弁明する過程で9級公務員を蔑視したという批判にさらされるなど、複数回にわたり失言で批判を受けたうえ、尹大統領とのショートメッセージ流出事件の過程で自らリーダーシップを失った。
クォン院内代表は、29日にペ・ヒョンジン最高委員の辞任と非常対策委員会体制への転換を要求する30人あまりの初当選議員の声明が出されるまでは、職務代行を退く意向を明らかにしてはいなかった。しかし同氏は、週末に大統領室の高位関係者に会い「非常対策委体制で行くのが尹大統領の確固たる意思」だとの趣旨の話を聞いて、結局は代行を退く決意を固めたという。
尹錫悦派の一糸乱れぬ動きも「尹心」と無関係ではない。尹大統領の当選後、大統領就任まで報道官を務めたペ・ヒョンジン最高委員は、29日に最高委員を辞任している。政務特別補佐官を務めたパク・スヨン議員は、非常対策委員会への転換を要求する32人の初当選議員の声明を主導している。ある尹派の議員は「ペ最高委員の辞任はチャン・ジェウォン議員とも話がついているとみるべき」と語った。複数の議員が大統領室関係者から直接・間接的に「非常対策委しか解決策はない」という話を聞いたという。
チャン・ジェウォン議員、イ・チョルギュ議員など代表的な尹核関(尹錫悦の核心関係者)も、大統領室の空気に同調する方向へと転じた。わずか10日前には「クォン代行体制についてとやかく言うのは正しくない」と述べていたチャン議員は、これといった意見を表明していない。しかし党内からは、初当選議員の声明を主導した数人の議員がチャン議員に近い人物だという声が少なからず聞こえてくる。チャン議員はイ・ジュンソク代表が懲戒された時から非常対策委への転換を主張をしてきたという。突然の非常対策委体制への転換と「尹心」を切り離して解釈するのは難しい。
尹大統領の党務への介入は、先のショートメッセージ流出事件でも明らかになっている。当時、尹大統領は「内部に銃を向けていた党代表が替わったため(党が)変わった」と本音をもらした。党内では、イ代表の懲戒にも「尹心」が作用したのではないかという声が少なからず聞かれた。党の指導体制が変わるたびに「尹心」が影響していたわけだ。
尹心によって党代表の政治的運命すら左右される与党の状況には、多くの懸念の声があがっている。ある慶尚道選出の重鎮議員は本紙に対し「誰が非常対策委員長になっても、まともに物も言えず、下手人、かかし役を演じるだろう。でなければ(尹大統領が)このような状況を再現させるのではないか」とし、「大統領や尹核関は党のグリップを握って思うままに操りたいようだが、そんなことをしてはならない」と述べた。