ドナルド・トランプ大統領は米国内で評価が極端に分かれる人物だ。トランプ大統領は米国だけではなく、世界を分裂させることにも成功した。「解放の日」に賦課した関税は世界の多くの国の政治地形を変えた。
最近、カナダ総選挙でトランプ大統領と最も類似した保守党候補は、米国大統領がカナダ併合と苛酷な関税に言及し始めて以来、支持率が急落した。わずか数カ月前までは世論調査で大きく遅れをとっていた与党「自由党」は、先月の総選挙で僅差で勝利を収め、カナダ版トランプは議席まで失った。オーストラリアでも同様の状況が起きた。一方、ルーマニアやエクアドル、ドイツなどでは依然として極右勢力が成長を伸ばし続け、「トランプ主義」の影響力を示している。
来月初め、韓国の有権者は大統領選挙を行うことになる。世論調査を見る限り、有権者たちは尹錫悦（ユン・ソクヨル）前大統領の政党を敗北させ、革新・改革志向の人物を大統領に選ぶ可能性が高い。だが、他の国々と同様、韓国も深く分裂している。2022年の大統領選挙で、尹錫悦前大統領はわずか1%未満の差で勝利した。2年後に行われた総選挙では、野党が国会の過半数を占め、行政府と立法府の間に巨大な対決構図が作られた。尹前大統領が弾劾された後、ソウルの街には数万、数十万人の人々がそれぞれ（弾劾）賛否集会を開き、デモを開いた。
このようにすでに分裂した社会にトランプ主義という政治プログラム、いわゆる偽りの情報、毒性民族主義とミソジニー（女性嫌悪）、そして蔓延した外国人嫌悪が入り混じった混合物がウイルスのように韓国右派に広がっていった。韓国の保守勢力は「盗まれた選挙」に対する陰謀論を作り出し、やがてはソウルのある裁判所で米国連邦議事堂で起きた「1月6日事件」を連想させる暴動を起こした。
米国でトランプ主義が人気を集める理由は、トランプ大統領が今後20年以内に少数民族に転落するかもしれないという白人多数の不安を代弁していると思われているためだ。ところが、米国よりはるかに同質的な社会である韓国で、保守政党支持者の間でトランプ主義がこのように熱烈に受け入れられる理由は何だろう。その根底には、米国との同盟関係に対する韓国右派の不安がある。70年以上の期間、米国は貿易パートナーであり民主主義のパートナーであり、中国勢力を抑制する核心要素だった。しかし、トランプ大統領は従来の同盟にはほとんど関心がない。第1次トランプ政権当時、トンラン大統領は北朝鮮を韓国よりも尊重し、関心を傾けた。北朝鮮の金正恩（キム・ジョンウン）国務委員長との非核化合意を実現させるために、合同軍事演習を中断し、在韓米軍撤退の可能性を示唆するなど、同盟関係の中核となる要素を損なうことをも憚らなかった。もし革新派の政治家が北朝鮮の指導者にそのような譲歩をしたなら、保守勢力は彼を反逆者と決めつけただろう。韓国の保守陣営が不安に思うのは当然だ。トランプ大統領を公に非難するわけにはいかない彼らは、野党が北朝鮮寄りで中国寄りだと非難するやり方で、トランプ大統領に見捨てられることを恐れる自分たちの不安を野党に転嫁している。
6月の大統領選挙で誰が勝利しても、分裂した国民に向き合うことになる。政治的分裂を乗り越える一つの方法は、環境問題に集中することだ。最近、韓国の世論調査で「気候変動と環境問題」が韓国が直面した最大の脅威1位に選ばれた。環境主義は革新側のイシューとして認識されるが、「自然保全、伝統価値の維持」など保守的価値を内包しているため、政治陣営間の橋渡しになりうる。
新大統領は、平壌（ピョンヤン）とワシントンという二重の課題を解決する準備をしながら、国内の分裂を乗り越える道を模索することを最優先課題にしなければならない。その道はエメラルド色に舗装されている。朝鮮半島、アジア、そして世界がグリーンの原則のもとで一つに団結するなら、分裂の勢力を退けることができるだろう。
訳H.J
