文在寅(ムン・ジェイン)大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が、20日と21日に親書を交わした。大統領府と「朝鮮中央通信」が22日早朝に発表した。
北朝鮮の「朝鮮中央通信」は、「敬愛する金正恩同志は4月20日、文在寅大統領から送られた親書を受け取り、4月21日に回答親書を送った」と報じた。パク・キョンミ大統領府報道官も同日朝、春秋館の担当記者団へのショートメールを通じて「南北首脳は親書を交わし、関連内容は午前中にお知らせする予定」と明らかにした。
朝鮮中央通信は「北南首脳は互いが希望を抱いて最善を尽くしていけば、北南関係は民族の念願と期待に合わせて改善され発展するということで見解を共にし、相互に北と南の同胞に暖かい挨拶を伝えた」と報じた。南北首脳の親書交換は「深い信頼心の表示」と同通信は意味付けた。
同通信はまた、文在寅大統領が親書で「これまで厳しい状況でも北南首脳が手を取り合い、朝鮮半島の平和と北南間の協力のために努力してきたことについて言及」し、「退任後も北南共同宣言が統一の土台になるよう心を共にする意思を表明した」と報じた。
また、金正恩委員長が「北南首脳が歴史的な共同宣言を発表し、全民族に未来への希望を与えたことについて振り返り、任期最後まで民族の大義のために努めてきた文在寅大統領の苦悩と労苦について高く評価した」とも伝えた。
文大統領と金委員長の親書交換の事実が発表されたのは、コロナ事態を機に親書を交わした2020年9月以来19カ月ぶり。文大統領は2020年9月8日付の親書で、「8千万同胞の生命と安危を守ることは、我々がいかなる挑戦と難関の中でも必ず守り抜かなければならない最も根本的なもの」だとし、「同胞として心で共に応援し、共に勝ち抜く」と明らかにした。金委員長は4日後の2020年9月12日付の親書で、「久しぶりに私に届いた大統領の親書を読みながら、文章ごとにあふれる心からの労いの言葉から深い同胞愛を感じました」とし、「送ってくださった暖かい心をありがたく受け止めます」と明らかにした。
今回の南北首脳の親書交換は、退任を控えた文大統領の親書に金委員長が応える形で行われた。金委員長の返事は「親書交換は深い信頼心の表示」という朝鮮中央通信の意味付けのとおり、在任期間中に3回にわたって首脳会談を行った文大統領に対する礼遇の性格が強い。
それでも今回の親書交換は、最近の北朝鮮の相次ぐミサイル発射などで緊張した朝鮮半島情勢に照らしてみれば、南北関係に「恵みの雨」と考えられる意味深長な状況展開だ。特に金委員長が「互いに努力を傾けていけば、南北関係は改善され発展するだろう」と明らかにした事実に注目する必要がある。原則的な言及かもしれないが、5月10日の発足を控えた「尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権」の対北朝鮮政策基調によっては緊張の中での長期膠着状態から抜け出せない可能性のある南北関係を、反転させる踏み台になり得る発言だからだ。これと関連して、文大統領が「退任後も北南共同宣言が統一の土台になるよう心を共にする意思を表明した」という同通信の報道も、一緒に注目する必要がある。尹錫悦次期大統領が就任後、「文在寅前大統領」を対北朝鮮特使にして、南北関係の活路を模索するなら、金委員長はこれを拒否せずに受け入れる可能性を示唆しているからだ。
ただし、北朝鮮側が南北首脳の親書交換の事実を対外用メディアである朝鮮中央通信でのみ報道し、「人民必読メディア」である労働党中央委の機関紙「労働新聞」には載せていない事実も留意する必要がある。労働新聞の報道だけを基準にすると、北朝鮮人民にとって現在の南北関係は、ソ・ウク国防部長官を「ゴミ、狂人、対決狂」と猛非難したキム・ヨジョン朝鮮労働党中央委副部長と、パク・ジョンチョン労働党中央委書記の談話の延長線にあるわけだ。論理的に言えば、韓国で新たに発足する尹錫悦政権の対北朝鮮政策基調によっては、いくらでも対南強硬政策に転じうるということだ。
これに先立ち、キム・ヨジョン副部長が今月3日と5日に発表した談話で、ソ・ウク国防長官を猛烈に非難しながらも、批判の矛先を文大統領を含む文在寅政権全体に広げなかったことは、改めて考えなければならない。キム副部長は3日の談話で、「南朝鮮の国防部長官の『先制打撃』妄言」を問題視し、「委任によって」「南朝鮮に対する多くのことを再考するだろう」と明らかにした。5日の談話では「南朝鮮が軍事的対決を選択する状況になれば、やむを得ず我々の核戦闘武力は自分の任務を遂行しなければならない」と述べたり、「我々は戦争に反対する」「互いに戦ってはならない同じ民族」と述べたりするなど、強硬・穏健のシグナルを交えて発信した。