日本による韓国に対する半導体・ディスプレイ素材の輸出規制から7月1日で2年が過ぎた。韓日関係は「国交正常化以来最悪の状況」から抜け出せずにいる。日本の政治・外交と韓日関係を深く研究してきた代表的な学者、ソウル大学日本研究所のナム・ギジョン教授は、1日の本紙とのインタビューで「韓日関係が大転換時代にふさわしいアップグレードに失敗し、日本が北東アジア秩序をめぐり『韓国を飼い馴らそう』としているのが原因」とし「韓日関係は長期的な低強度の複合対立の時代を迎えた」と分析した。
ナム教授は著書『基地国家の誕生』で、朝鮮戦争期に「基地国家」へと変身した日本が冷戦の形成過程で主要な役割を果たしたことを論証したが、その延長線上において大転換時代を迎えた今、韓日は新冷戦を引き寄せる愚を犯してはならないと警告した。韓国が新たな国際秩序の形成で主導的役割を果たすにしても、中国との軍事的対決の前衛に立たないこと、朝鮮半島平和プロセスの再稼動の過程で日本との戦略的な意思疎通を強化することを提案した。
ナム教授は「竹槍歌に象徴される反日感情が韓日関係を悪化させた」とするユン・ソクヨル前検察総長の主張に対しては「危険で誤った診断」と強く批判した。
-韓日関係がこれほど長きにわたり改善のきっかけを見出せないのは、何が原因か。
現在の大転換時代にふさわしい韓日関係へとアップグレードできずにいる状況のせいだ。現状としては、日本が「歴史問題」対立の技術的な解決策を受け入れられずにいることが原因だ。2018年10月の韓国最高裁の強制動員賠償判決と2015年の「12・28合意」以降、韓国は歴史的基本原則を損なわない程度に何度か提案を行っているが、日本は「1965年の韓日基本条約と請求権協定を揺るがすいかなるものも認めない」という一つの立場のみを固守している。韓国最高裁の判決が履行されれば、日本の立場からは「1965年体制」が崩れると考えているのだ。多分に政治的な主張であり、歴史的な経緯や国際法の法理から見ても筋の通らない話だが、日本がそのような主張を掲げて交渉しようとしないことが今の最大の問題だ。日本がこのような「神経戦」を繰り広げるのは、韓国を「飼い馴らそうとしている」からだと考えられる。日本の北東アジアの秩序認識と構想に韓国が従うことを要求しているのだ。地政学的な大変動の中で、日本の構想が朝鮮半島平和プロセスによってゆがめられている状態であるため、日本はそのような主張を強く行っていると言える。現在の対立は歴史的な淵源が深く、地政学的にも広い。
-ユン・ソクヨル前検察総長は「竹槍歌」に代表される韓国の「反日感情」のせいで韓日関係が悪化したと述べているが。
その診断は間違っている。そう考えるのは非常に危険で、問題がある。韓国政府はむしろ困難な状況にあってもかなり多くの努力をしたと理解している。原則論的に言うならば、問題の原因は日本の植民地支配にあり、日本が解決すべき問題だ。にもかかわらず韓国政府は、与えられた条件の中で切り得るカードを切ってきた。それをもって交渉を行うべき状況にあって、日本は交渉しないと言っている。果たして誰に問題があるのか。これに対する診断を誤れば、対日外交に大きな支障をきたすと思う。韓日の間には強制動員と日本軍「慰安婦」という懸案があったものの、日本が輸出規制を行う前まで韓日の往来は年間1000万人時代を迎えていたし、市民交流は自然に日常的に行われていた。状況を袋小路に追い込んだのは日本の輸出規制だったということは十分に理解すべきだ。輸出規制は日本でも反省の声があがっているが、それについての正当な考慮なしに全ての責任を韓国が負おうとするのは「自己卑下」だ。そんな人物が保守の注目を浴びる大統領選候補というのは悲しいことだ。
-文在寅(ムン・ジェイン)政権の対日外交を振り返って残念なところは。
歴史問題を入り口に据えて「これを解決しなければ入れない」とした(朴槿恵(パク・クネ)政権の)「ワントラック戦略」が、結局は12・28合意という失敗作を生み出した。文在寅政権は歴史問題を解決するためにも懸案と協力とを分ける「ツートラック戦略」を打ち出し、それなりに成果も収めた。微妙なバランスが崩れたのは2019年だ。日本がワントラックを打ち出したことで、それが朝鮮半島平和プロセスの障害要因として作用しはじめ、韓国が管理できない方向へと日本が行ってしまうという状況になった。韓国政府がより高い次元で考えていたなら。最高裁判所の強制動員賠償判決直後にタイミングをつかんで、問題が深刻化する前に判決を尊重するかたちの解決策を考え、進展させるべきだったと思う。タイミングを逃した。
-輸出規制は韓日関係にどのような影響を与えたか。どのような示唆点を見出すべきか。
輸出規制後に明らかになったのは、日本との緊密な経済・安保協力が必須ではなくなったということだ。日本との間で問題が生じれば大変なことになると思っていたが、それなりによく耐えてきた。歴史問題が韓日関係を悪化させても、経済と安保では協力しなければならないという論理的整合性はもはやない。それでツートラック外交が機能しなかったのだと思う。ところが今のコロナ禍においては防疫共同体、企業家をはじめとする日常交流の回復、少子高齢化克服のための協力、気候危機、原発災害、朝鮮半島平和プロセスの再稼働などで、いっそう両国の協力が必要になっている。日本の輸出規制後は、我々がまだ意識できていなかった自らの力量を確認してもいる。その時期を耐えたし、コロナ禍でも日本よりも韓国の方が善戦しているということを感じることで、韓国が譲歩ばかりするというのは違うのではないか、ということを感じはじめた。韓日関係は長期的な低強度の複合対立の時代へと向かうだろう。対立は多くの分野に存在し、どれか一つを解決したからといって、一度にすべてが改善されることは期待できない。両国いずれも早急に改善しようという方向には向かわないだろう。長期的には問題を解決できるだろうという期待を抱いて、徐々に体質を改善していく「韓方療法」を韓日関係において試みるべき時代となった。<続>