今月1日に政府が段階的な日常回復(ウィズコロナ)を施行した後、韓国では新型コロナの新規感染者と重症患者が増加傾向を示している。韓国に先立ち、ウィズコロナを宣言した後、新型コロナの状況が悪化した他の国々は、どのように対応しているのか。海外メディアや各国の保健当局ホームページ、対外経済政策研究院が発行した「主要国の新型コロナ防疫体系転換の様相と経済展望」などをもとに調べてまとめた。
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シンガポール、「ウィズコロナ」後に防疫強化・緩和を繰り返す
強力な防疫措置を実施してきたシンガポールは、ウィズコロナ計画の実施後も、状況によって防疫レベルを調整している。新規感染者の増加に対する社会的受容度が低いことから、推移を見ながら防疫措置の緩急を調節しているのだ。
シンガポールは1回目のワクチン接種率が65%水準だった今年6月、段階的な日常回復計画を徐々に実施するという計画を発表した。しかし今年7月、デルタ変異株によって感染拡大の規模が大きくなると、訪問飲食の禁止、3人以上の集まりの禁止など「ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離措置)」を再び行い、強度の防疫に戻った。8月中旬からコロナの状況が安定に入ると、ワクチン接種者に限り5人まで私的な集まりを許可するなど、一部の措置を緩和した。しかし感染者の増加に伴い、9月末から再びワクチン接種者基準で私的な集まりを2人までに規制した。その後もシンガポールのコロナ感染者は増加傾向を示し、先月末には新規感染者が5千人を超えたが、今月に入って再び減少に転じると、今月10日にワクチン接種者に対しては5人まで私的な集まりを認めた。
特に注目すべき点は、シンガポールがウィズコロナ以降も密接接触者の追跡など、依然として疫学調査に力を入れているという点だ。国民の90%以上が使っている「トレーストゥギャザー」(TraceTogether)というアプリを通じてだ。このアプリは、ブルートゥース技術で感染者と同じ空間にいた人に密接接触の事実を知らせてくれる。ただし、これによって集められた情報の活用をめぐっては、プライバシー侵害論議も残っている。
シンガポールはワクチン接種完了率が85%を超えるが、依然としてワクチン未接種者に不利益を与え、接種率の引き上げに力を入れている。来月8日からは、未接種者が新型コロナに感染した場合、医療費を自費負担させる予定だ。また、ワクチン接種を受けていない人は、職場への出勤の復帰もままならない見通しだ。当局が来年から、ワクチン接種者または感染後の回復者に限り職場復帰を許容するという政策を推進することにしたからだ。
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英国を除きワクチン接種率が高かった欧州諸国は「防疫パス強化」「封鎖」
先制的にウィズコロナを宣言して以来、コロナの拡散に苦心していた欧州諸国は、再び防疫を強化する一方、シンガポールのようにワクチン未接種者の不利益措置を準備もしている。
8月にウィズコロナを宣言したドイツは、今月12日に1日5万人以上の新規感染者が出るなど状況が深刻化し、ワクチン未接種者の室内施設への立ち入りを禁止する計画を検討している。これはドイツ次期連立政府の構成を協議中である3党(社民党・自民党・緑の党)の新しい防疫計画に盛り込まれた。この他にも、マスクの室内着用制度を維持し、コロナの無料検診を再導入する案も検討中だ。
デンマークは8日、「防疫パス」を再導入する計画を明らかにした。飲食店や居酒屋などの施設に出入りする際、ワクチン接種やコロナ陰性を証明しなければ出入りできないようにする措置だ。9月にワクチン接種を問わず集まりの制限を解除して以来、2カ月ぶりの措置となる。ワクチン接種完了率が75%だった時にウィズコロナを宣言したデンマークは、その後約1カ月間は新規感染者が増えなかった。しかし、最近状況が変わり、12日現在(現地時間)で新規感染者は3000人を超えた。14日基準の入院患者もウィズコロナ宣言の時期と比べて3倍に迫り、デンマーク保健当局は再び防疫パスの導入を始めた。
オランダは封鎖措置を再び断行した。今月初めに公共場所でのマスク着用復活を宣言し、13日から少なくとも3週間以上、ソーシャル・ディスタンシングを施行することにした。これを受け、オランダでは飲食店などの必須営業所は午後8時まで、必須でない営業所は午後6時までの営業となる。スポーツ競技は無観客で開かれる。オランダではワクチン接種の完了率が70%以上だが、最近は感染者が急増している。13日現在の新規感染者数は1万6287人だが、ウィズコロナを宣言した2カ月前と比べて10倍以上増加した。
英国の場合、上にあげた国々とは異なる防疫政策を展開している。英国の保健当局は、7月の防疫措置の解除以降、自主的な防疫守則の順守を強調する以外には、これといった政策を打ち出していない。今月第1週の1週間のコロナによる死亡者(1185人)は、7月のウィズコロナ直前の週間死亡者(284人)に比べ4倍ほど増えたが、依然としてウィズコロナを続けている。これに先立ち、英国政府は新型コロナが大きく拡散する場合に備え、マスク着用義務化▽ワクチンパスポートの発給▽在宅勤務などを盛り込んだプランBを樹立したが、現在この計画は適用されていない。
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「ワクチンだけでは難しい…疫学調査・高危険群など個別戦略を」
韓国の専門家らは、国外の事例から見て、ワクチン接種率を高めたりワクチン接種の有無によって利益・不利益の措置を与えることのほかに、多角的な対策が必要だとみている。欧州のコロナ対応政策を分析した対外経済政策研究院のチャン・ヨンウク副研究委員は、「欧州の国々はワクチン未接種者を中心に防疫を強化しているが、これは良い政策ではない場合もある」と述べた。「ワクチン効果が落ちており、接種者の間でも突破感染(ブレイクスルー感染)が起きている」とし「韓国の場合、ワクチン接種の有無に分けて政策を立てるよりも、高齢者や療養型病院など高危険群を中心に予防接種を強調すべきだと思う」と述べた。
ソウル大学のホン・ユンチョル教授(予防医学科)は、国外のウィズコロナ対応状況について「結局、ワクチン接種率だけでこの状況を管理することはできない」とし、「実際に患者発生を抑制できる力量も同時に強化しなければならない」と述べた。「国内ではまず第一に足りない医療人材の拡充、第二に疫学調査に対する強化が必要だ」とし「特にシンガポールがICT技術を利用して感染者の動線を追跡している戦略を、韓国でも適用させる案を検討してみるべきだ」と述べた。