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日本、政権与党が圧勝…安倍元首相の追悼票結集、「改憲勢力」が3分の2を確保

登録:2022-07-11 11:07 修正:2022-07-11 22:30
自民・公明党と改憲賛成の野党 
125議席のうち93議席を獲得 
平和憲法改正発議、加速か 
 
安倍派「遺志を継承」強硬な声 
穏健派の岸田、立ち位置が曖昧に 
「力の空白」のなか派閥闘争が広がる予想
今月10日に行われた日本の参議院選挙で、有権者が投票している=東京/EPA・聯合ニュース

 10日に行われた日本の参議院選挙で、憲法改正に賛成するいわゆる「改憲勢力」が、改憲案発議が可能な3分の2議席を確保した。改憲を「歴史的な使命」としてきた安倍晋三元首相の死亡を追悼する雰囲気の中で行った選挙で、改憲勢力が圧勝したことで、戦後70年余り維持されてきた平和主義の象徴である日本国憲法の改正が目前に迫った。

 NHKは開票翌日の11日、自民党が63議席を獲得したと伝えた。連立与党の公明党は13議席、改憲に肯定的な野党の日本維新の会は12議席、国民民主党は5議席を得た。改憲賛成の政党の議席数を合わせると93議席で、今回の選挙の125議席中3分の2を超えた。日本の参議院議員の任期は6年で、3年ごとに全体議席の半分を新たに選ぶ。今回の選挙を経て改憲勢力の政党の議席数は177となり、全体の248議席のうち改憲案発議に必要な3分の2を大きく上回った。野党第一党の立憲民主党は選挙前の45議席から39議席へと議席数が減った。

 改憲勢力が圧勝し、これまで遅々として進まなかった改憲論議の突破口が開いた。しかし、今回の勝利が「勝者」自民党にどのような影響を及ぼすかは非常に複雑だ。まず、党内の「穏健派」を代表する岸田首相の立場が曖昧になった。岸田首相は今回の選挙の勝利を契機に、安倍元首相の影響力から脱し、今後の国政運営では「岸田色」を掲げようと苦心してきた。自身の「中間評価」の性格だった選挙が、突然の変事で「安倍追悼選挙」になってしまった。圧勝を収めた後も勝利の持ち分を完全に主張はしにくい状況となった。

 さらに、安倍元首相の葬儀が終われば、自民党内部の力学構図の変化が避けられないという見通しもある。日本憲政史上最長の首相であり、退任後も最大派閥の首長として強大な影響力を行使してきた安倍元首相が消え、巨大な「力の空白」が生じたためだ。

 安倍元首相が首長を務めていた安倍派(清和政策研究会)は、伝統的なタカ派・保守派閥で、党内で最も多い現役議員95人を抱えている。朝日新聞は「派閥(安倍派)からは官房長官や経済産業相、防衛相、総務会長、国会対策委員長など、政府・与党の中枢に人材を送り込んでいる」と伝えた。安倍派ではないが、先の総裁選挙で3位と善戦した高市早苗政調会長も安倍元首相の側近中の側近に分類される。

 このように強大な力を持つ「安倍派」を誰が導いていくのかが関心の的だ。安倍元首相が「後継者」を作らなかった状況で、様々な下馬評が飛び交っている。松野博一官房長官や萩生田光一経済産業相、下村博文前政調会長、稲田朋美元防衛相などの名前が挙がっている。

 政策的に見れば、自民党が選挙公約として掲げた憲法改正と防衛費増額など、主要政策の推進も加速する可能性がある。安倍派の主力である強硬派議員が安倍元首相の「遺志の継承」を主張し、改憲を積極的に主張するのは明らかだからだ。安倍元首相は特に、武力使用と軍隊保有を禁止した平和憲法の核心である「9条改正」に熱意を見せてきた。自民党も2018年3月に党論を通じて、9条に自衛隊の存立根拠を明記する案を確定している。現在、日本の国内総生産(GDP)の1%程度である防衛費(5兆4005億円)を5年内に2%に引き上げようとする動きも本格化する可能性が高い。ただし、莫大な財源の調達方法をめぐり複雑な議論が続くとみられる。

 しかし、改憲勢力内の意見が正確に一致するわけではない。連立与党内でも改憲と防衛力強化が必要だという方向性には共感しているが、各論に入れば相当な差がある。公明党は「平和」を党是に掲げている政党であるため、9条改正に慎重な立場だ。

 そのため、安倍元首相の不在が強い政策推進の障害になるという意見も出ている。日本経済新聞は「安倍氏らは党内でも改憲論議などで積極的な立場をとり、政策の推進力となっていた。(安倍氏の不在で)中長期の政策軸が揺らぐ可能性も排除できない」と指摘した。

 実際、安倍元首相の「強硬路線」と被爆地である広島を政治基盤とする岸田首相の「穏健路線」の間には少なからぬ温度差があった。両者の路線の違いは、昨年10月の岸田首相就任後、人事問題をめぐって一部露呈した。岸田首相は当時、安倍元首相の反対を押し切って穏健派の林芳正氏を外相に起用した。岸田首相は改憲など理念イシューよりも、分配を強調する「新しい資本主義」など経済政策に重きを置いている。

 実際、防衛費増額論議について「(国内総生産の2%という)数字ありきではない。必要なものは何かという内容を決めた後、論議すべきだ」という立場を何度も明らかにし、9条改正にも曖昧な態度を見せてきた。自民党のある幹部は読売新聞に「路線は違っても、安倍さんがいることで抑えが利いてきた。防衛費や財政政策を巡って党内は混乱するかもしれない」と懸念を示した。安倍元首相の発言権と影響力があまりにも強く、そのための影響もあったが、意見収集が容易だったという意味だ。結局、安倍元首相の不在の中で岸田首相がどのようにリーダーシップを発揮していくかが、今後の改憲論議などに決定的な影響を及ぼすものとみられる。

東京/キム・ソヨン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/international/japan/1050382.html韓国語原文入力:2022-07-11 08:40
訳C.M

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