韓国で来週から社会的距離措置(ソーシャル・ディスタンシング)が全面解除される。早ければ5月末には感染者の隔離義務が解除され、インフルエンザ患者のように町内の病院や医院で対面診療を受けられるようになる。中央災害安全対策本部(中対本)と中央防疫対策本部(防対本)は15日、このような内容を含む「社会的距離措置調整案」と「ポストオミクロン対応計画」を発表した。
18日にほとんどの距離措置が解除…屋外マスクの解除は2週間後に決定
2020年3月に導入されたソーシャル・ディスタンシングは、18日に事実上終了する。中対本と防対本は15日、現在は夜12時までとなっている大衆利用施設の営業時間制限と、10人までとなっている私的な会合の人数制限を、18日に全面解除すると発表した。299人までとなっている行事と集会の人数制限もなくなる。25日からは屋内映画館・公演会場でのマスクを外しての飲食も可能になる。屋内外でのマスク着用は現行通り維持されるが、屋外でのマスク着用の是非は、防疫状況を評価して2週間後に改めて議論することが決まった。
中対本のクォン・ドクチョル第1次長は、「今後、オミクロン株の減少傾向が保たれるとともに、かなりの期間安定した状況を迎えるだろうと予想している」とし、「コロナ禍は完全には終息しないだろうが、今や再び日常回復を慎重に試みることができる時期に来ている」と述べた。先月31日の疾病管理庁と韓国科学技術研究院(KIST)の予測によると、営業時間や私的な会合の規制を緩和しても、感染者は10~20%増にとどまる見通し。これは昨年12月のデルタ株の流行期の、営業時間制限を1時間緩和すれば(午後9時→午後10時)感染者が97%増加するという分析とは大きく異なる結果で、防疫当局はこのような分析を反映してソーシャル・ディスタンシングの全面解除を決めたと説明した。ソーシャル・ディスタンシングの解除は、特に終了期間は設定されずに維持され、新たな変異株の出現などにより大規模な流行が発生する危険性がある場合には、再導入が検討される。
5月からは感染者の隔離義務も解除
政府は15日、日常医療システムの回復を意味するポストオミクロン対策も打ち出した。計画は、準備期(4月24日まで)▽移行期(4月25日から暫定的に4週)▽定着期(5月末以降)の3段階に分けられる。移行期の4週間は、流行状況や致命率、重症患者数、医療システムの状況、新種の変異株の出現の有無によって短縮または延長されうる。
移行期に入る25日からは、現行では1級のコロナの感染症等級が2級に引き下げられる。政府は、感染症等級が2級に変更されても、移行期までは感染者に課している現在の7日間の隔離義務を維持し、これまで通り治療費と1日当たり2万ウォン(約2060円)の生活支援費を支給すると明らかにした。早ければ5月末ごろに始まる定着期には隔離義務がなくなる。ただし隔離が「勧告」され、感染者が自主的に登校や出勤などをしない形となるわけだ。隔離義務がなくなれば、来月末には治療費と生活支援費の補助も中止される。1人当たり90万ウォン(約9万2600円)を超える飲む治療薬の費用をだれが負担するのかについてはまだ方針が決まっていないが、当面は国費からの補助が続く可能性が高い。
防疫当局は、「オミクロン株の拡散は3月中旬ごろにピークを記録(3月17日に62.1万人)して以降、減少傾向にあり、死者数も緩やかに減少しつつある」とし、「拡散のピークを過ぎて安定化しつつあり、全国民の30%以上が感染したため危険度を体得した状況であることを考慮すると、一般医療システムへの転換などの効率的なやり方を通じて持続可能な対応システムを構築する必要性が高まっている」と、今回の計画を推進する背景を説明した。3週間前の先月25日の感染確認数は33万9443人だったが、15日は12万5832人にまで減っている。入院中の重症患者は先月第5週(3月27日~4月2日)には週平均で1日当たり1255人だったが、15日は999人にまで減少している。週間死者数も先月第4週(3月20日~3月26日)は2516人だったが、先週(4月3日~4月9日)は2312人に減少している。
コロナ専門病床を縮小し、感染者を町内の病院・医院で診療
ポストオミクロン対応計画によって、感染者に対する対面診療システムも日常医療に転換される。政府は4週間の移行期中にコロナ感染者が対面診療を受けられる外来診療センターを拡充し、定着期からはインフルエンザのように町内の病院・医院での対面診療が始まると発表した。コロナ診断検査は民間医療機関で迅速抗原検査で実施し、保健所などの公共医療機関は感染脆弱施設の先制検査と高危険群に対する検査に集中する。
防疫当局は、今月18日から感染症専門病院も減らしていく。25日からは確保済みの重症および準重症病床を段階的に減らすとともに、拠点専門病院以外の中等症病床は廃止する。定着期からは国指定の入院治療病床、緊急治療病床、拠点専門病院のみが感染者の入院を受け入れる。現在は15カ所ある生活治療センターは、今月24日に6カ所、来月初めには2カ所に縮小される。
海外からの入国者に対する防疫緩和、再流行対策
海外からの入国者に対する防疫基準も段階的に緩和される。6月からは海外からの入国者に対するPCR検査の回数が現行の3回から2回に削減され、長期的には入国前の1回のみへと変更される予定だ。また6月からは、予防接種が完了していれば隔離期間がなくなる。海外旅行の際の隔離期間という負担が軽減されるわけだ。
再流行対策も発表された。防疫当局は療養型病院・長期療養機関などの感染脆弱施設の企画調査を実施し、新種の変異株を早期発見するため、ウイルスの遺伝子分析を強化することを決めた。チョン・ウンギョン疾病管理庁長は、「再流行に備えた追加の予防接種戦略と実施計画を樹立するとともに、接種後の異常反応に対する補償システムを整備して、安全に接種できる基盤を構築する」とし、「再流行の発生時、流行の規模に応じた医療対応システムの稼動を準備して、すでに保有している病床を中心にまず対応し、指定解除病床を直ちに転換できるよう準備する」と述べた。
このほかにも政府は、コロナ後遺症についてコホート調査、ビッグデータを基盤とする追跡調査なども進める計画だ。