本文に移動

韓国で「不公平な社会の始まりは不動産」持ち家のない人々の絶望

登録:2022-01-10 08:47 修正:2022-01-10 11:14
[有権者とともにする大統領選政策:私の選挙、私の公約] 
「家を諦めた」 
 
公共住宅も庶民には高い敷居 
住宅価格の代わりに税金を減らす公約ばかり
カン・ギウンさんが今月1日午後、自宅周辺のマンションを眺めている=議旺/ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社

 文在寅(ムン・ジェイン)政権で住宅価格高騰の最大の被害者は、持ち家のない人たちだ。2020年の住宅所有統計によると、全2092万世帯のうち非住宅所有世帯は43.9%(919万世帯)。しかし、いまの大統領選挙の局面では、保有税や譲渡税緩和のような住宅所有者への減税公約がほとんどだ。非住宅所有者対象の公約は「任期内に250万戸を供給」程度だ。本紙が深層インタビューした持ち家のない有権者23人は、大半が公共住宅の拡大を要求したが、大統領選で不動産問題が解決するという期待は大きくなかった。自分を「中下層以下」と紹介した2人の非住宅所有者を深層インタビューした。

有権者とともにする大統領選政策:私の選挙、私の公約//ハンギョレ新聞社

新婚「希望」タウンが「絶望」タウンに

 「事前請約で初めて当たった瞬間、妻に言いました。これから数年間、記念日や誕生日にお金を使えないねって。マイホームを持てたのか、自分ではよく分かりません…」

 カン・ギウンさん(34)は昨年11月、京畿道議旺市(ウィワンシ)の月岩(ウォルアム)地区「新婚希望タウン」の事前請約(分譲マンション購入申込の1~2年前に事前に契約申込をする制度)に当選した。喜ぶべきその瞬間、心配が押し寄せてきた。両親に頼ることのできないカンさん夫婦の資産は全部で2千万ウォン(約194万円)。専用面積55平米の分譲マンションの価格4億1千万ウォン(約3970万円)のうち、3億9千万ウォン(約3780万円)を用意しなければならない。新婚希望タウン専用の長期住宅担保ローンで住宅価格の70%(2億8700万ウォン)まで融資を受けても、あと1億ウォンが必要だ。

今月1日午後、京畿道儀旺市の自宅でカン・ギウンさん夫婦が双子の息子を抱いて会話している=議旺/ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社

 看護師の妻は昨年8月に双子を出産した後、仕事を辞めた。カンさんの月収は約300万ウォン(約29万円)。入居までのあと4~5年で毎月150万ウォンずつ貯金しても、貯められるお金は7200万~9千万ウォン程度だ。問題は、分譲価格がさらに値上がりする可能性もあるという点だ。「事前請約当選者のカカオトークのグループチャットで、相場が上がり続ければ本契約の分譲価格が4億5千万ウォンになる可能性があるという話が出ています。貯金のある人たちはいいけれど、半分ぐらいは不安そうです」

 多くの人にとって新婚「希望」タウンが新婚「絶望」タウンになることもある。「子どもたちに使うお金を減らすわけにはいかないし、 僕と妻の分を減らしていかないと」

 カンさんは「複数の住宅所有者も自分の能力で買った」という周りの人たちを理解できないと言う。「その能力を誰が作ったのか、と。人生を三塁から始めた人たちは安打を打てば本塁打になるけど、私は1塁に出ることすら難しいです」

キム・スヨンさんが先月30日午前、伝貰で住んでいるソウル中浪区の自宅で、午後の出勤の前に座って話をしている=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社

「8億ウォンなのに本当に公共分譲?」

 キム・スヨンさん(36)はマイホーム購入と出産をともにあきらめた。「子どもが産まれても育てられないかもと思った」と話した。また「住宅価格が月給が上がるよりも急激に上昇するのを見て、ソウルでマイホームを購入するのは難しいと思った」とも語った。

 正規職の司書として働いているキムさん夫婦の毎月の世帯所得は400万ウォン(39万円)。住んでいる26平米の2部屋のビラ(低層の集合住宅)の伝貰(チョンセ、一定額保証金の賃貸)の保証金は1億7千万ウォン(1650万円)だが、1億ウォンはローンで充てた。2020年には伝貰・月家賃上限制と契約更新請求権を導入した住宅賃貸借保護法のおかげで、追加の保証金なしに伝貰の契約を更新したが、その権限も一度しか使えない。夫婦は月100万ウォンずつ貯金を始めた。「(契約が終わる)再来年が心配です。高いところでは1億ウォン以上(保証金が)値上がりしていて、平均でも4千万~5千万ウォンは上がったようです」

 「相場に比べて安い」という公共分譲住宅の供給があるというが、文在寅政権になって2倍ほど急騰した相場が反映された分譲価格は、平凡な30代の共働き夫婦の所得と資産に比べてあまりにも高い。「京畿道河南市校山(ハナムシ・キョサン)は5億ウォン、楊州市檜泉(ヤンジュシ・フェチョン)は3億ウォン近い価格です。通勤4時間ほどかかっても檜泉に行こうかとも思ったけど、ローンの負担が大きい。果川(クァチョン)には8億ウォン台の公共分譲も出ていて…。これが本当に公共住宅なんでしょうか」

 彼は大統領候補たちに向けて、「譲り受けた不動産による不利益所得」が「不公平な社会の始まり」だと言った。「富裕層の子どもとして生まれるのも運によるもの。不労所得に対する税率を上げるべきなのではないでしょうか」

チン・ミョンソン、ノ・ジウォン、キム・ヨンヒ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1026629.html韓国語原文入力:2022-01-100 7:14
訳C.M

関連記事