北朝鮮漁師送還事件をめぐり、与党が自己矛盾に陥っている。党のタスクフォース(TF)が掲げた「北朝鮮に送還された漁師は脱北ブローカーであり、殺人はしていない」との主張に、同党所属の統一部長官らが反論しているからだ。党内からは「出口戦略」を考えなければならないという声があがっている。
クォン・ヨンセ統一部長官は、22日のSBSの番組「8ニュース」のインタビューで、「(北朝鮮に送還された北朝鮮漁師が)自白したことから考えて、殺人を犯した可能性は非常に高い」と述べた。20日に与党「国民の力」の国家安保びん乱実態調査TF委員長のハン・ギホ議員が、北朝鮮に送還された2人の漁師は実際には漁師ではなく脱北を斡旋するブローカーであり、彼らは16人の船員を殺害していないと証言したが、その主張に反論したのだ。TF所属のテ・ヨンホ議員も22日のCBSの番組のインタビューで「人を殺していないのに殺したと自白する人がいるだろうか」と述べている。
政府と与党は困惑しているようだ。争点化に力を注いだ西海(ソヘ)公務員殺害事件に続き、北朝鮮漁師送還事件も世論の反応が得られずにいるためだ。世論調査機関リアルメーターが「エネルギー経済新聞」の委託を受けて19日から20日にかけて行った世論調査では、回答者の46.5%がこの事件について「国民感情を刺激するだけで国家運営には役立たないため、これ以上拡大する必要はない」と答えている。「徹底した真相究明を行って責任者を厳罰に処すべきだ」との回答は33.4%。このためか尹大統領は22日、統一部から業務報告を受けた際に「南北問題に関しては憲法と法律、原則に則って処理しなければならない」と述べるにとどまっている。
党は出口戦略に苦悩しているようだ。TFの関係者は24日、本紙に対し「非公開会議で(否定的な世論についての)話と共に、TF活動は最大限はやく終えるべきだという意見も出た」と話した。指導部の関係者も本紙に「クォン長官とTFの意見が異なり、息が合わない状態で、世論喚起がきちんとできていないから、国民は嫌気がさしているようだ。今の状態ではこの問題を推進するのは難しそうだ」と語った。