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モデルナ信じたが、また供給に支障…何一つうまくいかない韓国のワクチン需給計画

登録:2021-08-10 10:50 修正:2021-08-10 11:27
ひと月の間に「すでに3回目」の供給支障 
大統領「8~9月には支障ない」と約束したそばから 
モデルナの供給確約、2週間で覆され 
政府「契約違反ではない…法的対応できない」 
今後、事態が再発しても打つ手なし 
 
政府、2回目の接種の間隔を延長したことで 
10月の「70%接種完了」計画に支障 
下半期は「慢性的な需給不安」避けられず
試験管の後ろに見えるモデルナ社のロゴ/ロイター・聯合ニュース

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領が自ら8~9月の接種に支障のないワクチン導入を約束したにもかかわらず、モデルナのワクチンに再び供給の支障が生じ、政府のワクチン需給計画全般の不安定さが再び露呈した。厳しい社会的距離措置(ソーシャル・ディスタンシング)で小商工人などが限界に追い込まれている状況だ。一日も早く接種率を引き上げてこそ防疫措置も一段落するはずだが、1回目の接種と2回目の接種との間隔を3~4週間から6週間へと延期するなど、足取りは遅れ続けている。

 9日の政府の説明を総合すると、モデルナのワクチン供給の支障問題が浮き彫りになったのは今回で3回目だ。55~59歳の事前予約を始めた先月12日には、モデルナのワクチン供給の問題により、185万人までで予約受け付けを事実上先着順で早期に締め切った。さらに、欧州の生産施設の問題で、先月末に導入が予定されていた日にワクチンが入ってこなくなり、先月26日には8月2~8日に接種予定だった55~59歳のワクチンがモデルナからファイザーへと大量に変更された。

 これを受け、クォン・ドクチョル保健福祉部長官は先月27日、モデルナのジョン・ラフォア副会長とオンライン会議を開いており、政府は「『8月に支障のないよう供給する』という確約を受けた」と伝えた。続いて文在寅大統領も今月2日、大統領府首席・補佐官会議で「8、9月の接種のためのワクチンの量は支障なく導入される」と再度強調した。しかし、確約から2週間後の今月6日の遅い時間に、同社から8月の供給量が半分以下に減るとの通知が届いた。政府はこの日、このような事実をようやく公開しながらも、正確な8月の供給量がどれくらいなのかすら秘密維持交渉を理由に明らかにしなかった。

 モデルナは2010年に創立した会社で、今回新型コロナワクチンを作るまではワクチンなど医薬品の生産の経験が全くなかった会社だ。ファイザーやアストラゼネカと違って独自の生産施設がないため、米国や欧州など他の製薬会社でワクチンを委託生産している。このため、カナダ、日本、チェコ、スペインなどでも外国メディアを通じて供給に支障が生じたとのニュースが伝えられてもいる。

 これは、下半期の主力ワクチンとしてmRNA方式のモデルナとファイザーのワクチンを活用することが決まっている状況で、10月以降まで行われる2回目の接種が慢性的な供給不安を抱えることになったことを意味する。大韓ワクチン学会のホン・ギジョン編集委員長は「今回のことは慣例上あり得ないことで、モデルナに違約金を要求しなければならないが、世界中がワクチンを求めている特殊な状況なのでそうすることもできない」とし、「モデルナは自社の生産施設がない小さな企業であるため、今後も引き続き問題が発生する可能性があり、ファイザー製ワクチンをさらに購入するか、アストラゼネカ製を活用するなどの案を検討すべきだ」と述べた。

 実際、政府は、モデルナに法的対応をすることも難しいと明らかにした。汎政府ワクチン導入タスクフォースはこの日、「ワクチンの具体的な供給日程は協議を通じて決めるもので、契約書上に明示されていないため、供給に支障が生じたことを契約違反と判断するのは難しい」と明らかにした。導入の支障に関して政府はモデルナ社に抗議したが、政府が今後もこのような事態の再発防止に打つ手がないことをほのめかしたということだ。

 このように2回目の接種が遅れるということは、国内の流行拡散を遮断し日常回復を促進する戦略の一つの軸が弱くなることを意味する。英国などの研究結果によると、デルタ変異ウイルスに対する予防効果は、アストラゼネカやファイザーのワクチンともに1回目の接種時は30%台と低いが、2回目の接種後はそれぞれ67%と88%に上がる。1回目の接種でも重症・死亡防止効果はかなりあるが、感染拡大を抑えるためには2回目までの接種を急がなければならない状況だ。嘉泉大学吉病院のオム・ジュンシク教授(感染内科)は「接種の間隔があいても効果が落ちるような問題はない」とし「成人の50%まで2回目の接種率を早く上げれば全体の流行規模を減らすのに役立つのだが、この時期が遅くなる可能性がある」と述べた。

 これを受け、10月末と予想されていた全国民70%の接種完了の時期も、2週間ほど先送りされる見通しだ。文大統領は今月2日、秋夕(チュソク、旧暦8月15日)の連休前に全国民の70%、3600万人が1回目の接種を終えるだろうと明らかにした。この場合、当初の4週間の接種間隔であれば全国民の70%が2回目の接種を終える時期は10月中旬ごろで、抗体形成期間の2週間を追加で考慮すれば、10月末までに全国民の70%の接種が完了する予定だった。しかし今回の供給支障を受け、この期間が計2週間ずつ先送りされるのは避けられない。

 文大統領はこの日開かれた大統領府首席・補佐官会議で「集団免疫の目標時期も繰り上げ、ワクチン接種の目標人員ももっと増やす」とし「ワクチンを少数の海外企業に依存するしかないため、我々がワクチン需給を思うようにすることはできないが、確保したワクチンの物量を最大限効果的に活用し、必ず目標達成を繰り上げる」と述べた。さらに「コロナの拡散を抑えると同時にワクチン接種率を高めてこそ、強度の高い防疫措置を緩和することができる」と強調した。供給の支障がワクチン接種のスピードを妨げている状況で、現実とかけ離れた状況認識をあらわにしたということだ。

 翰林大学江南聖心病院のイ・ジェガプ教授(感染内科)は「ワクチン需給に引き続き問題が生じると、不確実性が生じることに対して国民の不安が生じ、接種に悪影響を及ぼすのではないかと心配される」とし「接種に消極的だった人たちが、関心が生まれて接種しようと思っていたのに、接種の順番がずれこんだために離脱する可能性もある」と指摘した。

キム・ジフン、ソ・ヘミ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/health/1007052.html韓国語原文入力:2021-08-10 02:12
訳C.M

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